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出会い


 罪に問われている者を無罪としなければ俺たちが殺される。そんな理不尽な裁判。それが『悪魔裁判』。




 目が覚めると見知らぬ天井が目に広がる。ただ白いだけで何もない天井に違和感を感じる。真っ白なのは分からなくもないが凹凸もなにもない。理由は分からないが照明の類がないのだ。

 体は普通に動くようで両手を天井にかざしてみるが傷などは確認できない。


 記憶が正しければ何の変哲もない高校生だったはずだ。得意な教科もなければ不得意な教科もない。モテる事もなければ嫌われることもない平凡な生活を送っていた。強いて挙げれば背が少し小さいくらいだ。目を覚ます前はいつも通りの生活を送っていたはずだ。


 なぜこんな場所にいるのか分からない。

 体を起こし、あたりを見渡す。この部屋の中にある物といえばベッドだけで、天井と同じ白い壁に床が目に映る。壁には窓も無く出入りするためのドアが一つあるだけだ。


 起き上がり部屋を調べる……と言っても部屋の中にはベッドしかないし、とても簡易なベッドなため調べる箇所も少ない。そして、調べるのは無駄といわんばかりになにもない。




 あと調べられる箇所はドアしかない。ドアのノブに手をかけようとしたとき、ドアの外から女性の声がした。ドアの外には誰かいるらしい。


 「チョットいい?  ここがどこだか分かる?」


 「分からない。でも、なにか変なところよね」


 どうやらドアの外の人たちも俺と同じ状況らしい。となるとここから脱出するための協力者となるだろうから早く合流した方がいいだろう。


 俺はドアノブを握り回そうとするが金属がぶつかる音がして回らなかった。閉じ込めらていているのかと一瞬思ったが、ロックは部屋側についていたのでロックを外し部屋から脱出する事が出来た。

 ドアを閉める際にロックが外から掛けられるかを確認したが鍵穴は無かった。しっかり調べた訳ではないが部屋には俺以外誰もいなかったはずだが、どうして鍵が掛かっているのか疑問に思うが照明がないのに光を感じている事などおかしな事ばかりだし、長居するつもりはないので深く考えない事にした。


 部屋の外は廊下になっていた。廊下の壁も天井も床も部屋の中と同じで真っ白だ。


 廊下は俺が出てきた部屋の左が突き当たりで右に一直線に伸びていて、その先に両開きの扉が一つと一直線に伸びた廊下の左右にそれぞれ3つずつドアがあり計7つの出入口がある。もう少し詳しくいうと向かって左の突き当たりの壁の下側には高さ10センチ、幅60センチ程度の隙間があるが、当然その程度の隙間から人が出入りする事など出来ない。


 俺が出てきた部屋の右向かいのドアの前にセーラー服を着た二人の女性がこちらを見ている。制服が異なっているので同じ学校ではなさそうだし、俺の通う学校の制服とも違う。

 一人は紺色のセーラー服でこのような事態にも関わらず表情に変化が見られない。何かを考えているのか指で顎をつまんでいる。

 もう一人は女性としては背が高い方だろう俺とあまり変わらないくらいの高さだ。その体に灰色のセーラー服を着ている。顔も体系も大人っぽいがその顔は険しくこちらを睨んでいるようだ。


 「ここがどこか知らないか?  なぜここにいるか分かるか?」


 俺はそう言いながら両方の手のひらを彼女達に見せ、近づく。日頃ジェスチャーなんて行わないので我ながら動きがぎこちないとは思うがこの際仕方がない。


 「どっちも分からないわ。今部屋から出てこの人と話をしていたところよ」


 俺の質問に答えたのは紺色のセーラー服の方だ。最初は視線をこちらに向けただけだったが俺の質問に答えながら顔をこちらに向ける。背中の方に流れていたセミロングくらいの長さの髪が胸の方に流れる。ドアの前にいるところを見るとこの部屋にいたのだろう。


 「あなたはどちらの部屋で?」


 俺は警戒している灰色のセーラー服にも声を掛けた。警戒を解いてもらうことが目的だ。


 「アヤシイ。部屋を聞いてどうするつもり?」


 女性は触っていた自分のショートカットの毛先から手を放し、両手の掌を俺の方に突き出す。


 「え。いや別に」


 俺は足を止めて答える。警戒を解くつもりで声を掛けたのに、余計に警戒されてしまったようだ。

 女性は片手を下ろし、もう片方の手で俺を指さして言う。


 「アンタが、私たちを攫ってここに連れ込んだんじゃないの?」


 そうかこの異常に気が付いていないのか。照明がない事が異常だが、ない事には気付けなかった様だ。だからと言って俺を犯人扱いするのは飛躍し過ぎている。むしろこの女性が俺を犯人に仕立てようとしているのではないか……とは思うものの最初から事を荒立てるのは得策じゃない。


