ドキリともピクリともしない!
「レイちゃ~ん、手が塞がってるから開けてー!!
ただいま~」
アーリヤの声にふと窓を見れば朝日が昇りはじめた所だった。
知らずに徹夜をしていたらしい。
レイリーは座ったまま、軽く人差し指を振る。
音もなく開いた扉の向こうには、黒い塊…もといい潰れたナギを背負ったアーリヤが居た。
「ありがとう。
でもドア位は開けようよ手動で。」
「めんどい。」
「もー!!!
変なところで不精なんだから。
あ、そうだお土産あるの。待っててね!」
「ハイハイ。」
さりげなく寝室のドアも魔術で開けてやり、レイリーは再び魔道書に目を落とす。
夢中で読み漁っていると、ふわりと良い香りがする。
顔を上げるとアーリヤがマグカップに珈琲を注いでいた。
レイリーに手渡しながらアーリヤが言った。
「飲み屋のミザリーさんが挽きたての豆で作った珈琲。
レイちゃん好きそうだからお裾分けしてもらったの。」
「ミザリー………。
…ああ、赤毛のアンニュイ美女の店な。
前に行ったとこか。夜しかやってないカフェバーな。
いいかアーリヤ、ああいう洒落た店はバーって言うんだよ。
キャイキャイはしゃいで馬鹿騒ぎする店ではないからな。」
「まじか!
予約の団体さんけっこうはしゃいでたし、ナギちゃんハッスル爆トークしてたよ!」
「団体さん?」
「ほら、ナギちゃんはまってる男だらけな劇団の人達がね、入ってたんだよ。」
「ああ、だからナギがはしゃいだのか。
はー、行かなくて良かった。」
一口珈琲を飲んだレイリーは美味い、と呟くと顔をほころばせた。
「そんなこと言わないの。
ナギちゃんはしゃいでて可愛かったよ!」
口を尖らせて言うアーリヤにレイリーは優しく微笑んだ。
「素面でナギの与太話を聞けと。
拷問か?」
「あー、ほら超美人の素敵な表情を見られると思えば…………
うん、素面では厳しいよね、確かに。」
「ドキリともピクリともしないわ、マジで。」
レイリーは深くため息をつき、アーリヤも苦笑いをするのであった。
別な日の出来事。
アーリヤ「よいしょっ、と。」
ネイバン(※アイテム屋主人)「アーリヤ、持ちすぎじゃねーか?
腰に来るぞ、往復しろ。」
アーリヤ「行けそうな気がする!多分!!!!」
ネイバン「そのフワッとした思い込み止めろっ
レイリーよ、見てないで止めろよ。」
レイリー「往復は面倒だ。」
ネイバン「若いんだから出し惜しみするな!」
レイリー無視、指を振って店のドアを開ける。
アーリヤ「もー!!!レイちゃん不精しないでよ。
手で開けなよ!」
ネイバン「なっ、ちょっ、ちょいまてぇ?!
無詠唱とかなんなの、というかドアごときに魔術とか、才能の無駄遣い甚だしい!」
レイリー「楽に生活する事に全力投球している。(キリッ)」