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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第一章 太陽と月の双子王女~王都アルマブルク編~
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第6話 報告

 シオンは家を後にして、族長の家へ向かった。

 ノックして確認を取り、中へ入ると

「待っておったぞ」

 他の皆は椅子に腰を下ろしシオンを待っていたようだ。シオンも椅子に腰を下ろした所で

「では、何が在ったか聴こうではないか」

 族長がそう言ってきた。


 例のオオカミの魔物のこととリィナとレィナが使用した精霊魔法のことを話し終えると

「精霊たちが騒めいていると思っていたらそんなことになっておったか・・・」

  族長は前以て、精霊を通して察していた様だ。思いの外、大事になっていること驚いていた。


「お前たちがその魔物を・・・討伐したのか・・・」

 アルバルトは娘たちが魔物を討伐したことに驚いているようだ。


「族長、それでこの二人のマナについてですが」

「何か気付いたか?」

「今日覚えた精霊魔法にしては強すぎるのもそうですが・・・まだ確信は持てていないのですが古文書に書かれていた双子の巫女の言い伝えと似ている気がしまして・・・」

「双子の巫女というと・・・あれかの?太陽と月の巫女の」

「はい、それです」

「確かに太陽の巫女は魔を払う浄化の剣を、月の巫女は魔を払う癒しの杖を持つと伝えられていたはずじゃ。魔物を倒した魔法、リーティンを癒した魔法。確かに二人が使った魔法とも符合はするか・・・」

「太陽・・・と」

「月・・・ですか」

 族長の言葉に二人が反応する。


「はい、しかしなぜあの時しか使えなかったのかまだわかりません。二人はその精霊魔法を使ったときは片目が輝いていましたから」

「なるほどのぅ・・・今後の方針はこの子たちにその力を自在に使えるようになることかの?」

「僕はそうしたいと考えています」

  族長は少し考え

「・・・わかった。では、旅に出る心構えもできたということじゃな」

「僕で力になれるのであれば」

「アルバルトよ。そういうことらしいが大丈夫か?」

 アルバルトに話を振ると

「我からは特に何もない。まぁ娘たちがこんな力を持っているとは思ってもみなかったがな。それとシオンよ」

「なんでしょう?」

「娘達はこの里に来るのが初めての旅と言ってもいい。いろいろ迷惑をかけるかも知れないが大丈夫か?」

「はい」

「よろしく頼む。リィナとレィナはどうだ?シオンとの旅に出る覚悟はあるのか?」

「「はい」」

 2人は即答だった。

「私たちは今日初めて会いましたが」

「シオン君と旅をしたいです」

「「婚約者としても、その先の未来も共に歩んでいきたいです」」

 2人にとってシオンは初めて同じ視線で会話してくれる同世代であり、1日ではあるが一緒にいて楽しく感じる時間を与えてくれた人だった。

 最初会った時に助けられたことで一目惚れをしたということも大きい。

 そんな二人の言葉に

「我が娘たちながらなかなか思い切ったこと言うな」

「「あ!」」

 先ほどの言葉を思い出し、頬を赤らめる二人だった。

「僕も二人と旅に出てみたいです。アルバルトさんはこんな若輩者である自分ではありますが、リィナとレィナはこの身を挺しても守りますので、どうか任せて貰えないでしょうか」

 シオンも最初に見た時は一目惚れに近い感情を持ったのは間違いない。

 それにシオンとリシアとリーティンを助けてもらった恩もある。それにシオンは自分を好きだと言ってくれる子たちを守りたいと思ったのだ。


 そんな言葉を聞いたアルバルトさんは

「我が気に入ったことだけはあるな。シオン。どうか娘たちをよろしく頼む」

 そう言いながら手を差し出してきた。

「はい!お任せください」

 シオンも手を差し出し堅く握手をした。


 するとそこへ

「ちょっといいかしら?」

 とこの場にいる誰でもない、聞いたことが無い声が響いた。この声を聞いた族長は慌てているようだ。

 玄関の扉前にマナの光が収束して女性が姿を現した。

「大精霊アレティア様!どうされましたか?」

「「「「だいせいれいさま!!」」」」

 族長以外の皆のこえが重なった。

「ふふっ。そんな身構えなくても大丈夫よ」

 大精霊アレティアはそんな風に言ってきた。

「私がここに姿を現したのはシオン、それとリィナにレィナだったかしら?3人に話があるからよ」

「話ですか?」

「まずはお礼を言わせてちょうだい。森を守ってくれてありがとう。あの瘴気を纏った魔物はただのマナの集合体である私たちには対処できない存在だったの」

「え?でもリィナの精霊魔法はともかく、中型の魔物は僕の精霊魔法でも討伐できましたけど・・・」

 シオンは疑問も口にすると

「ふふっ。貴方は普通ではないわよ?貴方の宿しているマナは純粋過ぎる。純粋過ぎるから何にでも染まる。何に染まるかはあなたの心次第。そんなマナなんてどこを探してもないわよ?」

「・・・そうなんですね」

 シオンは苦手な属性が無いのはそういうことだとはっきりした。普通は火だったら火に近いマナが、水なら水に近いマナが、ある程度方向性があり、マナは種類ごとに集まりやすい性質がある。例えば川なら水、火山なら火みたいに場所によってマナの分布が分かれるのだ。