 「そうじゃない。俺は各部屋に一人ずついるのではないかと考えただけだ」


 「ソレは、あなたが犯人だからじゃない?  ここにいる人数を当てて誘導しようとでもしているじゃないの?」


 俺の言葉は、女性をヒートアップさせてしまったらしく指した指を上下に振り、声も次第に大きくなって更に追及してくる。


 「普通、それくらいの予測はつくだろ?」


 何を言っても無駄だと考えた俺はもう一人の女性に顔を向け同意を求める。

 目の前の女性はふっとため息をついた後、灰色のセーラー服の女性に顔を向けて言う。


「なんとなくだけど、その可能性はあるとは思っていたわ」


 灰色のセーラー服の女性はこちらに顔を向けて言う。


「フーン。じゃ、そういうことにしておいてあげる」


 灰色のセーラー服の女性はまた紺色のセーラー服の女性に向き直り言う。


 「アタシ、レナっていうのよろしくね」


 レナと名乗った女性はこちらには顔を向けない。あくまで俺をのけ者にするらしい。

 しかし、疑問に思うべきは、苗字ではなく名前を言った点だ。分かり辛い苗字だったりする場合もあるので、ないとまでは言わないが一般的ではない。フルネームを言ったうえで名前の方で呼んで欲しいというならまだ分かるが……いや、ここを出たらそれまでの相手と言う事を考えると、偽名という事も考えられる。


 「挨拶は後にしましょうよ。全員が揃ってから挨拶したほうが手間が掛からないのではないかしら」


 紺色のセーラー服の女性はレナの方を向き優しく微笑んで言った。


 ガチャと音が鳴ってから新たなドアが開かれ、男が顔を出す。


 「こ、ここは何処?  君たちは誰?」


 男はそう言うとドアを閉めて張りのある腹を揺らしながらこちらに歩いてくる。紺ブレザーを着ていて、オタクという言葉が似合いそうな顔をしている。背丈は高い様で残念ながら負けている。


 男の質問に答えようとした時、別のドアが開く音がして、全員で音のした方向を向く。少しだけ開かれたドアから髪の長い女性がこちらを覗いている。


 「あの~」


 髪の長い女性は、そう言いながら部屋から出てくる。背丈は平均より高めでやせ型の体に灰色ブレザーを着ている。知的で大人しそうな顔をしている。


 「お、おうあ」


 髪の長い女性が開けたドアにぶつかりそうになった男が驚き、それに驚いた女性が「ひゃっ」と声を上げる。


 「あ、危ないじゃないか」


 「ごめんなさい~」


 男と髪の長い女性のやり取りに俺たちは微かに口元が緩む。


 「い、いや。別にいい。それより出口を知らないか?」


 男は俺たちの方に向き直りそう言った。


 「今のところ誰も。ただ、あの両開きの扉は怪しい」


 俺はそう言って両開きの扉を指す。この場にいる全員がその扉に顔を向ける。


 「じ、じゃあ、そこに行こう」


 男はそう言うと歩き出そうとするが、紺色のセーラー服の女性が制して言う。


 「待ってよ、あの部屋からは誰も出てきていないから確認しましょうよ」


 紺色のセーラー服の女性が指でドアを示す。俺たちは現在5人でドアは6枚、そして指差されたドアは恐らく未だ開かれていない、人がいる可能性のある部屋のドアだ。この場にいる全員がそのドアに向かって歩き出す。


 紺色のセーラー服の女性がドアをノックし声を掛けるが返事がない。


 ガチャガチャ。俺がノブを回そうとしたが鍵が掛かっていて回らない。作りが同じなら内側からしか鍵が掛からない仕組みになっているので中に人がいることになる。


 「中にいるみたいだけど返事してくれないわ。どうしましょう?」


 紺色のセーラー服の女性がそう言って俺を見る。


 出てこない理由は既に死んでいるか、まだ目を覚ましていないか、人見知り等で出たくないかくらいしか思いつかない。死んでいるならこのドアは開かないので、出たくない人を如何にして出すかを考える必要がある。


