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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第一章 太陽と月の双子王女~王都アルマブルク編~
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第7話 旅へ向けて

 魔物を討伐した日の翌日、シオンは朝起きてリビングに行くと

「おはよう、シオン」

 リーティンが台所で朝食の用意をしていた。


「母さん!起きて大丈夫なの!?」

「ええ。昨日夜遅くにシオンが魔法かけてくれたでしょ?そのおかげかもしれなわ」

「気付いてたんだ・・・」

「ええ、シオンの魔法は暖かくて好きよ。もちろんそこに隠れているリシアの魔法もね」

 シオンが振り返るとリシアが顔を覗かせていた。

「母さん?もう大丈夫なの?」

「ええ、リシアのおいしいご飯も食べたからね」

「っうう・・・よかった・・・ほんとうに・・・よかった・・・」

(リシアは本当に母さんが好きなんだな)

 シオンはそのほほえましい光景を見てそう思った。


 その後、朝食はすぐにできてみんなで食べることとなった。

「シオン、出発はいつなの?」

「予定では2日後の早朝だよ」

「そう・・・寂しくなるわね・・・」

「うん・・・本当に寂しくなるね・・・」

「・・・ごめん」

 シオンはリーティンとリシアに寂しそうな顔をされ、謝ることしかできなかった。


「ううん、いいのよ。シオン。こうなることはあなたを拾った日に覚悟はしていたのだから」

「兄さん、私ももっと強くなる。だから兄さんは安心して」

「二人とも本当にありがとう・・・」

 シオンはいい家族に育てられたと言葉に乗せてお礼を言った。


 朝食後、旅に出る前にいろいろ用意をしようと庭に出て作業を開始した。

 昨日、早朝迎えに行く際に採取した薬草や木の実を薬にしてしまおうと考えたのだ。


 怪我は治癒魔法でなんとかできても、風邪や毒といった物には専用の魔法薬が必要なのだ。


 異空間袋から薬の材料と器具を出していく。作り方としては材料の組み合わせと、そこに込めるマナの種類で変わる。シオンは丁寧に作業していると

「「おはようございます」」

 とリィナとレィナが挨拶とともにやってきた。

「ああ、おはよう」

 元気に二人に挨拶すると、二人はシオンに近づき作業を見に来た。

「これは何しているの?」

「これは魔法薬を作っているんだよ」

「魔法薬ですか」

「そう、旅の最中に風邪や毒を受けた時に必要になるかと思って」

「「なるほど~・・・」」

 二人は納得したように頷く。

「もうちょっと待って、もうこれで終わりだから」

「わかった」「わかりました」

 シオンの魔法薬作成が終わった後は、リィナとレィナの精霊魔法の特訓である。


 昨日の魔物を討伐したときの精霊魔法は発動しなかったが、昨日よりマナの扱いが上手くなっていた。

「昨日よりマナの扱いが上手くなっているね」

「たぶんだけど、魔物を倒した時の精霊魔法使った影響かもしれない」

「そうですね。あの時とは少し違いますけど、マナの扱い方が感覚的にわかったといういいますか・・・」

「なるほど・・・。少し疑問なんだけど」

「なぁに?」「何ですか?」

「魔物を倒した時のマナと、今特訓で使っているマナって別のものなのかな?」

 シオンが質問すると

「レィナはどう思う?」「リィナはどう思います?」

「「・・・・・・・・」」

 二人は同時に同じ質問をお互いにして、一瞬固まってしまった。


「私の場合は同じだと思うけど・・・なんていうのかな・・・」

「密度が違う感じですか?」

「そうそう。ってことはレィナも?」

「そうですね・・・。私も同じ感じだと思います」

「なるほど・・・密度か・・・」

(密度ってことは密度を上げればいいだけ?でもさっきそれがわかっているなら試しているはずだもんな~・・・。他にも条件はあるのか?それに使用しているマナの密度が違うというのなら、今の状態の精霊魔法にも瘴気の浄化はできるのか?)


