はじめての戦闘訓練。そして知る過去
(戦闘訓練?え、戦闘訓練?なんで戦闘訓練?)
あむの頭はパニック状態だった。
「ね…ねぇ戦闘訓練って何?」
あむが南に問いかける。
「え、戦闘訓練は戦闘訓練だろ!超楽しみだな!」
南の答えにあむは更にパニックになった。
「それじゃあ、各チームこの先で待つ監督官の指示に従い戦闘訓練を始めろ!」
小野寺の言葉で生徒が走り出す。
各チーム監督官の元に着くとそれぞれ戦闘訓練が始まった。
「Aチームは個人の力をまず見ていこうかな。自分の実力を知ることはとても大事なんだ。というわけで、ステージを用意した。スタートラインからゴールまでに様々な敵が現れる。その敵を全て倒してくれ」
監督官である氷河がルールの説明をすると、あむ以外の皆がやる気を出した。
「柚木は少し話があるからあとの5人は先にスタートしていいぞ」
氷河の言葉であむ以外の5人は一斉にスタートを切った。
「君が柚木あむさんか。君の話は理事長からよく聞いているよ。戦闘訓練を始める前に少し昔話をしでもいいかな」
そう言って氷河はあむに昔話をはじめた。
ーこの世界には僕達が今いるここ、人間界とは別に[パラレルワールド]と[ルアール]という世界が存在している。
パラレルワールドはルアールとを繋ぐ世界でもある。
この2つの世界は主に僕達のような能力を持った者が暮らしている世界なんだ。
けれど今から約30年程前に、ある出来事が起こった。
ルアールの世界が、ある能力者の手によって邪悪な闇の地へと変えられてしまった。
暮らしていた能力者達は人間界へと避難し、その日からルアールに立ち入る事が難しくなった。
そして闇の力が増幅し、人間界へと影響を及ぼさぬよう、人間界への橋となるパラレルワールドには僕達氷晶族が盾となる番人となったんだ。
それから能力者は人間界で暮らしはじめ、こういった専門の学び場が出来たんだ。
そして今に至るって感じかな。
けれどいつか必ず、僕達のような能力者は戻らなくてはならない。
その時の為に皆、戦闘訓練をしているんだ。ー
「怯えさせてしまったかな?けれど、これが現状なんだ。すまないね」
(本当に全ての記憶が彼女の中から消えているんだね。自分自身があの出来事を起こした能力者の生まれ変わりだということも…)