 俺は小声で「まかせろ」と言ってドアに向かって言った。


 「この施設はもうじき爆破されるので早く脱出しなければいけないのだがここの部屋の人は何処へいったやら」


 部屋の中からバタバタと物音がし女性の声がした。


 「いまぁすいまぁす今出まぁす。おいて行かないで。いや、ドアが開かない。どうしよう」


 こんな事態になって居留守を使うなんて……と思ったが、これ以上の意地悪をしてへそを曲げられても困る。


 「そちら側から鍵が掛かっていると思いますので開けてください」


 「ぁ。これかなぁ」


 ガチャっと音がしてドアが開く。中から胸に大きな赤いリボンが特徴的なセーラー服を着た背の高さからするとまだ小学生くらいの少女が姿を現した。顔には焦りの色が見えるが俺の嘘のせいと考えると申し訳ない。


 「ナンだ。同年代かと思っていたのに、お子ちゃまとはね」


 不意にレナが呟く。今までが同じ年くらいの人ばかりだったので予測が外れた事には同意するが、当人を前にため息までつくことはないだろう。


 「むぅ。これでも高校生なんですけど。それより早く逃げないといけないんじゃないの?」


 「その事なんだけど嘘なんだよ。居留守されると困ると思ったので……」


 俺の言葉に少女はドアを閉めようとするが、それを俺は足で止めてドアを閉められないようにする。


 「嘘だけど本当にそうなる可能性がない訳じゃない。君だってここから脱出して日常生活に戻りたいだろう?」


 少女は観念して部屋から出てきた。やれやれ人見知りというレベルではなさそうだな。


 こうして俺たちは出会った。




 「ソンじゃあ自己紹介ね。私、レナ。瑞泉ズイセン 麗奈レナが本名だけど言いにくいでしょ?  だからレナって呼んでよ」


 レナはそう言いながら、紺色のセーラー服の女性にどうぞと言わんばかりに自己紹介を促す。


 「私?  私は戸田トダ 沙穂サホよ」


 「サホ、ヨロシク!」


 サホが名前を言い終わるとレナは苗字ではなく名前でサホを呼んだ。これでここでの呼び方は苗字ではなく名前で呼ぶ流れになってしまった。レナに主導権を握られると犯人扱いされそうで怖いのだが、残念ながら凡人の身の俺としては流れを変えることが出来ない。


 「ええ。よろしく」


 サホは俺の方を見る。どうやら出会った順になってしまった様だ。


 「あの扉に歩きながら自己紹介をしよう。時間は有効に使いたい」


 俺の提案に全員が頷く。なぜそう言ったかと言うと、俺が犯人扱いされなくなる為には扉の向こうに何かがある場合なので、早く移動したかった為だ。

 扉の方に歩き出しながら話を続けた。


 「倉田クラタ 修也シュウヤ。よろしく……」


 少し間を置いたのだが俺には『よろしく』は無かった。レナの態度には不満はあるが、ひとまず先に進む方がいいだろと思い直し次を促すために男に顔を向ける。


 「お、小田オダ 蔵人クラトです」


 クラトは誰に向かうでもなく言った。


 レナは意図的に男に対してはよろしくとは言わない様だ。やはり男が攫ったという考えを捨てきれていないのだろうか。


 クラトが誰も指定しなかった為に暫く沈黙が支配する。その事に不親切さを感じながらも俺とレナとサホは髪の長い女性を見る。


 髪の長い女性は自分を指さして言う。


 「え~私?  私はオカ 留美ルミ


 「ルミ、ヨロシク!」


 レナはルミに挨拶を返す。レナはどうやら女性に対しては言葉を返すらしい。男というだけで疑われているのかもしれない。


 「は~。はい。よろしく」


 ルミは愛想笑いをレナに返す。今更ながら今向かっている扉が出口だった場合、そこまでの仲だというのになにがよろしくなのかわからないと思ってしまう。


 最後の一人は表情も硬いままぶっきらぼうに言う。


 「むぅ。山田ヤマダ 優奈ユウナ


 「ユウナ、ヨロシク!」


 そうしている間に扉の前にたどり着いた。扉の上にはプレートが掲げられており『法廷』と書かれている。


 「法廷……よね?」


 「ナンだろうね。出口ではなさそうだね」


 サホとレナが見れば分かるような内容のないやり取りをする。俺はそのやり取りに構わずに扉に手を掛け押してみる。鍵などは掛かっておらず扉はすんなりと開いた。


 扉の先は部屋になっていた。部屋は相変わらずの白い壁だが、広い部屋で天井も高く向かいの壁の上の部分は空いており、そこから六枚の翼を持つ美しいとしか言い様のない天使がこちらを見下ろしていた。


