おやおや、不穏な空気が…
女湯はある意味天国だった。
絶壁から爆乳、獣耳からエルフ耳&しっぽ、ロリババアから妖艶美(熟)女、儚い系から姉御系ギャル系等々大抵の系統は網羅された女子達が揃っている。
このメンツで店を出したらお触り厳禁でもけっこう稼げるな…とレイリーは考えた。
「レイリー?
なにたくらんでますの?怪しい気配を感じますわ…」
側で湯に浸かっていたナギが一人分程の距離をあけジト目で見てくる。
「やー、この面子ならアーリヤ呼んでも大丈夫かなぁって思ってたんだ。」
レイリーは堂々嘘をついた。
「ふーん…?
そういうことにしといてあげますわ…
いや、駄目ですわ。アーリヤを呼んでは!!」
「なんだナギ、お前の方が喜びそうなのに。」
「糞野郎も来てますの!無意味に絡まれてアーリヤが傷ついて私の付き添いしてくれなくなったら泣きますわ!」
「糞野郎…って…あー!
あの兄弟子か!やたらめったら顔だけは良い男な。
てかナギ、お前アーリヤが教会関係の依頼にまたついてきてくれると思ってるのか?無理だぞ、多分。」
「くっ、あいつを消せば…」
「おーい、神官としてどうなの?それ。」
どうしろっていうんですのー!!!と叫びながらナギがバシャバシャとお湯をかけてくる。
そこまでナギが興奮するとは珍しい。
よっぽどアイオーンが嫌いなのだろう。レイリーはすべての攻撃(お湯)をシールドで防ぎながら納得した。
「はは、仲良しだねぇ。
しかし、わたくしもアーリヤちゃん呼ぶのは反対だわぁ。」
ちゃっかりレイリーを盾にしながらナギのお湯を防いだ妖艶マダムが口をはさむ。
「アーリヤちゃんけっこうお人好しだしねぇ、ぽやんとしてるからぁ…
困ってる助けてほしいって人の良さそうなふりして声をかけられたらホイホイ暗がりに連れ込まれちゃうかもしれないわよぉ。」
「ふむ、ありうる。」
「アーリヤは危機意識が薄いですものね…」
ナギはもちろん、一人でも余裕で過剰防衛&十倍返しが基本のレイリーでさえアーリヤは心配するのだが、自分に対しては危機意識が非常に薄い。
美女二人に囲まれ慣れている弊害なのか女性として自分が意識される事はないと信じている節があった。
「そうなんだよね!
他の女の子のことは心配したり気を使ったりするのに。
いやほんとアーリヤちゃん危ないから寂しいけど呼ばないのが身のためだよ。」
猫耳少女も話に入ってくる。
「魔国の女隊長さんがね、何かあったときのために…って気絶玉一人三つ持たせてくれたんだけどうちら女全員最低一個は使うはめになったくらいだから。」
「気絶玉…?」
「うん、首から下げるネックレスタイプの改良型のやつなんだけどさ。
うちらのパーティーメンバー以外から危害を加えられそうになったら発動できる優れもの。はじめてみたよ!」
気絶玉とは主に大型魔獣やドラゴン等の大きい生物を狩ったり保護される為に使われる拳大の玉の事である。
普通、対人使用はされない。
魔国の女隊長は同郷のミカ…彼女はレイリーも叶わないと思う分野があるほどの実力ある魔術師である。
一体どんな加工をしたのだろうか。
「心で唱えれば発動っていう恐ろしい仕様でねぇ~
パーティーメンバー以外は誰でもバタバタ倒れていってなかなか壮観だったねぇ。」
とてつもなく危険仕様である。
悪用されればとんでもないことになる。そうはさせない工夫はもちろんあるのだろうが。
「さすがミカだ。
えげつない設定するな。あっぱれだ。」
「レイリーと同郷なだけありますわね。」
レイリーは感心し、ナギは納得だった。
しかしである、腕のたつ冒険者が危機的状況になる…とはどういうことか。
なかなか現場はきな臭いようだ。




