楽しいベースキャンプ!
「お?ナギ、何でいるんだ?」
「あら、レイリー。こちらの台詞ですわ。」
やや面食らったようなレイリーにナギが淡々と応じた。
先ほどまでナギは冒険者達に話を聞いて打ちひしがれていたのだった。
そして、これからどうすべきか…と頭を抱えてきたところに突然の転移術が展開されレイリーが登場したのだ。
ちなみに転移の術は高レベルだがベテラン冒険者にとっては見慣れた者も多く特に驚きもしない。
「私は養父様にいきなり糞野郎と共に転送されたんです。ひどい話ですわ。」
「糞野郎って…ナギ。
あー、まぁどーでもいいや誰の事だ?
あだ名で言われても分からん。」
「あだ名というかもはや悪口だろう。」
二人の会話に凄腕冒険者が口を挟む。
すると美人二人が振り返りにっこり笑った。美しいが含みを感じる笑み。
大半のものが呆けた顔をするが、凄腕は顔をしかめたままだ。
「美人は好きだがなぁ、あんたらの笑顔で心を蕩けさせるほどひよっちゃいないんだ。
なにかしら要求する気なんだろう。
まぁ、俺達に利があるなら協力しよう。
それが無いなら他を当たれ。そもそもな俺達も提示されていた報酬では釣り合わないレベルの働きを強要されている。
正直、もう撤退したい。」
「それでこそ、閃光のエグゼ。
ん?普通撤退できるだろう?契約書しくじったのか?」
「いいや。想定外が起きたので有耶無耶にされた。
しかも断れば国からの圧力をかけるぞと脅された。他と連絡をとりたくても魔国が抜けてから国同士が互いに牽制しあってよぉ、妨害工作のとばっちりで伝達手段を潰されるというオチだぜ?
笑えねぇ。」
「想定以上の酷さだな。」
「どいつもこいつもメンツとプライドが大事なんだろうさ。
そんなもんで飯が食えるんだから落ちたもんだぜ。」
凄腕…もといいエグゼは吐き捨てるように言った。
危機的状況にもかかわらず現場は纏まっていない所か空中分解している現状は地獄だろう。
失敗しました…となれば帰って対策練る事ができる国や機関の代表と違い、冒険者はその日暮らし。
いくら高名といえど依頼失敗は信頼低下につながり、路頭に迷う事にもなりかねない。パーティーを組んでいればその分出費もかさむし、分配率も問題になってくる。
「そんなお前らに朗報だ。
私のバックに魔王がついている。なのでこちらの手伝いや指示を聞けば報酬額はたんまり出る。」
「…は?」
レイリーの言葉にさすがのベテラン勢も固まった。
どんなに腕に自信があれど『魔王』は畏怖の対象でもあるのだ。
「どうして、なぜ、というのは黙秘するから聞くなよ?
それはそうと取り急ぎ拠点作りをしたい。
今晩の食糧や薬の提供をするから組み立てよろしく頼む。」
指を軽く振って材木やらテントを召喚すると、レイリーはニヤリと笑った。