 「皆さんお目覚めの様で何よりです。私のことは裁判長とでも呼んで頂ければ結構です。皆さんには数回ほど裁判に参加して頂きたいと考えております。現在は最初の裁判の準備中ですので暫く自室でお待ちください」


 裁判長は中性的な顔立ちで、声も同様で男性か女性か区別が付かない。穏やかな雰囲気だが、なぜ裁判をするのか、裁判で何をやらせられるのかという説明が不足している為、いい印象を持てない。


 「ちょっと待ってくれ。俺たちは帰りたいのだが」


 「すべての裁判が終われば元の世界に戻れますので安心してください」


 安心できる内容ではない。この裁判長は配慮というものを知らないらしい。そのそも裁かれるのが俺たちである場合、死刑になる事もあるのではないのか?


 「裁判をすると言われましたが、私たちは何をするのでしょうか?」


 発言をしたのはサホだ。


 「ああ、これはすみません。あなた方にわかりやすく言えば裁判員とでも言いましょうか。そんな感じの事をやってもらいます。被告人が有罪か無罪かを判断して頂きます」


 「じ、じゃあ、僕たちが裁かれる訳じゃないって事だ。それなら安心だ」


 クラトは安心している様だが、問題がすべて片付いた訳ではない。


 「サッサと帰りたいんだけど、どのくらいの時間が掛かるの?」


 「待ち時間は出来るだけ早くする様にします。早ければすぐにでも終わりますよ。ええ、本当にすぐ終われますよ」


 レナの質問に答える裁判長。『本当にすぐ終われますよ』という言葉が気にならない事もないが、もっと問題なのは具体的な時間が含まれていない事だ。


 「飲食は~どうするの?  トイレはどこ?」


 「必要はないと思いますが、もし必要な場合は法廷を出て真直ぐ進むと色々な物がありますので自由にお使いください」


 裁判長がルミの質問にも答えるが、そこは確か高さ10センチ程度の隙間があるだけだったが何か仕掛けでもあったのか確認が必要だろう。

いや、必要ないくらい早く終わるという事か?  だが、今も待たされている状態だ。ここにいるのが若者だからいいものの、老人の場合トイレが近いのではないか。


 「なぜ、俺たちが裁判員なのかというのを聞かせて貰えないか?  俺たちはまだ学生であって不適格だと考えるのだが」


 「これは申し訳ありません。説明が悪かったみたいですね。裁判員みたいなものですが厳密には裁判員ではありません。よって不適格という事はありません。それにあなた方は一定水準の知恵を持っていますので、私は適格と判断しておりますよ」


 俺の問いに裁判長が答えが、納得のいくような内容ではなかった。とは言え自力で帰れる手段がない以上、裁判長の機嫌を損ねて帰れなくなるのも困るのでこれ以上の追及は避ける。


 「ちょっと待ってください。あなた、なにか憑いてますよ」


 裁判長が俺を指差して言った。自分を指差して確認すると、裁判長が首を縦に振るので俺の事らしい。体をパタパタと叩くが裁判長から見えるくらい大きな物が付いているらしいのだが何かが付いている感触はない。


 「取れましたか?」


 「いいえ。害はなさそうなので、構わないでしょう」


 他の人たちにも何か付いているかを確認するが首を縦に振る人はいない。気にはなるが害がないならそのままでもいいだろう。

 俺たちは自室に戻る為に法廷を出た。そこでルミがぽつりと言う。


 「あの裁判長は~ルシファーかも~。翼が6枚あるし美しいといわれるだけの容姿」


 ルシファー。最高位の悪魔にして地獄を統べる者で、人を堕落させたとされる悪魔。それほど詳しくない人でもこのくらいの知識はある有名な悪魔だ。小説やゲーム等様々なジャンルで見かけることも多い。


