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いよいよダブルデートの日が来てしまった。
彼女にヘアメイクアレンジをしてもらい、昇天しそうになったところを堪えて何とか定刻通りに集合場所に着いた。
白いワンピースを着た彼女はまるで女神のような神々しさがあった。
海斗と雪之助は集合時間の5分前に待ち合わせ場所に来た。
今日は最初、映画を見てから、近くのレストランで遅めの昼食を取ることになっている。
見る映画は今、話題の洋画だ。
チケットは雪之助と海斗が取ってくれた。
どうやら、男性陣も早めに二人で待ち合わせ
して、映画のチケットを買いに行ってくれていたらしい。
映画館に行き、上映スクリーンに向かう。
海斗、彼女、私、雪之助の順で座った。
当初、海斗を監視しようとしていたが、映画があまりの面白く、つい見入ってしまった。
エンドロールが流れて、彼女の方を見ると、海斗と手を繋いでいた。
逆に何でここまで行っていて付き合ってないのか不思議でしょうがない。
リア充の気持ちは分かりかねる。
映画が終わり、レストランに向かおうとした時、雪之助が不意に私の手を取った。
思わず、全身が硬直してしまった。
雪之助はそんな私の様子に小さく笑い、彼女達に提案する。
「二人とも、これから、別行動にしない?」
え、と私は思わず声に出す。
すると、雪之助は耳元でこっそり囁く。
「彼女達を二人っきりにさせた方がいいんじゃないかな。二人の仲を深めるためにも」
確かに、二人きりでちゃんとしたデートという名目をしたことのない彼女にとっては願ってもいないチャンスだろう。
しかし、海斗との仲が急展開するのも複雑な心境になる。それに死亡フラグが彼女を襲ってきたら、と思うと不安で仕方がない。
でも、彼女の幸せを考えるのが最優先だろう。海斗はかなり警戒心も強い、海斗と一緒にいたら、通り魔やストーカー、事故には合わないだろう。
何より、海斗ルートの死亡フラグの殆どはヤンデレ化した海斗なのだから。
苦渋の決断で、私は雪之助に賛同する。
「ソウダネ、ソウシヨウ」
雪之助は思わず苦笑いした。
彼女と海斗も構わない、とのことだったので、私達は別行動をすることになった。
映画館から去る彼女達の背中を眺めていると、雪之助が声をかける。
「じゃあ、僕達も行こうか」
そう言った雪之助は、彼女達と同じ方向に向かった。
「彼女達のこと気になるんでしょう?バレないようについて行って、僕達も近くのレストランに入ろう」
願ってもいない提案に私は大きく頷く。
海斗がヤンデレ化しないように、私は見守りたかったのだ。
私達はこっそり、彼女達を付けていく、すると彼女達は地下のレストランに入っていった。
雪之助は少し困ったような顔をする。
「海斗くん、僕達がつけていることに気づいたみたい」
どうやら、雪之助曰く、海斗が途中から後方を気にし出す素振りを見せ始めたらしい。
地下に行くということは、何か後ろめたいことがあるのだろうか。
不安げな顔をする私を雪之助が宥める。
「大丈夫だよ、向かいのこのビルの三階にあるレストランに行こう。そこからなら、彼女達がレストランから出るところを見れるよ」
雪之助の提案通り、私達はそのレストランで様子を伺うことにした。
勿論、席は窓際だ。
私はそれまで、彼女を追うことに集中していた。
そして、ふと、エレベーターに乗る時に気づいたのだ。映画館からずっと雪之助と手を繋いでいたことに。
すっかり、断るタイミングを失い、席に着くまで、私達は手を繋いでいることになったのだった。
そのレストランは雰囲気のある、隠れ家レストランだった。
メニューを注文して、私は外を気にしつつ、雪之助と映画の話やバイト先の出来事など他愛もない会話をした。
「そういえば、季々ちゃんは好きな人とかいるの?」
「いません」
そんな質問を投げかけられ、私は思わず間髪入れずに即答してしまった。
私のその様子を見て、雪之助は苦笑いした。
現世どころか前世でも30くらいまで生きていたが、彼氏いない歴イコール年齢の人間だ。
唯一したこの恋愛ゲームもヒロインみたさで購入した為、攻略対象達の砂を吐くほどの甘いセリフは全てオートスキップしている人間に彼氏なんぞ無縁だ。
「じゃあバイト先の中で好みの異性をあげるとしたら?」
最初に浮かんだのは雪之助の顔だった。
しかし、本人を前にそれを言うのは恥ずかしかった。だから、次に浮かんだ紅葉の名前を挙げた。
一番、一緒に居て落ち着きそうだからだ。
「うーん、紅葉さんですかね?」
そう言うと雪之助は目を細めた。
「ふーん。紅葉か。確かに頭も良いし、良い人だよね」
どこか、面白くなさそうな顔をしている。ここは社交辞令でも目の前にいる彼を挙げるべきだったのだろう。
「紅葉さんと一緒は落ち着きそうですが、雪之助さんが彼氏だったら、楽しそうですよね」
そういうと彼は少し驚いた顔をし、目を逸らした。
「へぇ、そういうこと言うんだね」
どういうことを言ったのだろう。何かおかしかったか?
私が首を傾げていると、雪之助はその話題に触れず、じっと私を見つめた。
「そういえば、今日の君はいつもと雰囲気がだいぶ違うね。この前は髪型が違ったけれど、今回は服装もいつもと違うね」
私は雪之助に見つめられ、しどろもどろになりながらも答える。
「愛ちゃんが今日の為に服を選んでくれて。髪やメイクもしてくれたんです」
そう言うと雪之助は微笑んだ。
「僕とのデートのために選んでくれたんだ」
しまった。確かにこの言い方だとそうなってしまう。
私は訂正するのも違うと思い、俯いた。
「本当に可愛いな」
雪之助の甘い声で、私の顔に熱が集中した。
勘違いするな、と心の中でアラーム音が鳴り響いた。
注文した品を食べ終え、ふと、外を見ると彼女達が見えた。
彼女は少し立ちとまり、スマートフォンを触る。
すると、私のスマートフォンにメッセージの受信音が鳴った。
「私達、そろそろ帰るね。今度のバイトの時にまた話したいな」
そして、彼女と海斗は手を繋ぎ、駅の方向へ歩いた。
彼女達の雰囲気からして、おそらく大丈夫そうだと安心した。
私が雪之助に彼女達のことを説明すると、よかったね、と笑ってくれた。
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