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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第一章 太陽と月の双子王女~王都アルマブルク編~
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第5話 覚醒

シオンが吹き飛ばされ木に当たる瞬間をリィナとレィナは見ていた。


「「シオン君!」」


二人がシオンに近づこうとしたその時、オオカミは噛みつこうと飛び掛かってくる瞬間だった。


二人は目の前がスローモーションのように見ていた。


今日会ったばかりの人、王女なのに気さくに話しかけてくれた人、まさかの婚約者となってしまった人、精霊魔法を教えてくれた人、そして一目惚れで大好きになった人・・・、初恋の人。


「「ダメーーー!!」」


気づいたら二人は同時に叫んだ。

すると突如オオカミが何か吹き飛ばされてしまった。


シオンはその間に何とか立ち上がり痛みを堪えていた。

(なんだ?・・・今のは・・・二人が何か・・・やったのか?)

シオンはオオカミを見据え、自分を治癒しながら考えていた。


オオカミの方も何が起こったか分からないのか警戒しながら睨んでいる。

「「シオン君!だいじょうぶ!?」」

リィナとレィナが駆け寄ってきた。


シオンは二人の瞳をみて驚いた。

「二人とも?・・・どうしたの?目・・・光ってるけど」

そう、リィナは右目、レィナは左目が輝いていたのだ。その輝きは少し眩しすぎるほどだ。

「「え?・・・ほんとだ!」」

二人はお互いを見て今気が付いたようだ。この間オオカミはというとリィナとレィナが視界に見えた瞬間、何かに怯えるように数歩下がって睨み続けている。


「二人とも、下がってて」

シオンは戦闘の経験が無い二人を後ろに下がらせようとした。しかし

「「私たちも戦う!」」

二人でそう言ってきた。

「でも二人は戦闘の経験はないだろう!」

それはそうだ王女様でまだ魔法学校へ行っている最中なのだ。せいぜい模擬戦レベルだろう。

「でも今なら!」

「戦える気がします!それに」

「「シオン君を一人にしたくない!!」」

二人がそう言ってきた。


その言葉に嬉しく思う自分がいた。それになぜだか、それが当たり前のようにも感じた。

「・・・わかった。でも二人は後衛だよ」

「「はい!」」

そうして再び戦闘が開始される。


オオカミは逃げずにシオンに突っ込もうとしてきた。シオンはうまく回避してすれ違いざまに剣を一閃させる。後ろ脚を一瞬とはいえ失ったことでわずかだが動きを止めた。すると

ピキピキ

どこからかそんな音が聞こえてきた。


シオンがオオカミの足元を見ると小川が凍り、そこに片足を着いていたオオカミの足も凍り始めていたのだ。しかし胴までは届かない。

「シオン君!今!」

レィナが叫ぶ。どうやらこれはレィナが発動した精霊魔法のようだ。


「森の上へ打ち上げて!」

今度はリィナの声だ。


「わかった!」

シオンは足が凍り動けないオオカミの下へ潜り、風の爆発力を乗せた掌底を下から突き上げた。すると後ろから

「燃えろー!」

森の木より高く打ち上げられたオオカミに向かって拳ほどの小さな太陽みたいなものが、ものすごい勢いで飛んでいく。上空で小さな太陽がオオカミに当たった瞬間、

ドゴーーーーーン!!!

