ツーカー。
一方、アーリヤはというとー…
「さっそくだが行こうぜ、アーリヤ!」
魔王が笑顔でアーリヤに手をさしのべる。
その手をアーリヤが取る前に笑顔のセイランがガッシリと握って捻りあげた。
「あだだだだだだっだだだだだっ!!!!」
魔王の悲鳴をBGMにセイランはアーリヤとネイバンに言った。
「ほんとはなぁ、すぐに連れていきたいんやけど魔王に仕事させなあかんのや。
ゴメンなぁ。明日の朝迎え行くから待っとってくれへん?
ネイバンさん、アーリヤよろしくお願いします。」
「セイくん大変だね…」
「おー、いいぜ。あんたも大変だな。」
「はー、朝までには必ず終わらせな。気合い入れんと。」
ため息をつきながら素早い動きでセイランは魔王を簀巻きにしていく。
物凄く手慣れている。
どんだけやればそんなに匠の技っぽくなるの…?とネイバンは思ったがツッコむのはやめた。多分聞いたら悲しくなりそうだ。
「徹夜になるなら、お、そうだ良いアイテムがある待っててくれ!」
そう言って奥に引っ込んでいくネイバン。
セイランはというとナチュラルに簀巻きにした魔王の上に座り待機している。
「セイくん徹夜なの?」
「多分なぁ。
魔王が仕事溜めすぎて遊び回ってたんや。仕方ない。」
「…じゃあ、朝ごはん私作るよ!
一緒に食べない?」
「ホンマか!
じゃあアレ食いたいわ、なんやったかな…卵のビシャーってしたやつ。」
パァっとセイランの表情が明るくなり、アーリヤも嬉しくて笑顔になった。
「アレだね!
バシャーってなってビシャーってなってふわふわのだよね!」
「それや!
アレ魔人の郷土料理やないんやな。俺らのおった辺境独自らしいで。せやから食べたいなぁ思うても食べられへんのや。」
「まじか!
あんなに美味しいのにね~。卵ビシャー…」
「ホンマになぁ…
卵のビシャーってなったやつあんなに旨いのになぁ…」
残念そうに言い合う二人。
眠気覚ましドリンクを持ってきたネイバンは言った。
「なぁ、欠片ほどもうまそうに感じない擬音つーか名称なんだけど…」
セイラン「ホンマに絶品ですよ、ネイバンさん。」
アーリヤ「ほっぺたおちるよ!」
ネイバン「信じがたい。
というかそもそも、何で正式名称知らないんだ。」
ア「え?だって卵のやつって言えば作ってくれたから…」
セ「この卵の旨い!って言うたら通じてましたし…」
あー正式名称…!と頭を抱える二人。
セイランが少し腰を浮かせた瞬間、蛇のようにニョロニョロ逃げる魔王!!
ネ「ウワァッ、キモい!!!」
セ「させるかアァァァァァァ!!!」
ドガガガガボワワワワワワン
謎の音と広がる煙幕。
そして消え去る魔王。
ネ「き、消えただと!おい逃げたぞ!?」
セ「安心してや。魔王城に強制転送したんや。」
ア「なら安心だね!」
(※魔王がどうなったかは32話に繋がる。)