それがこの世界を構築するマナの在り方だ。もちろん、人の中に宿るマナも同種のマナが集まりやすくなっている。

 これは魔力にも言えることで、人によって得意な魔法が分かれる。これは宿している魔力とマナの親和性によるものである。精霊魔法の場合、宿しているマナの種類で得意な精霊魔法が変わるといった具合だ。


「そして、リィナとレィナ」

「「は・・はい!」」

「貴方たちは先ほどの話で言っていた通り太陽と月のマナを宿しているわ。この二つのマナを宿している人に会うのは2回目かしらね」

「まさかと思いますが古文書に書かれている双子の巫女のことですかの?」

 族長が尋ねると

「ええ、そうよ。まぁ、私が把握している限りだとだけどね。このマナは唯一、瘴気に対抗できるマナだと考えていいわ」

「だから私たちが」

「希望になると・・・」

「そう。そしてシオンのマナはなんにでも染まる。今日のあの中型の魔物を倒すことが出来たのは、少しでしょうけどリィナとレィナのマナに感化されたのではないかしら?何かあったんじゃない?」

「「「あ!」」」

 思い当たることがあったことに気が付いた3人

「シオン君が私たちに」

「そうです。精霊魔法を教えてくれた時に」

「確かに二人のマナを僕のマナで直接刺激したね・・・」

 そのことを話すと

「恐らくそれでしょうね。マナ同士で刺激したのなら、シオンのマナで直接太陽と月のマナに触れたことになるから、そこでシオンのマナの一部が染まったのでしょうね」

 大精霊がそう言うとシオンは気付いた。


「あ!だから僕も瘴気に対抗できる希望になるのか!」

 そうだ。ただの純粋すぎるマナでだけでは瘴気に対抗できないのだ。太陽と月のマナに染まらなければいけないのだ。

「ただシオンは旅の最中は、瘴気にだけは気を付けなさい。さっきも言ったけどあなたのマナは純粋過ぎる。純粋過ぎる故に瘴気にも感化されやすいはず。だから、瘴気が多い場所に行くなら二人と常に一緒にいなさい。二人の近くなら瘴気が浄化されるから安全なはずよ」

「はい、わかりました」

 シオンはその説明に納得し答えた。

「でも単独になってもいいようにする方法もあるわよ?知りたい?」

 大精霊はニコニコしながら質問してくる。

「できれば知りたいですが・・・その顔を見ると、いやな予感しかしないのですが・・・」

「私たちも・・・」

「そんな予感が・・・」

 リィナとレィナも何となく察したようだ。

「ほら、こっち来なさい。あまり大声で教えたくないの」

 嫌な予感をしながら3人は大精霊の所へ集まった。


 そして小声で爆弾投下した。

「3人で一つになりなさい。心も体もね。密着すればするほどマナも感化されるでしょうし」

「「「っ!!!」」」

 なんとなく予感はしていたが、こうもズバっと言われると恥ずかしくなった。現に3人は首から上は真っ赤だ。


「それはその・・・僕達にはまだ早いというか・・・」

「そうだよ!まだ今日会ったばかりだし・・・」

「でも婚約してるし、恋人同士みたいになってはいますけど、成人もしていないですし・・・」

 3人は小声でアレティアの前で話している。


 そんな3人を見たアレティアは

「貴方たちなら大丈夫そうね。王都たったかしら?そこに向かう前に貴方たちに渡したいものがあるの。少し時間をもらっても大丈夫?」

 その質問に答えたのはアルバルトであった。


「大精霊様に言われては時間を作りましょう。ただ当初の予定では三日ぐらいでここを発ちたいと思っているのですが」

「それだけあれば用意できるわ。なら出発のときにまた姿現すから。そうね・・・出発するのであるなら里の入口でいいかしら?私も貴方たちの旅の門出をお祝いしたいし」

「わかりました。では3日後の早朝に里の入口にお願いします」

 アルバルトは馬車が壊れたため早朝に出ることに決めていたそうだ。


(大精霊であるアレティア様の渡したいものか・・・少し楽しみだな)

 シオンはそう思うのだった。


 族長の家を出て分かれ道にやってきた。

「それでは、おやすみなさい」

 シオンがそう言うと

「「はい、おやすみなさい」」

 とリィナとレィナがいい

「お前たちは3人で一緒に寝ないでいいのか?」

「「父上!!」」

 二人は頬を染めてアルバルトに抗議する。


「ははは・・・一緒には寝てみたいですけど、まだ早いですよ。今日は母さんのこともありますので遠慮しておきます」

「む?そうだったな。すまん、配慮が足りなかった」

「そういうわけですので、おやすみなさい」

「おう、またな」

 その場で分かれ帰路に着いた。



 シオンは家に帰ると、母さんの様子を見にそっと母さんの寝室に入った。

 リーティンは落ち着いた様子で眠っていた。

(これなら明日には元気になりそうだな)

 最後にマナを活性化させ回復力が高まる精霊魔法を掛けて自室へ戻っていくのであった。


(シオン・・・ありがとう)

 精霊魔法が掛かった際に少し目を覚ましたリーティンは心の中でシオンにお礼を言うのであった。


 こうしてシオンとリィナ、レィナの騒動の出会いの1日が終わっていった。



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