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謎の恐怖心を振り切り、私は楽しみながら彼女を守ることに専念した。
バーベキューの片付けが終わり、風呂から上がり、リビングに戻ると、海斗がいた。
「あれ、みんなは?」
「雪之助さんと紅葉さんは飲み物買いに行ったよ。愛と魔姫さんは部屋に戻ってると思う」
「そうだったんですね」
そして、沈黙。
攻略対象の中で一番接点のないのが海斗だった。
バイト先で必要最低限話すくらいだ。
彼女の恋路を邪魔したくない、という理由もあるが、それ以上にお互い相性が合わないことに気がついているのだろう。無駄な接触をしていなかった。
「えっと、立ってるのもなんだし、座る?」
海斗が隣のソファに座ることを促す。
断る理由もなかったので、私は勧められるがまま座った。
「愛から聞いてるよ。季々ちゃんは友達思いで優しいって」
私の知らないところで彼女は自分の想い人に私の話をしているのか。
しかも褒めてくれているなんて。
思わず、頬が緩みそうになる。
何も言わずに俯いていたので、海斗が訝しげにこちらを見ている。
慌てて、取り繕った笑顔をすると、海斗は苦笑いした。
「そういえば、雪之助さんと仲良いんだな。あの人が特定の女の子と仲良くしているの見てるの初めて見たよ。ほら、あの人博愛主義って感じだから」
「いや、そんな関係では…」
というか、特別扱いされているように見えるのか。ファンクラブが怖いので、やめてほしい。私と雪之助はグルメ友達だ。
あの食事の後、何回かご飯に行っているが、デートではないと信じている。
そう、私達はグルメ友達だ。
自分に言い聞かせていると、海斗が苦笑いしていることに気がついた。
「ごめん。そっか、違うのか」
何か馬鹿にしている気がするが、深追いしないでおこう。
そして、私は気づく。これは彼女との関係を探るチャンスなのでは。
「そういう海斗さんはどうなんですか?愛ちゃんと」
そういうと目を細め、海斗は少し考えてから、応える。
「彼女とは親しくしてもらってるよ。昔からの知り合いだけど、彼女は妹みたいなもんだから」
さらっと躱されてしまった。
相変わらず食えない男だ。
「異性としては見てないんですか?先程のお二人を見ると、とてもお似合いでしたが」
そう言うと、海斗は苦笑いする。
「愛は女としても魅力的だけど、俺と彼女は兄妹みたいなものだよ」
余裕があるのかないのか。折角彼女が好意を向けているのに、これでは彼女が報われない。
「愛ちゃん、他の男に取られちゃいますよ?」
少なくとも桜太は異性として彼女を見ている。そう言うと海斗は目を逸らした。
「そうだな。そうしたら、俺はその男が愛にふさわしいか見極めなきゃな。可愛い後輩が変な男に引っかからないようにね」
最後まで海斗の真意が分からなかった。
しかし、この男はゲームでもこの調子だった。
のらりくらりと躱して、いつのまにかヤンデレ化して急に愛情をぶつけ出す。とても恐ろしい。
面倒な男に彼女も引っかかったものだなと、爽やかな作り笑いを浮かべる海斗を見て思った。
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