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その日は不思議な夢を見た。
周りは真っ暗であたりを見回しても何もなかった。
暫くすると、プロジェクターで映し出されたような景色が見えた。
そこに映っていたのは、私が彼女と出会ってから今に至るまでの記録だった。
彼女との出会いを第三者の目線から走馬灯のように眺めている。
ぼうっと眺めながら、ふと私は自分の感情に違和感を覚えた。
今の私は彼女を中心に世界が回っている。
前世、私が彼女に抱いてた想いはこれほどまでに強かっただろうか?
二次元だと割り切っていたから、冷静だったのだろうか?
昔の私はゲテモノ好きでたまにアニメを見るくらいしか趣味といったものがなかった。
彼女に対するこの感情はそういった好きを遥かに超えている。
この前、紅葉と会って自分の彼女への想いが後ろめたくなったから、そう感じているのだろうか。
私はどこか狂っているような気がする。
映し出された映像が終わり、再び真っ暗な闇が訪れる。
暗い闇の中に沈んでいきそうになる私を止めたのは目覚ましのアラーム音だった。
そうだ、今日はバイトの後に雪之助とご飯に行くのだ。
バイトの前にまず大学だ。
私は夢見が悪く、モヤモヤした気持ちを振り払って、身支度を整える。
身支度を済ませ、外に出ると、暖かい日差しが私の目を射った。
教室に着くと、どこかそわそわした彼女が私を待っていた。
「おはよう。どうしたの?そわそわして」
茶目っ気たっぷりな顔をして、彼女は私を見つめる。
相変わらず、可愛い。
「今日、雪之助さんとご飯行くんだよね?」
どうして皆、期待を込めた目でこちらを見るのだろう。
何度も言っているようだが、雪之助と私にはそんな期待するような出来事はない。
「うん、でも普通にご飯に行くだけだよ?」
「勿論ご飯だけかもしれないけど、もっと仲良くなれるかもしれないじゃない!」
もっと仲良く?元々そんなに仲良い関係ではないのだが。
寧ろもっと仲良くなりたいのは彼女だ。
「多分、愛ちゃんが期待しているようにはならないと思う」
私が乗り気じゃないのを察したのか、彼女が尋ねる。
「きーちゃん、あんまり乗り気じゃない?」
好みのレストランに行くのは楽しみだが、相手はファンクラブもある有名人だ。
「気が引けるっていうのが正しいかな」
そう言うと彼女は大丈夫だよ、と元気付ける。彼女の励ましはどんな栄養ドリンクより効きそうだ。
そして、彼女は微笑む。
「ふふ、きーちゃんとこういう話出来るの嬉しい。いつも私が一方的に話してるから」
確かに私はいつも海斗の話を聞いているが、私が男の話をしたことは一度もない。
彼女は私の恋話が聞きたかったのか。
それなら、私も魔姫のように相手を探すべきか。雪之助はハードルが高すぎるから、街コンにでも行くべきか。
「きーちゃん、変なこと考えてるでしょ」
「え、何が?」
彼女にしては珍しく疑うような顔をしている。そんな彼女も親近感が湧いて、可愛らしい。
夢のことなど忘れて、私は今日も彼女のコロコロ変わる表情を愛でるのだった。
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