 シオンが少し考えていると

「「シオン君?」」

 いつのまにかリィナとレィナが目の前で覗き込んできた。

「っ!大丈夫だよ、ごめん、少し考え事してた」

 気付くと目の前に二人の顔があって驚いてしまった。


「ふふっ。昨日はいろいろあったけど」

「そうですね。そのおかげでいろいろなシオン君が見れて嬉しいです」

「だよね。私たちの前で無防備に考え事をするってことは気を許してくれていることだもんね」

「赤くした顔もけっこう可愛いですしね」

「「ふふっ」」

 ふたりは嬉しそうに笑った。その笑顔は可愛くてドキッとして

「あははは・・・」(確かにそうかも・・・)

 笑って誤魔化しながら、シオンは心の中でそう思うのであった。


「でも笑った二人の笑顔もすごく可愛いよ」

 反撃の意味も込めてそう言うと

「「ふぇ!」」

 そんな声を出しながら

「「あの・・えと・・・ありがとう」」

 二人も顔を真っ赤にして言うのであった。


 昼食はリィナとレィナと一緒にシオンの家で食べることになった。もちろんアルバルトさんも呼んでだ。


「おお!そうか!精霊魔法が上手くなったか!」

 シオンがリィナとレィナの精霊魔法の上達具合を伝えると自分のことのように喜んでいた。そんな父親の姿を見て二人は少し恥ずかしそうにしていた。


「それに娘たちの間に我以外の者が入る姿を見ると、いよいよって感じに見えるな!」

 そう、今シオンの家で昼食を食べているのだが、リィナとレィナの間にシオンが座る形を取っている。


 公の場では双子の王女のため基本隣同士で座っていた二人だ。間に入る異性としては父親と兄ぐらいなものだろう。

「ちょっと不思議な感じだね」

「そうですね。入るとしても家族の誰かでしたから」

「僕としてはちょっとまだ恥ずかしいかな・・・」


 シオンはこの状況にはなかなか慣れそうにないなと思っていると

「シオン君、はい、あーん♪」

「こっちもですよ。シオン君。あーん♪」

 リィナとレィナが追い打ちをかけて来た。

「ちょっ!二人とも?!」

 シオンは突然のことで狼狽してしまっている。


「いいじゃないですか?婚約もしましたけど、私たちはまだ出会ったばっかり」

「そうだよ。恋人みたいなことだってしてみたいもん」

 そんな二人の言葉に恥ずかしくも嬉しさを感じ

「あ、あーん」

 とシオンは観念して、リィナの方から食べさせてもらった。

(何だ、このお互いの親がいるのにこの仕打ちは!)

 と内心抗議していると

「シオン君、こっちもありますよ。あーん♪」

 次はレィナに食べさせてもらった。この状況を他の皆がにやにやしながら見ている。


「我が子のこんな姿を見るのはこっちも少し恥ずかしいわね」

「そうですね。でも兄さん・・・いえ、3人共とてもお似合いですよ」

「我も少し恥ずかしく感じるが、娘たちとシオンがこうやっているのを見るのは嬉しい限りだ。今後もその調子で頑張るのだぞ」

 3人が3人とも止めようとせず、むしろ煽ってきている。

(恥ずかしくて死ぬかも・・・)

「「はい、あーん」」

 二人は照れながらも食べさせてくるのをやめなかった。

(二人とも少しは躊躇して!恥ずかしさで死ぬから!!)

 とシオンは内心思いながらも、このまま食べさせられるのであった。


 公開処刑された気分のシオンは昼食が終わった後、長椅子の上でぐったりしていた。


「ごめんね、つい楽しくなっちゃって・・・」

「ごめんなさい、私も調子になっちゃいました・・・」

 二人は調子に乗ってしまったことを悪く思ったのか、シオンの傍の床のカーペットの上に座り謝ってきた。


「大丈夫だよ・・・精神的に少し疲れただけだから・・・」

 そう言いながらもまだ顔は熱いままだ。

(なんか一生分の恥をかいた気分だ・・・。午後はまた精霊魔法の特訓したほうがいいかな?・・・特訓?)

