蓮の思い
暫くしてあむが落ち着くと2人はベンチに座り、蓮が再び声をかけた。
「実技で何があったの?」
「戦闘訓練…。今もみんなやってる。あむだけ呼ばれたの、監督官に。それで昔話を聞いて怖くなって…だって、戦闘訓練も監督官の話もあむは知らない。この大学はおかしいよ!…みんなみんなおかしい!」
「…」
「…怖い」
「…あむ。…あむも俺たちと同じだったんだよ。憶えてないだけで」
そう呟くと蓮はあむの胸元へ左手を伸ばす。
すると手の周りから光が輝き出した。
「俺の記憶をあむに少し分けてあげる」
蓮はあむと出会ってからあの日の少し前までの記憶を分けた。
「やめて!」
蓮の記憶が映像として頭に浮かび上がると、あむは頭を抱えて叫んだ。
「…大丈夫だよ。あの日のことまで思い出させないから」
蓮がどこか寂しげな表情をして呟いた。
あむの頭の中にたくさんの記憶が流れる。
その記憶のほとんどが明るいものなのに、どこか不安になってしまう。
まるで誰かに思い出すなと言われているかのように。
「小さい頃はあむの方が俺より強かったんだ。あむと対戦してもいつも負けて。勝てなくて悔しかったなー」
話しながらベンチに再び座る。
「蓮とずっと一緒だったから蓮の動きとか読めて…」
(あ…覚えてるあの時の感覚)
あむは立ち上がり両手に力を込めた。
すると大きな羽根を広げあむの周りが輝き出した。
(なんだろうこの感覚。温かくて心地いい。これがあむの力なんだ…)
「おー能力の使い方思い出したみたいだね。これなら戦闘訓練は大丈夫だよ」
「そう?」
「うん。大丈夫、怖くない。自信持って」
「…」
「…なんかあった時は、絶対俺が助けるから」
蓮が立ち上がりあむの頭を優しく撫でた。




