蓮の怒り
突然B組の教室が勢いよく開く。
「桃瀬、桃瀬 蓮は…」
新海の声に窓際からひとりの男がこちらへ向かってくる。
「桃瀬は俺だけど、なに?」
「俺について来て」
新海は羽根を仕舞い、走り出す。
それに蓮はついて行った。
保健室に着くと蓮はあむの元へ真っ先に向かい、ベッドで横になっている姿を目にした。
そして付き添いでいた監督官の氷河と氷晶族である男の方へ近寄る。
「彼女は無傷だ。今は気を失っているが少しすれば眼を覚ま…」
氷晶族の言葉を聞くと蓮は左手からアニマル能力を繰り出した。
咄嗟に氷河が前に出てフェアリー能力で防御する。
「桃瀬っ」
場所が保健室ということもあり、大声ではないが低く背筋が凍るような声で桃瀬の名前を叫んだ。
「あんた柚木に何したの?」
氷河よりも恐ろしさを増幅させた低い声で桃瀬は氷晶族に問いかける。
「白状するよ。少し探ったんだ。ちょっと確かめたくてね。だが、結果こうなったことは謝るよ」
桃瀬はその言葉を聞くと静まりあむの元に向かった。
「おい、そろそろホールに戻るぞ。お前の紹介もしなきゃならないんだから。桃瀬、ここは頼むよ」
監督官である氷河は氷晶族の男と廊下にいた新海を連れ保健室を出て行った。
それから蓮はあむが目覚めるまで見守っていた。