と5mは有りそうな灼熱の球体となりオオカミを包み込んだ。


そして、炎の球体が消えた時はオオカミの姿は無く、周りにも魔物のような反応はなくなっていた。


シオンが後ろを振り向くとリィナが最後の火の魔法を放ったのだろうか?肩で大きく息をしている。右目の輝きもリィナは無くなっているようだった。


戦闘しているうちに少し離れたのだろう。リシアが

「兄さん!母さんが!」

シオンを呼びに来た。

リィナとレィナも連れてリシアのもとへ向かう。


リーティンは外の傷は治ったように見えるが、内臓はまだなのだろう。

息が徐々に小さくなっていく。

「ごめん、兄さん・・・ごめん」

今も治癒魔法を掛けているがこれ以上の回復は見られない。


シオンは考えるが案が出てこなかった。

シオンは自分がやっても恐らくは助けることはできないと感じたからだ。精霊魔法の腕で戦闘に限りはシオンだが、治癒に関してはリシアの方が上なのである。


そこへレィナが前に出てきた。

「リシアさん、ちょっと代わってもらっていいですか?」

レィナがそう言うとリシアは場所を開けた。リシアはもう半分は諦めているように見える。


戦闘をしている間に陽は沈みつつあり、木々の隙間から星や月が見え始めていた。


「行きます!」


左目が輝き続けているレィナがそう言うと不思議な光の粒がどこから音もなくレィナに集まってきた。


するとレィナの腕を通り、手を向けたリーティンに集まり始めた。そのまま暫くの間、光の粒がリーティンを纏っていると

「り・・・しあ・・・しお・・・ん?」

突如リーティンが声を発した。

「「母さん!」」

シオンとリシアはリーティンが助かったことがわかり、涙が溢れてきた。


レィナはというと瞳の輝きが無くなり、疲れたのだろうか肩で息をしている。そんなレィナに

「ありがとう!」

とシオンは抱き付いた。突然のことに驚いたレィナだったがシオンの心境がわかったのか

「っ!・・・どういたしまして・・・」

とレィナもまた抱きしめるのであった。

「あのー・・・私も頑張ったよ?」

シオンのすぐ隣でうらやましそうに見ているリィナが呟いた。シオンに声が届いたのか

「リィナも助けてくれてありがとう」

少し落ち着いた声でシオンはリィナにも抱擁した。

「えへへ」

リィナも嬉しそうに笑うのであった。


リーティンは一命を取り留めたものの、まだ体が怠いらしくシオンが背負って里へ帰ることとなった。

足取りはゆっくりでみんな疲弊しているのがわかる。


「にしてもさっきの二人はなんだったんだろうな?」

シオンは先ほどの二人の瞳の輝きと精霊魔法かは分からないが、足止めに使ったレィナの魔法とリーティンを救った治癒魔法も、止めを刺したリィナの放った小さな太陽のような魔法。

今日使えるようになった精霊魔法にしては効果が大き過ぎるのだ。

「私たちも分からないんだよね・・・」

「そうですね~・・・あの時はシオン君が殺されると思って助けるのに夢中だったていうか・・・」

「そうそう!夢中になってたら、暖かい空気に包まれている感じになった」

「え?そうなの?どっちかというと私は冷たい空気に包まれていた感じがしたけど?」

「なんか二人で言ってることが違うね」

シオンはリィナとレィナの特殊なマナについて何となくだが見当があった。


「母さん大丈夫?」

リシアはシオンに背負われたリーティンを心配していた。

「大丈夫よ。ただ少し体が怠いだけだから」

リーティンは心配掛けないように優しく言った。

「さっき見た限りだと内臓含め傷は完治しているはずだよ。マナの流れも正常だったし。ただあの傷を負って耐えている時に体力が奪われているだけだと思うよ。ご飯しっかり食べて寝れば良くなるはずだよ」

とシオンが言うと

「よかった・・・本当によかった・・・」

リシアは安心したのかまた少し泣き始めてしまった。


里の近くまでやってくると

「お前たち!無事か?」

そう言いながらアルバルトが近寄ってきた。その後ろから何人か里の人と族長も立っていた。

「おお!無事じゃったか!陽が落ちても帰らぬから心配したぞい」

陽が落ちても帰らないから里の人達と捜索部隊を組んで出ようとしていたらしい。恐らく里の結界で戦闘時の爆発は聞こえていなかったのだろう。


「ってリーティン!どうしたんだ!」

シオンに背負われているリーティンに気付いたらしい

「魔物に襲われてしまいまして。一応怪我は治癒魔法で直したのですが体力がまだ回復していないのでこのような状態になりました」

「おお!そうか・・・それならよかった・・・」

(珍しく族長が取り乱したところをみたなぁ・・・)

シオンの説明に安堵している族長に話を続けた。

「とりあえず母さんを家に運びますね。リシアに看病をお願いしますので」

「そうじゃな」

「それとこんな時間からで申し訳ないのですが報告したいことがありまして」

「む・・・わかったリーティンを運んだらウチへ来てくれ」

「ありがとうございます」

「リィナとレィナも族長と一緒に行ってもらってもいい?アルバルトさんもできればご一緒にお願いします」

「「わかりました」」

「わかった」


そうしてシオンはリーティンを背負ったまま、リシアと共に自宅へ向かうのだった。



「母さん、今何か食べやすいもの作ってくるね」

リシアがベッドに寝ているリーティンに言って台所に向かった。

リシアが出て行った後、シオンとリーティンは二人きりになった。

「ねぇ、母さん、実は・・・」

「それ以上言わなくてもわかっているわ。あの王女様たちと婚約者になったのでしょう?」

「そう・・・それで・・・」

「シオンはこの里を出て行くことになった・・・でしょ?」

「うん・・・」

シオンはここまで育ててくれたリーティンに申し訳ない気持ちになっていた。

シオンは今回の出来事もあるが、王都に向かい、リィナとレィナと旅に出てみたかったのだ。


「シオン、私はこうなるかもしれないとあなたを拾った日の晩に族長から聞いているから大丈夫。まぁ少し寂しくはなるけどここであなたたちが帰るのを待っているわ」

「・・・ありがとう・・・母さん・・・」

「ほら、族長たちがまっているのでしょう?そろそろ行きなさい」

「はい!」

シオンはそう言って部屋を後にした。

「兄さん」

玄関から出て行こうとした時、台所からリシアがシオンを呼び止め、出てきた。

「母さんのことは任せて。兄さんは旅にでるつもりなんでしょう?」

「聞こえてた?」

「うん、少しだけどね」

「そうか・・・」

「私・・・もっと強くなる。母さんを守る・・・ううん。兄さんがこの里にいつ帰って来れるようにみんなを、里を守りたい。だから兄さんも・・・頑張って!」

リシアはそう言いシオンに抱き付いてきた。

そして、シオンは族長の家に向かうのだった。


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