相談
しばらくの間、教室に残っていた私達はチームについて再確認をしていた。
「柚木、同じチームだからよろしくな」
「あ、うん。よろしくね」
声をかけたのは南 蒼汰。
少し微笑んで見せた笑顔は緊張からか、ぎこちない笑みになってしまった。
チームごとに会話をそれぞれが交わしている中で、BチームとDチームが早々に教室を出て行った。
教室を出たあむは廊下を歩く蓮を追いかけ走る。
「蓮ー、ちょっと待ってー!」
蓮は1度は振り返ったが、立ち止まらずそのまま歩き正門を出て駅に向かっていた。
あむは蓮を走って追いかけ、正門を出ると漸く蓮に追いついた。
「蓮、歩くの早すぎ…」
「そう?」
「うん。…ねぇ蓮、明日からどうしたらいいのかな」
「あむらしくいたらいいと思うけど」
「蓮が同じクラスでホッとしてたのに…」
会話をしながら駅へと向かった2人。
駅から電車に乗り、紅紫駅で降りて改札を出る。
そして2人は蓮の家に向かった。
家に着くと蓮はあむを2階の自室に招き入れ、飲み物を用意する為1階へと降りていった。
その間にあむはLIMEで母親に蓮の家にいることを伝えた。
暫くして蓮が飲み物とポテチを手に戻って来る。
「連絡した?」
「うん。でも連絡しなくても…」
「心配すると思うけど?」
「ちゃんとしたよ」
「よし。…で、何が不安なわけ?」
「何も持ってなくてもこれからやっていけるかな」
「やっていけると思…」
「蓮も動物になれるんでしょ?」
あむが蓮の言葉を遮った。
「動物になれて、力も持ってる…。あむだけが違う」
あむの言葉を聞いた蓮は本棚から1枚の写真を取り出し手渡す。
その写真には幼少期のあむと蓮が写っていた。
幼いホワイトタイガーの姿をした蓮が…。
「蓮?」
「あむは見たことあるんだよ、この姿」
「全然覚えてない」
「まぁ覚えてなくても仕方ないよ、これ2歳くらいの時だし」
そう言って蓮はあむの手から写真を回収して元の場所に戻す。
(やっぱり、覚えてないか…)
蓮は心の中で呟いた。
「あむ、不安になったら俺に話せばいい。ちゃんと聞くから」
「本当?」
「うん。だからひとりで悩んだり抱え込まなくていい」
「…うん」
蓮は一瞬疑うような目をしてあむを見つめるが、すぐに視線をお菓子へと向けた。
ポテチを開けあむに渡す。
あむは"ありがとう"とお礼を言うとポテチを食べはじめた。
食べている途中、あむがある一面の壁に目を向けた。
その壁は紫色をしていて周りの壁とは異なる色をしていた。
そして更に見たことのある羽が壁に描かれていたのだ。
「この羽…」
あむが触ろうとした瞬間、蓮があむの手を引く。
「触らないほうがいい。それに反応するから」
蓮の言う"それ"とはあむの左手首についているブレスレットの事だ。
「え、これデザインじゃないの?」
あむが驚く。
「うん。あっちの世界とを繋ぐ羽だよ。勿論、バレたらアウトだけど」
「…よく行くの?」
不安そうな顔をするあむ。
「いや、全く。言ったじゃん、バレたらアウトだって。だから目的がない限りは使わない」
蓮の言葉にあむは少し疑問を浮かべたがこれ以上聞くことはしなかった。
「そろそろ帰ろうかな」
「あーもう15時か」
蓮とあむは部屋を出て玄関に向かった。
「お邪魔しました」
あむが玄関の扉を開けて外へ出ると蓮も外に出た。
扉付近で蓮は止まる。
「明日、がんばれ」
「ありがとっ。蓮もね!じゃあね、ばいばーい」
あむは蓮に向かって手を大きく振ると、蓮は"はいはい"というような感じで小さく手を振った。