「そうだ!!警備隊の特訓と見回り!!忘れてた!!」「「っ!」」

 シオンは警備隊の仕事があったのをすっかり忘れていた。突如起き上がったシオンの近くにいた二人は驚いて、後ろにひっくり返りそうになってしまった。

「あ!ごめ・・ん」

 驚かせてしまったことに誤りつつ二人を見ると、二人は後ろにひっくり返りそうな形なのでシオンからはスカートの中が丸見えの状態だった。因みに二人の下着はお揃いの様でピンク色だった。

「「ん?・・・あ!」」

 二人はスカートの中が見られたことに気付き慌てて隠した。

「うぅ~~・・・昨日に続き今日まで・・・」

「シオン君はそんなに私たちの下着が見たいのですか?」

 二人は顔を赤くしながらそんなことを言ってきた。

「昨日のも今のも事故だからね!」

 そんな誤解を受けたくないので、慌てて否定をした。


「シオン。警備隊の方へは旅のこと今朝早く伝えたから大丈夫よ」

「え?」

 リーティンが3人のやり取りなど気にしないで、そんなことを言ってきた。

「そうなの?」

「ええ、昨日の騒ぎがあったから朝一番に心配して様子を見に来てくれたの。その時に旅のこととか伝えたわ。だけど、後でちゃんと挨拶には行きなさい」

「わかった。ありがとう、母さん」

 午後の予定はとりあえず警備隊の詰め所に顔を出すことが決まった。


そしてシオン一人で出発しようかとすると

「そうだ!シオンもこの里で育ったのだから、里の皆は家族みたいなものでしょう?詰め所に行くついでに二人も連れて行って、一緒に旅に出るということも含め紹介と挨拶してきたら?」

「それはいい!もし結婚する・・・いや絶対結婚させるなら顔を見せるいい機会だ。旅に出ると恐らく暫くは帰って来れなくなるわけだしな」

「ちょっと待って!また晒し者になって来なきゃいけないの!それにさせるって!」

「「結婚・・・」」

「それって」

「あれですね」

 二人はくねくねしながら照れていた。

「あれ!?二人は否定なし!?」

「否定も何も」

「シオン君となら」

 二人はそう言い顔を見合わせて

「「ねー」」

 と非常に嬉しそうに言うのであった。

「ええ~~・・・」

(昨日の今日なのにそれでいいの?王女様だから一般とずれているのか?それとも自分がこんな里で育ったからなのか?王都の方ではこれが一般的なのか?)


 シオンは呆れながら考えてると

「ついでに言っとくがな、こいつらは学校には通っているが、王女として他の奴らは接しているからシオンのような友人はいない。で、縁談も基本は地位を狙っての縁談しか来てないから、けっこう少女らしいことの憧れは強いぞ」

 アルバルトさんはシオンに耳打ちをしてきた。


「だからなのかシオンの純粋な会話と優しさで結構重症になってきている」

 アルバルトさんはシオンの両肩に手を置き

「だからシオン!だからこそお前を異例の二人の婚約者にした。予言もあるかもしれんが、お前の性格や強さは我も知る中でも上位なのだ。二人を守って旅をすることを我は望んでいる。よろしく頼むぞ!」

「・・・」

(あの子たちにこの親あり・・・なのか?)

 シオンは気迫に押されながらもそんなことを思った。


「「さぁ!」」「行くよ!」「行きますよ!」

 シオンはリィナとレィナに両腕をそれぞれ絡めるようにホールドされ、連行されるような形で外へ連れて行かれるのであった。もちろん二人は胸が当たるのを躊躇わずに抱き付いてきている。