 ルミは恐怖しているという感じではなく、まるで有名人でも見つけたかの様な反応だ。天使の様な姿だし敵ではなさそうなので気にする必要はないのだろうが、こう呑気だと実は悪魔でしたとか俺たちを皆殺しにするとかいう展開になった時に絶望するだけじゃないか。少しは慎重に冷静に行動するべきではないのだろうか。


 俺としては裁判をするという観点から閻魔大王が近いと考えたが、発言するにはイメージに違いがありすぎた。閻魔大王に羽はないし厳ついおじさんであり、ここの裁判長とは異なる。それに閻魔大王という事は俺たちは死んでいるという事であって考えたくもない。


 「ル、ルシファー。なるほど。僕のイメージにも近いよ」


 そういった関係のものが好きなのだろうか興奮気味にクラトはルミに言った。

 クラトの興味の対象がルシファーかルミかは、深く追及しないでおこう。




 俺たちは裁判長が色々な物があると言っていた場所へと来てみた。そこはやはり壁だったのだが下の隙間以外にも、目の前の位置に横60センチ、縦40センチくらいの僅かだけへこんでいる箇所があった。


 「このへこみは奥行が殆どなくて少し距離が離れていると気が付かないな」


 俺は言い訳をするかのように呟いた。部屋から一番近かったのは俺とクラトの男二人なので気付くとすればそのどちらかと言う事になるのだが少なくとも俺は気が付かなかった。


 しかし、このへこみがなんだというのか?

 試しに触ってみると、画面が表示された。その画面には色々な商品が表示されていた。


 「タッチパネルかよ。とすると商品を選択すると自販機の様に下の隙間から商品が出てくるのかな?」


 俺は画面を操作していく。まずジャンルを選択するようだ。ジャンルには食べ物、飲み物、本、文房具と、この『自販機もどき』は幅広く揃っている。


 「ほ、本と飲み物が同じところから出るのはちょっとどうかと思うけど」


 クラトが自販機もどきに不満を漏らす。確かにその通りだ。冷たい飲み物だと濡れている可能性がある。その液体が本に付くのは不快以外の何物でもない。

 使い方が分かった時点で俺は自販機もどきの前を女性に譲る。そこに最初に飛びついたのはユウナだ。ユウナは本を選ぶ。本もいくつかのジャンルが分かれていて、文学、ビジネス、社会、コミック等充実している。


 「ぁ、マンガがあった」


 そう言うとユウナはマンガを選択してさっさと自室に持っていってしまった。

次はルミが小説を選択して歩いて自室に戻る。その次はクラトでこちらも小説を選択して自室に戻る。その次には誰も続かなかった。


 「なにも要らないの?  サホさんレナさん」


 俺は二人に気を使うが


 「アタシたちは話をするから、どーぞお先に」


 レナはどうあっても俺の名前を呼ぶ気はないらしい。こちらがわざわざ名前を言ったというのにだ。レナの態度に不満を感じながらも俺は裁判に関する本を選択する。


 「アラ?  真面目なのね」


 嫌味たっぷりな言い方をするのはまたしてもレナだ。それをサホが「ちょっと、そういう態度は……」と小声で止めようとする。


 「人を裁く側に立ってしまうのだから、多少の予習はしておくべきだろう?」


 俺はそう言いながら本を手に取って自室に籠った。



 この度は拙作を一読いただき有難う御座います。

当作品は真理を追究するナニかです。


 挨拶代わりと言ってはなんですが、魂の作り方をお教えしましょう。

男と女が×××して作りますって話ではないので安心してください。

魂と言えば『大和魂』とか耳にするかと思います。


 え?  違う?  いえいえ本質は同じものです。

『大和魂』を簡単に説明しますと日本人らしさ、または日本人の理想像です。

でも日本人でも差はあります。全員が同じ考えをしている訳ではありません。

ですが日本人全体を大まかに『大和魂』としている訳です。


 人の魂も同じです。人だけでなく多細胞生物は複数の細胞から出来ています。

細胞一つ一つが何処まで思考するかは知りませんが、細胞の集まりによって魂とされている訳です。


 霊的な魂が完全に否定された訳ではありませんが、それは未だに貴方の中に存在しますか?

もし、存在しない場合、貴方の魂は既に悪魔に捕られているのかもしれませんね。


 え?  この悪魔め。魂を返せ?

 イヤですねぇ。元々ないものは取れませんよ。

 アレですか。元々なかったものをあると主張し他者を犯罪者扱いする犯罪者と同じ手口ですか。


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