怖っ!
魔王と同じく突如として現れたそこそこのイケメンは、松葉色の髪をオールバックにした青と黄色のオッドアイという珍しい色彩をしている。
柔らかな笑みを浮かべ、ネイバンに向き直った男はラッピングされた箱を差し出した。
「お初にお目にかかりますネイバンさん。
私は魔王の部下の一人のセイランと申します。
うちのアーリヤがお世話になっとります。これはほんのお礼です。これからもよろしくお願いします。
ご家族四人で食べてください。」
「あ、ど、どうもご丁寧に…ってなんで名前やウチが四人家族って知ってるんだ!?」
「はっはっは。」
セイランは笑って一歩下がるとアーリヤに向き直った。
「アーリヤあかんで。
そんなにボタンはずしたら谷間見えるで。一番上までしっかり留めや。」
「上まで留めてると首がきゅってなるから嫌なの。
別にどんなかっこしたっていいでしょうっ」
ポンポンと頭を撫でながら言うセイランにアーリヤはそっぽを向いてふくれた。
ネイバンはなら詰め襟の服着なきゃいいのになぁと思った。
「あかんで、アーリヤ。心配なんや。
せめて外すのは上二つまでにしとき。」
そう言いながら詰め襟の服のボタンを閉めてやるセイラン。
この辺では襟ぐりの空いた服装が主流な為、ボタン四つほどあいていてもネイバンは気にしなかったがセイランにはそうでなかったらしい。
大事にされてるなぁ、と思うネイバンだった。
「ええか、アーリヤ。
世の中にはな美人じゃないとムラムラしない男もおるけど、女なら誰でもいいっ!って変態や、そこに谷間があればのぞきこんで何カップか聞き出そうとする婚約者持ちの魔王もおるんやで。」
いきなりなに言い出すんだこいつ!てか、魔王様いつも除きこむのか…別な意味で恐怖じゃねーかと思うネイバンだった。
「回りにいる人そんな人いないよ。」
「そりゃあな。
アーリヤよく考えてみい、お前や同居人の神官のお嬢さんに手なんぞ出したらレイリーの恐ろしい報復が待ってるんやで?
事情や社会的世間的な地位や目を気にする真っ当な人間なら手を出そうと思わん。」
ネイバンはこくりと頷く。
未遂でも報復は凄い。聞いたりたまに見たりするかぎりレイリーの報復は本当にえげつない。
「ネイバンさん達はレイちゃんが怖いから親切にしてくれるの?」
「いいや。ネイバンさんが優しい人だからや。
後、アーリヤが危なっかしすぎてお節介したくなるからや。
安心せい、お前の回りは調査済みで全く問題ない。むしろ、アーリヤが世話になりすぎて菓子おり持って挨拶回りせんとあかんと思うほどや。」
「マジか!ネイバンさんいつもお世話ありがとうございます!」
アーリヤはネイバンに頭を下げた。
耐えきれずネイバンは叫んだ。
「いい話に持ってこうとしたって騙されないからな!
調査済みってなに!?怖いんだけど!俺の家族や近隣全て知ってるのかい!!!!!」
「え?知っとりますよ。」
「あー、こいつねめっちゃ優秀なんだ。
文官武官、諜報、潜入、拷問なんでもやってのける最強の器用貧乏。」
いつの間にか復活した魔王が胸を張る。
拷問ってなに!?と内心泣きそうになるネイバンであった。