「おう!行ってこい!」

「シオン、いってらっしゃい。頑張ってね」

「兄さん、いってら・・・ご愁傷様」

「ちょっ!リシア!今なんて言った!?」

 そうしてシオンの叫びは虚しく響くだけで、昼食に続き公開処刑が続行されるのであった。

 そんな中、リィナとレィナは頬を染めながら、すごく嬉しそうに微笑んでいるのであった。


 そのままの状態で里の中を歩いているシオン達、もちろんだが昼過ぎなので外にいる人たちは多い。

 そんな中、そんな状態で歩けば

「おお!シオンじゃないか!そのお嬢たちが嫁さんか?」

「シオン君じゃないか。今日は両手に花でいいねぇ」

「旅に出るんだってな、嬢ちゃんたちをしっかり守れよ」

 いろんなところから声が掛かり、冷やかしと応援が行き交う中、シオン達は歩いている。


 シオンは恥ずかしさに誤魔化すように乾いた笑いをしている。リィナとレィナはお礼を言いながらニコニコしながら歩いている。


「すみません。えーと・・・」

「警備隊?の詰め所はどちらですか?」

「ああ、それはねぇ・・・」

 シオンは恥ずかしすぎてちゃんとした思考ができないでいるため、リィナとレィナが住民に聞きながら場所を特定していった。


「「ほら、シオン君」」「着いたよ」「着きましたよ」

 放心状態のまま詰め所にたどり着いてしまった。

 しかし、ここはシオンが働かせてもらっていた場所だ。シオンは何とか気を引き締め

「よし!」

 と両腕に少し力を入ってしまった。すると二人が腕に抱き付いてるので

 ふにょん

「「あぅ」」

 と柔らかな感触が伝わってきてしまった。又もや放心状態になりかけたが何とか堪えた。


 そのままの状態だと扉も開けられないため

「二人とも・・・少しだけ離れてもらってもいい?」

 シオンがお願いすると、すぐに離してくれた。

「うん、私たちもさすがにこれ以上は恥ずかしくって・・・」

「うん、最後のあれでも結構きましたし・・・」

「そうなら途中でやめればよかったのに・・・」

「「それは嫌!」」

「なんか負けた気がするもん」

「負けた気がしますね」

「だから何に!?」

(昨日今日でツッコミ何回入れたんだろう・・・)


 詰め所の前でそんな騒ぎをしていると、扉が勝手に開き

「お?シオンじゃねぇか。どうした?」

 そこには警備隊の隊長が立っていた。


「そうか、わざわざ挨拶に来てくれたのか。悪いな」

「いえ、こちらがお世話になりましたから当然ですよ」

 詰め所の中に入り、隊長に要件を伝えた。


「で、その後ろのお嬢ちゃんたちがシオンの婚約者か?」

「はい、そうです」

「私はリィナ」

「私はレィナと申します」

「おう、俺はここの隊長やってるリカードだ。よろしくな」

 お互いに挨拶をしているとリカードはリィナとレィナに目線を合わせ話しかけた。


 因みに隊長は190㎝以上ある獣人だ。150㎝の二人と並ぶと小さい子供と大人にしか見えない。


「シオンは大抵のことは一人でできる。言わば秀才に当たる。まぁ天才的なこともあるがな。その分だが周りに頼ることを本当に最低限にしかしない奴だ。婚約者としてこいつの傍に居続けるのなら、こいつが無茶をしないように見張っていてほしい。頼めるか?」

 リカードはシオンを警備隊として12歳からだがずっと見てきた。


 なんでも一人でやろうとするのは立派なことだが、その分周りに頼ることをしないのがリカードにとって不安だったのだ。


 3年ぐらいしか一緒に仕事はしていないがリカードにとってシオンは家族に近い存在だった。だからこそ不安だったのだ。


 リィナとレィナは顔を見合わせてから同時に頷き、再度リカードに顔を向け

「「お任せください」」

 そう答えるのであった。


「よっしゃ!気に入ったぜ。嬢ちゃんたち」

 リカードは立ち上がりシオンの目を見て言った。


「シオン、この嬢ちゃんたちの目は本気だ。だから、お前は嬢ちゃんたちを頼れ!逆のこともあるだろうが、それが夫婦、家族になっていくために必要なことだ。遠慮なんかするんじゃねぇぞ」

 そしてまたリィナとレィナに向けて

「シオンのことを頼む」

「「はい!」」

 二人はそう答えるのであった。


 そして、その後は精霊魔法の特訓に当たった。

 帰った後、異空間袋をアルバルト、リィナとレィナに見せたらもちろんだがすごく驚いていた。

 異空間袋の実用性を生かし旅の準備をする方向になるのであった。


 そして、精霊の里からの旅立ちの日がやってきた。



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