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ファンクラブの脅威に怯える日は意外とあっさり終わりを迎えた。
ある日を境に、彼女達の嫌がらせがぱったりと途絶えた。なんだか肩透かしを食らった気分だ。
紅葉の注意のお陰なのだろうか。それとも雪之助が何かをしたのかもしれない。
今日は初めて大学で雪之助と会う。
雪之助にお礼をしたくて、呼んだのだ。
昼休み、待ち合わせ場所の食堂で雪之助を見かけ、駆け寄った。
「季々ちゃん」
雪之助は少し複雑そうな顔をした。
どうしたのだろうか。
ふと、雪之助の視線が私の足元に集中してることに気がついた。
「足は大丈夫?紅葉から聞いたよ…ごめんね、怖い思いをさせて」
悲しそうに私を見つめた。
そうか、雪之助は知っているのか。
雪之助が悲しむと思い、隠していたのだが、気づいてしまったのなら、仕方がない。
私は雪之助の隣に座る。
「私は大丈夫です。それに雪之助さんのせいじゃないです」
私の気持ちを探るように、不安げな瞳が私を射抜く。
私はそんな雪之助を元気づけるように、そっと雪之助の手に触れる。
自分の行動に自分でも驚く。ただ、雪之助を安心させたかった。
「もう、私はどこにも行きませんから」
こんなことで雪之助から離れることはしない。
そう告げると、雪之助は安心したような表情を見せた。
「そういえば、今日はどうしたの?」
雪之助が尋ねる。
「この前、ありがとうございました。雪之助さんのお陰で間違った選択をしないで済みました。ハンカチも借りっぱなしでごめんなさい。これ、良かったら気持ちですがどうぞ」
洗濯したハンカチと一緒にプレゼントを渡す。
「気を遣わなくても良かったのに。でも嬉しいよ。ありがとう」
雪之助の笑顔に思わず心臓の鼓動が早くなる。
私は自分の感情から逃げるように目を逸らした。
「ねえ、季々ちゃん。今度の学園祭、一緒に回らない?」
来月は学園祭だ。
そして原作では彼女が攻略対象と両想いになるイベントでもある。
そういえば、彼女は海斗と廻ると嬉しそうに話していた。
この大学のビックイベントでもある、プロジェクションマッピングを見るのだと楽しみにしていたのが印象に残っている。
きっと、彼女は海斗と付き合うのだろう。
ダブルデートの後、二人は着実に関係を進めていった。
少し前の私なら、彼女の告白イベントを見守ろうと躍起になっていただろう。
しかし、今は彼女の片想いが実るのを友人として願うだけだ。
友人として、彼女が幸せになるのを見守る。
前まで、彼女と関係を進めていく海斗に嫉妬心を抱いていたが、今はない。
そして、例によって彼女は予定がある為、私は学園祭を回る相手がいない。
「予定は空いてますが、私でいいんですか?」
相変わらず私は可愛げのない返答をしてしまう。
そんな私に雪之助は優しく微笑む。
「君がいいんだ」
そう言われ、私は顔を紅潮させ、頷いた。
まさか、私が雪之助と学園祭を回るなんて。
人生って本当に読めないな。
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