体力向上!
如月から渡された装着器具は体力測定でも使った踝に付けるリングだった。
「このホール内をそうですね~100万周しましょうか!」
「100万!?」
(桁が…恐ろし過ぎる…)
「大丈夫ですよ~。あっという間に終わります!さぁ、スタートしてください!」
「え、ちょっと…ぅわあああー!!!」
リングを装着され、半ば強引にスタートした。
勢いよく直進したあむだったが壁にぶつかる手前でなんとか能力を抑え、感覚を掴むためゆっくり能力を解放する。
なんとか一周回るとコツを掴み徐々にスピードを上げた。
開始から数十分、692周回った頃あむは体力の消耗よりも目が回ってふらついていると目の前に紫城 てぃあが現れた。
「あむちゃん!だーいじょーぶ?」
「わぁあ!…てぃあちゃん」
「あのねー、一点だけを見つめると目回らないよ」
紫城からのアドバイスであむは一点だけを見つめ再び回り始めるとふらつきも無くなり、目も回らず飛び続けられるようになっていた。
あむが空中を飛び回っている間地上では、ほとんどの生徒が氷晶族と戦闘していた。
複数人で戦闘する者達、1対1で戦闘する者、生徒の能力によって異なっていた。
それぞれが真剣に取り組む中で突然大きな声がホール内に響き渡る。
「…ふざけんなっ!!!」
生徒全員が声のした方を見る。
「…てめぇらみたいな連中に俺の何がわかるっ!!!」
あむも飛行しながら罵声する生徒の方を見る。
(あの人たしか…Fチームの穂積くんだ)
罵声をあげていた彼は監督官の言葉に耳を傾けることなく、ホールを出て行った。
穂積と会話していた氷晶族の男が後を追いホールを出て行く。
飛び続けていたあむは穂積の事が気になり地面に降りて如月のいる方へと向かった。
「何故降りているのでしょう、柚木さん?」
ニッコリ笑顔の如月があむに問いかける。
「穂積くんの事が気になって…」
「柚木さん、彼のことは気にせず体力向上に力を入れてください」
「…でも」
「体力向上に力を入れてください。分かりましたね?」
「は…はい」
あむは詮索を断念し再び体力向上に専念した。
開始から40分経過するとあむは87万周程を回っていた。
目標まであと13万周…。
授業時間内に終えるのか…。




