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あむの思い
監督官である氷河の話を聞いてあむは呟いた。
「私は能力者じゃない」
そう呟いてあむはその場から走りだした。
「柚木っ…」
氷河の声を無視してあむは第3ホールを出て行く。
"私は能力者じゃない"と呟くあむは涙を堪えていた。
そんなあむを見た氷河には、引き止めることは出来なかった。
第3ホールを出たあむは走って教室に戻りリュックを抱えて飛び出す。
大学内を走り正門まで向かうと後ろから腕を引かれた。
「あむ!」
目の前に現れたのは蓮だった。
「なんで泣いて…」
蓮の手を振り払い背を向けるあむ。
「あむ、こっち」
再び蓮があむの手を取り走り出した。
正門を出て近くの公園に向かうと蓮はベンチに腰掛けた。
「なんで泣いてたの?」
その問いにあむは口を噤む。
「それ持ってるってことは帰ろうとしてた?」
あむが抱えていたリュックを見て問いかけるが、あむは口を開かない。
少し間をおいて蓮はあむに顔を近づけ、こう問いかけた。
「…なんかあった?」
蓮の優しい声にあむの目から涙が溢れ出す。
「怖い。…怖いよ」
泣きながらその場に蹲ると蓮が背後に回り背中を優しくさすった。