25(雪之助視点)
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季節も秋めいてきたある日の午後。
僕は大学でファンクラブの子達と昼食を取っていた。
まさか自分にファンクラブが出来るとは思わなかった。しかし、どんな形であれ、好意を向けられるのは嬉しいことだ。
無碍にするものでもないと思い、僕は毎週火曜日は彼女達と昼食を食べるのが日課になっていた。
昼食を取り終わると、偶然紅葉と会った。
学部も違うため、普段は大学ではなかなか会えない。紅葉の授業が休講になり、食堂で時間を潰していたらしい。
僕も昼食の後は授業が無かったので、紅葉の時間潰しに付き合うことにした。
「しかし、季々ちゃんと和解出来て良かった」
彼女は僕のお気に入りだ。
だから最近の僕の会話の話題は彼女のことばかりになるのは許してほしい。
最初は彼女のコロコロ変わる表情や彼女の友人に対する執着っぷりが興味深くて観察していただけだった。
それが気づけば、興味以上の感情を抱くようになった。
だからこそ、彼女から急に距離を置かれた時は戸惑ったし、寂しかった。
彼女と会った時は思わず抱き締めてしまった。ここで、離したら彼女とは永遠に会えないような気がして。
ふと、紅葉が何かを言おうか迷っている素振りに気がついた。
「紅葉、どうかした?」
「ああ、いや、なんでもない」
季々ちゃんの話になってから紅葉の様子がおかしくなった。
もしかして、季々ちゃんに関することなのか?
「もしかして、季々ちゃんのこと?」
僕がそう尋ねると紅葉は分かりやすく固まった。
僕は紅葉に話すことを促す。
紅葉は少し迷った後にゆっくりと話し始めた。
「実は位方君が君のファンクラブ会員に怪我をさせられた」
僕は思わず息を飲む。
季々ちゃんが怪我をした?僕のファンクラブ会員がそんなことをしたのか?
信じられないと目を見張った。
紅葉は話し続ける。
「植木鉢で足を怪我していた。それだけじゃない、その後彼女を送る途中の踏切で彼女は勢いよく誰かに突き飛ばされた」
「なっ、彼女は無事なのか?」
何も知らず、呑気に彼女と連絡をしながら、ファンクラブ会員と昼食を摂ってた自分が情けなかった。
「ああ。だが、ファンクラブ会員の行為は行き過ぎている。下手したら、彼女の身が本当に危ない」
「そう…だね」
未だに信じられない。そんなことがあったなんて。
「私からファンクラブ会長に注意をしたが、どうやら君が位方君を特別扱いしているのが気に入らないらしい」
「なるほどね」
僕はふつふつと湧き上がる暗い感情を抑えることが出来なかった。
紅葉はその僕の感情に気が付き、苦笑いする。
「位方君が心配なのは分かるが、感情的になるな。君が感情的に行動したら位方君が傷つくだろう」
そんなの分かっている。
だが、こんな状況を招いたのは僕のせいだ。
僕は自分自身に怒りを感じながら、席を立つ。
「ファンクラブの子達と話してくるよ。多分食堂にいると思うから」
去り際、紅葉は忠告した。
「あまり感情的になるなよ」
僕は頷く。
ファンクラブ会員の子達はすぐに僕の存在に気が付く。
最初は明るかった表情も僕の様子を見て、どんどん強張らせる。
僕は彼女達にファンクラブ会員を集めるようにお願いした。
ちゃんとけじめをつける。
誰であろうと彼女を傷つけることは許せない。
僕は彼女を守りたいんだ。傷つけることはあってはならない。
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