いえいえ、病んでません。ただ腐っただけです。
聖女、セツコ・セガーヤ。
異界より召喚され、世界を守り、復興に尽力した現代にも語り継がれる御方である。
そんな聖女が記した書物が禁書となるには訳があった。
聖女セツコはとんでもなく腐っている方向の妙齢女子であったー…
年齢的には貴腐人に近…あ、その、ぴ…ぴっちぴち腐女子のセツコは生きるものだけでなく、筆や巻物、 空や大地等無機物から自然まで総てがホモになる!と豪語する女性であった。
そんな腐聖女セツコの残した書物は、BLのハウツー本。
同士製造機ともいう。
当然のことながら女性神官もしくは見込みのある者に細々と受け継がれ、密やかに同士が増えていった。
脈々と受け継がれていた書物も、時の大神官長の目に触れてしまい、禁書となったのだった。
ちなみにその当時、その書物を所持していた神殿の女性神官達は全て神殿から出され、神殿ゆかりの者達に嫁がされるという出来事があったそうな。
一生を神に捧げるべくして神殿にあがった者も多かったので、ある意味残忍な粛清ともとれる。
しかしながら彼女らは挫けなかった。
内に秘めていたものを、世間に解き放ったのだ。
すなわち、BLの書物製造及び布教である。
はじめはセンセーショナルな問題を引き起こしたのだが、高い文学性もあいまって大衆に少しずつ受け入れられて今に至っている。
そんな書物に触れたときナギは11歳だった。
あまりにも濃い知識にナギは一週間意識を失い、それから一月近く部屋から出ることもままならなかった。
そして、一月半後普段の生活を送れるようになったときにはナギは立派な腐女子となっていた。
今までは兄弟子アイオーンの言いぐさや態度に心を痛めていたナギは変わった。
あー、こいつ報われない系ワンコじゃんwwwと思ってからは総スルーを決め込むことにしたのだ。
神官らしく、清廉に、リヴァイの養い子として恥ずべき事など無いように…幾つもの重圧とストレスにさらされていたナギは、なんだか全てどうでもよくなり引きこもりになった。
一日中寝巻きですごし、部屋に閉じ籠り、妄想をひたすら繰り返す日々。
ちなみにセツコ・セガーヤの書物はナギが見終えた瞬間に光となって消えた。
事情を知ったアイオーンは激怒し、ナギを部屋から出そうと躍起になったが脅してもなだめても効果はなく、強行突破しようにも自身より高い力を持つナギの張った結界に阻まれどうにもできなかった。
困り果てたアイオーンは、リヴァイに助けを求めたのだった。
「ナギや、何があったんだね?」
「お父様…なんでもないです…けど今はもう疲れてしまって(妄想に)」
「ここに居るのは辛いかい?」
「辛いとかは…その、でも(腐女子になってしまって)申し訳なくて…」
「…ナギや、どうだろう神殿を一度出てみてはどうかな。
今まで年上や大人に囲まれて過ごしてきたから、同世代の友達がいないだろう。
すぐに会えない環境になるのは私は辛いが…お前にとってはよい方向に向かうのではないかと思っている。」
「お父様?」
「ナギ、神殿を出なさい。そして学校に行きなさい。
卒業後どう生きるのも自由にしていい。ここに戻ってもいいし、好きな事をしてもいい。」
「好きなこと…!」
ようやく扉を開けて出てきたナギはやつれ、目の下には隈ができていた。(寝食忘れて妄想してたので)
女官は涙ぐみ、リヴァイは痛ましそうに顔を歪めると小さな体を抱き締めた。
こうしてナギはある程度の力を封印された上で、寄宿舎付の女学園に通うことが許された。
この出来事は兄弟子にとっては追放と受けとめられたのだった。
卒業後、ナギは封印は解かれたが神殿には戻らなかった。
アーリヤ経由で知り合ったレイリーと共同研究をはじめたからだ。
その一年後、アーリヤの職場が閉鎖してしまったことをきっかけに三人で冒険者をはじめて現在に至っている。
入学式
ナギ「……(同世代の子ってなに話せばいいか分からない)」
アーリヤ「こんにちは!隣いいかな?」
ナギの周りの椅子はがら空きだった。
ナギ「えっ、あっ、どうぞ…」
アーリヤ「緊張するねー。あっ、私ねアーリヤっていうんだよ。あなたは?」
ナギ「ナギといいます。」
アーリヤ「よろしくねナギちゃん!
ねぇナギちゃんどこからきたの?私はね、魔国の辺境の田舎からきたんだよ。」
ナギ「神殿から…」
アーリヤ「神殿!なんかかっこいい!」
そんな感じでアーリヤに押され気味になりながら友好を深めていった二人でした。




