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2日目の今日はプールだ。
私達が行くプールはかなりの規模で、屋内外両方に様々なプール施設を設けている。
その前に女性陣で朝食を作った。
彼女はフレンチトーストを作り、魔姫は野菜スープを作り、私はサラダを作った。
二人は私がゲテモノ好きだということを知っているので、少々心配そうな面持ちをしていたが、ドレッシングも隠し味を入れることなく、普通のものを完成させた。
二人が恐る恐る試食する。
口にし、その味が普通だったことに少し安心した様だ。
私はその様子を苦笑いして見つめていた。
しばらくして、男性陣がダイニングに来て、食器を用意し始めた。
各々の準備ができ、私達は朝食を食べ始めた。
「うん、うまい。このフレンチトースト、愛が作っただろ?」
海斗がそう尋ね、彼女は嬉しそうに微笑む。
「うん、どうして分かったの?」
「高校の文化祭でお前のクラス喫茶店やってただろ。その時、お前料理担当で、練習してたじゃないか。その試食をした時、食べたフレンチトーストと同じ味がしたんだよ」
そうすると二人は笑い合う。
私は内心嫉妬にかられながらも、見守った。
制服姿の彼女もさぞ愛らしかっただろう。
「うむ。スープも美味いな。素材の味が出ている」
「ありがとうございます。お口にあって良かったわ」
紅葉と魔姫も和気藹々と話している。
雰囲気は違うが、二人はお似合いだよな、と思った。
「季々ちゃんはこのサラダ作ったの?」
「切って盛り付けただけですけど」
そう言うと雪之助は苦笑いした。
「美味いよ。ドレッシング、どこの使ってるの?」
「自分で調味料合わせて作りました」
「へえ、ドレッシングって自分で作れるんだ」
「意外と簡単ですよ」
そう話を続けていると、四人が微笑ましそうにこちらを見ていた。
雪之助と一緒にいると、いつも居た堪れない気持ちになる。きっと魔姫達がからかうからだ。
朝食を食べ終え、私達はプール施設に着いた。
男性陣は先に着替え終わったようで、プールサイドで待っていた。
「みんな!ごめん、お待たせ」
彼女がそう言って、男性陣の方へ向かう。
そんな彼女を見て、海斗は自分の上着を彼女に被せた。
「こら、走んないの。それにほら、これ着て」
彼女はすぐにパーカーを着せられ、少し不服そうだ。
「似合ってないかな、この水着」
「似合ってるよ。でも、こういうところはナンパ目的で来る人も多いから、プール入らない時はこれ着てなさい」
まるで彼女の父親のように話す海斗。
確かに変な虫が寄ってきてしまう。ナイスアイデアだ。
「季々ちゃんはワンピースタイプの水着を着てくると思ったけど、良い意味で予想を裏切ってきたね。とても似合ってるよ」
雪之助はさらっと私の水着姿を褒めてくれた。私は少し恥ずかしくなってしまう。
しかも、私がワンピースタイプの水着が好きなの何でわかるんだ。
「あ、ありがとうございます」
「暗田くん、良ければこれを使ってくれ。先程から周りの男性が君のことを見ている」
「あら、勘違いではないですか?きっと愛や季々を見ているんですよ」
「いや、頼む。私としても、その、目のやり場に困る」
魔姫の着ている水着はシンプルなビキニだ。しかし、魔姫のプロポーションも相まってグラビアアイドルのような色っぽさが出ている。
紅葉は少し顔を赤くしている。それを見た魔姫は笑いながら、紅葉のパーカーを借りた。
しばらく、プール施設で遊んでいると、彼女と海斗が仲良さそうに遊んでいるのが見えた。水着姿の彼女を独り占めする海斗が羨ましくて仕方がない。
喉が渇いた私は、一人でプールから出て、飲み物を買いに行った。
「ねぇ、彼女。ひとり?」
飲み物くらいだからと、一人で買いに来たのが間違いだったのだろう。
テンプレ的なナンパに引っかかってしまった。
いや、彼女が来なくて正解だ。そして、海斗と一緒にいるのも今回ばかりは良かった。
こんなどこの馬の骨かも分からない男と彼女が話すのは耐えられない。
「無視はひどくない?折角なら俺たちと遊ぼうよ」
無視を決め込み、私は自動販売機で飲み物を買う。
すると、背後で声が聞こえた。
「ごめんね。この子僕の連れなんだ」
声の方を見ると、雪之助が側にいた。
雪之助は私の肩に手を回して、にっこり笑う。しかし、目は笑っていなかった。
雪之助を見て、ナンパ男はすぐに立ち去った。
「ありがとうございます。雪之助さん」
そう言うと、雪之助は少し呆れたように言う。
「君は可愛いんだから、もっと警戒心を持った方がいいよ。一人であんな無防備にいたら、誘ってくれって言っているようなものだよ」
私が可愛いわけがない。しかし、仮にも自分は女だ。一人でフラフラするのは危なかったかもしれない。
女だったら誰でもいいという男はこの世にたくさんいる。
私が素直に謝ると、雪之助は頭を優しく撫でた。
「それじゃあ、行こうか」
そう言うと、雪之助は自然に手を握ってきた。抗議をしようとしたが、先程のナンパ男のような人を避けるためかもしれない。
善意と捉えて、敢えて私は何も言わず、手を繋がれたまま雪之助について行った。
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