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隠したってすぐばれる。

「只今戻りました。

はぁー…もう疲れきってもうた…」



セイランがそう言いながら魔王の執務室に着いたとき、魔王は仕事をしていた。

床で。

床に座る魔王の隣では椅子に座ったマイズルが優雅に紅茶を飲んで監視している。



「お疲れ様です。セイラン。

アーリヤは元気でした?連れて来るという話を聞いたのですが…?」



「マイズルさん、見てくれとってありがとうございます。

魔王様の承認と判子が通った後せなあかんもんもぎょうさんありますんで…。

せやから待たすんのもかわいそうやし。後、ティセラに捕まってまうと厄介やし。

ティセラがはしゃげば魔王様も悪のりして益々仕事が山積みに…」



げんなりとして言うセイランの言葉にマイズルは首をかしげた。



「ふむ…?

魔王様からは机にあるものを片付ければ終了と聞きましたけど…?」



「は?」



不穏な空気が部屋を包む。

魔王の動きが止まる。サインする為に持っていたペン先がブルブルブルと震えていた。


ちなみにティセラとは魔王の婚約者でありセイランとは、はとこ同士だったりするが仲は良くもないが悪くもない。

ぴっちぴちのもうすぐ15歳な14歳である。

砂糖菓子のような甘い可愛い外見に似合わず、軽いパンチひとつで壁を粉砕する剛力の持ち主でその他にも色々と危ない力をもった最終兵器的な少女である。

魔王とはかなりの年の差があるが、魔王の軽すぎるノリはティセラのハイテンションぶりと合わさると最凶のコンビとなる。

何か騒動があれば一番割りを食うのはセイランとマイズルであり、その積み重ねでセイランは魔王に対して打撃的および精神的に一撃必殺を入れることを躊躇わなくなったのだった。



「魔王様…?

書類の山は後、六つあったやろ?

どこ隠した?ああ?」



真っ黒な笑顔でセイランはメリケンサックをはめる。

マイズルも紅茶をおきモーニングスター無言で取り出す。



「き、ききき、気のせいじゃないかセイランっ、あ、そうだきっと他の内務官が片付けてくれたんだ、そうなんだ、そうだったらいいのにな!」



魔王は視線を明後日の方に向け冷や汗をダラダラたらし、支離滅裂なことを叫ぶ。



「魔王様、我々内務を馬鹿にしてるのですか?

打てる手をうちまくり、できるところはもう無いか総ざらいして、もう魔王様に承認や許可を出してもらうだけにした状態で持ってきてるんですよ?

書面を見て判やサインを入れるだけの簡単なお仕事です。

ちなみに通過することがほぼ決定している、後の段取りもつけているものばかり…

以前より遥かに簡単にしているというのに…

何故できないんですか?」



マイズルが悲し気に言う。

魔王の背中を踏みつけてモーニングスターを振り上げていなければ悲しい場面で通っていただろう。



「キリキリ吐かないと足の指から一本ずつ無くなるで?」



セイランも悲し気に言って、ギザギザがついた非常に痛そうなナイフを取り出す。

拷問まで、あと一歩手前である。



そんな時、勢いよく執務室の扉が開く。



【ババーン!!!】



と、盛大な効果音が文字として宙を舞う。



【内務長官補佐のルナ、只今戻りました!

見てください、お探しのものはこちらですね!】



赤毛に黒い瞳の表情筋が死んでる無表情少女ことルナだった。

その頭上にはドヤァとの文字が踊る。



【皆さん、やっちまいな!です。】



「はいはーい、セイラン殿こちら未決済の書類です。」


「はーい、魔王様我々内務の精鋭たちでまるっと全て発見しましたからね~」


「ははは~、マイズル様怒らせてただで済むとは思わないで下さいね~」


「はい、こちらが我々の血と涙と苦労の結晶の書類山になります。」


「はぁー、もう勘弁してくださいよ。」


「はっはっはっ、実に間抜けだね!」



その後ろからぞろぞろと内務官達が書類の山を抱えて入ってくる。

皆、一見笑顔だが青筋がたっている。

激おこである。



「ば、バカな!なんで見つけられたんだ!」



マイズルに踏みつけられたまま、悔しそうに言う魔王。

顔が美形なだけにとても残念である。



【ティセラのクローゼットに隠したって無駄です!

ティセラ付きのメイドの彼氏がそこにいるイワンさんで、魔王様のせいでせっかくのデートキャンセルになりまして、それを聞いたティセラが怒って隠し持っていた書類を私に託したんです。

乙女の純情を弄んだ魔王様、ギルティ。

ティセラはしばらく顔を見たくないそうです。

ざまあみろですね。】



仕事を放棄してたあげく年下婚約者に隠させるとか最低である。

魔王がガックリ項垂れても誰も言葉をかけない。



「皆、ようやってくれた。感謝する。

明日の朝までになんとしてもこれを片付けようやないか。

きばるで!」



「「「「おうっ!!!」」」」



こうして傷心の魔王は無視して、朝までに仕事を終わらせて休暇ゲットもしくは次の仕事に移る為に一致団結したのだった。









数日前

イワン「これが終わったら、久々に彼女とデートなんだ~♪」


「はいはい、良かったね。

浮かれるのはいいけどミスったら刺すよ?」


イ「ヒッ、なんでホントに千枚通し構えてるの?!怖いよ、刺す気満々なの?!」


「半分冗談だよ。」


イ「半分本気じゃんかあああぁぁぁぁ!」


マイズル「おやおや、仕事終わったんですか?」


イ「あ、終わりました!

確認お願いします!後、他にはやることありますか?」


「騒ぎはでかいけど仕事は早いんだよなぁ。

あ、マイズル長官こちらの確認もお願いします。」


マ「うちの部下は優秀で恵まれてますね~」




魔王失踪後



「イワン!おい、イワンしっかりしろ!」


「あー、ダメだこりゃ…半月前から浮かれてたもんなぁ…」


「誰か彼女に事情言ってこいよ。」


「俺嫌だよ?とばっちりで殴られたらあばら一・二本粉砕じゃすまないだろ?」


「メイドはメイドでも戦闘メイドだからなぁ…」


「細身だけどすごいよな筋肉…この前城壁走ってるの見たけど何あの脚…?」


【お困りですね皆さん!私がなんとかしましょう!】


「ルナ補佐官!ありがてぇ!!!」


【文字で伝える難点は誰にでも見えてしまう事です…うっかりティセラに見られても仕方ないことです。】


「さすが!

特定の人物だけに文字を見せる事やテレパシー使えるのにあえてそうする補佐官、最高ですね!」


「いってらっしゃいませー!!」




こうしてティセラに知られ、書類まで奪還できたのでした。(笑)

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