整理してみよう。
小一時間ほど風呂に入った後、レイリー達女性陣が食堂に入ると男性陣はまだ誰も来てなかった。
「随分ゆっくりですわね。まぁ清潔になるのは良いことですわ。
正直ちょっと臭ってましたから。」
「あーやっぱり?
ごめんね、私達に体拭くお湯とか優先してくれてたからね、エグゼ達の方が酷いことになってたとおもうよ。」
ナギが手近なテーブルにつくと他のメンバーも思い思いのところに座ったり、配膳の準備に取りかかった。
レイリーもナギの向かいに腰を下ろす。
その隣に銀髪の狼の獣人も座った。彼女はエグゼの妻でパティと名乗った。
細身だがレイリーと同じくバスターソードで戦える女戦士である。頬や体にも無数の傷があるが美しい人だった。
「さてと、これでも副長だから大抵の話はできるよ。
何から話した方がいい?」
「話が早くて助かる。
そもそもどこの国から呼ばれたんだ?」
猫耳少女がレモン水を三人分置いてくれたので、三人は喉を潤しながら話し合いをはじめた。
「私らはギルドからの依頼だよ。
森の近くでよくわからないものに襲われかけた、っていう報告が近くの村からあがって調査隊という名目でね。
襲われたのが子ども達だから詳しい事は分かってなかった。
ちょいと前に、簡単な調査だった話が高レベルダンジョンに直結していて新人パーティーが全滅して大規模調査・駆除隊が送り込まれるっていう事態になった出来事があってねぇ…
そんなことになっては大変だし、この森国境地帯だからね、大抵の事に対応できるベテラン勢と言うことで白羽の矢が立ったのさ。」
「その時点で魔道研究塔が原因との話は出ませんでしたの?」
「全くね、なかったよ。
そもそも大変になっている…っていう意識が無かったんじゃないかね?
聞き取りして、実地調査でドラゴンモドキの異変を目の当たりしてね。これはおかしいってなったところで夜と闇の神殿から派遣されてきた神官団とかち合ったんだ。」
そこで結界の消失を知り、各国に連絡がなされ、魔道研究塔が原因と判明した…ということだったようだ。
隠匿体質は相変わらずだとレイリーは舌打ちをした。
「神殿の一団から元大神官長に話がすぐいってね、各国が来るまで事態の悪化や被害が出ないよう見張り役をしてほしいとの依頼を受けたんだよ。」
ナギの養父リヴァイの事であろう。
フフッとパティはそこで笑みをこぼした。
レイリーとナギが不思議そうな顔をすると訳を語る。
「自分の娘が派遣されるしかないだろうから、顔見知りの人達がいると心強いはず…どうか引き受けてほしいってお願いされたんだよ。」
「…………」
「愛されてるなぁナギ。
そうか、あんた達のパーティーがいるから詳しい説明省いて送ったんだな。納得した。」
頬を赤くしうつむくナギにパティもレイリーも優しい笑みを送った。
ナギが少しでも安心できるようお膳立てしてやったのだろう。普段関われないリヴァイなりの親心といった所か。
しかし…そもそも行かせないという選択をとらない辺り、やはりただの優しいだけの人物ではないのだろう。
神殿側は簡易な応急措置の結界を張るとエグゼ達のパーティーに繋ぎの守護を頼み、それと入れ代わりのようにすぐに魔国よりミカ達の隊が派遣された…というわけだ。
各国が揃うまで協力し合い、ある程度解決までの道筋を立てた頃に他の国や魔道研究塔の一団がやって来て魔国主導で解決に向かおうとしていた所での後から魔術発動事件。
全て台無しの惨事となった。
なんやかんやあって、とうとう魔国は夜が明けるのを待ち朝のうちに撤退をし、エグゼ達がどうしようか検討しようとした矢先にベースキャンプ移動と待機の圧力が各国からかかる。
話し合いを求めるも、連絡手段を壊されるという被害を受けた上に、凶暴化巨大化したドラゴンモドキの集団による拠点の襲撃という悲劇に襲われて現在に至るというわけだ。
「なんというか…よくぞ生き残ったな。」
「本当に…でも居てくださって良かったですわ…」
もはや笑うしかないと朗らかに話すパティになんと言っていいか分からなくなるレイリーとナギであった。




