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うさぎの涙。

「あんまりです。」



ポロポロ、ボロボロ、目を真っ赤にして少女は涙をこぼした。

ステンドグラスの光を受けて、その涙はキラキラと輝きながら落ち、彼女の服に足元にと落ちていく。


そうして小さな手を広げてアイツを庇うように前に立つと我々を睨み付けた。



「私の事を言うのは別にいい。

でも、なんでナギちゃんに酷いこと言うんですか?」



しゃくりあげながら少女は言う。



「ここはナギちゃんの故郷と同じでしょう。

あなた達はお兄さんみたいなものでしょう?

なんで、そんな酷いこと言うんですか。用があるからって呼びつけて、頼み事するのに、なんでそんな酷いこと…」



口元を戦慄かせ、歯を食いしばり、また涙をこぼす。



「いいんですよ、アーリヤ。」



表情すら変えず淡々とアイツが言う。

そうだ、酷いことだなど言いがかりだ。何を言っても言い返してもこないのは認めている証拠だろう。



「言うだけ無駄なんです。

反応しなければすぐ収まりますから。大丈夫、私はもう慣れて諦めていますから。

だからアーリヤが気にすること無いんですよ。だから…泣かないで。」



「ナギちゃん…

だっていい大人になってるのにナギちゃんに挨拶しろって言って自分はしない常識はずれだし、初対面の人に対して平気で暴言吐くし、上か目線だし、宗教家というか人として終わっているようにしか見えないんだよ!

私っ、私っ、許せないよ!」



泣きながら、少女は訴える。



「ナギちゃんいい子なのに、優しいのに…

それに!ナギちゃんは超美人です!!!!

そこそこのイケメンが束になっても足元にも及ばないのに!

あなた達何様なんですか!」



えっ、そこなの?そこが一番引っかかるの?!と誰かが言ったが少女は気にせず続けた。



「ナギちゃんのお父さんも見ているだけなんてあんまりです!

大人になっても平気で暴言が挨拶なんて人をなんで注意してあげないんですか!

いずれ気づくはずって見守りは老人になったって気付かないんです。」



「このクソガキが!!!

リヴァイ様を愚弄する気か黙れ!!!!」



「黙りません!

私は…私の故郷の人たちを弔ってくれたのが夜と闇の神官の方で、すごく良い方で救われたのに…

その中枢にいる人達が、未来を担う人が、こんな暴言はく人で、人を貶めることも厭わないなんてあんまりだ!」



パァンッ!



乾いた音が響く。

兄弟子の一人が少女の頬を叩いたのだ。

近々、遠く離れた地にある神殿に赴任することになり、はじめてリヴァイ様のお側を離れる予定だった。

本人が行きたくないとごねて、リヴァイ様を困らせていた者だ。

遠く離れた地を任されると言うことは、それだけ実力があり、信頼が厚いと言う事なのに、それを分からないとは…と苦々しく思っていた者だった。



ぞわり、と怖気が走った。



空気が重くなる。術が、しかも大規模な発動される前の力の圧力を感じる。



原因はすぐ分かった。

アイツだ。

力が暴走しかかっているのか、体から力の余波が溢れ髪や服をはためかせている。



「ナギちゃん?」



少女が振り返り首をかしげる。



「アーリヤ、あなた頬を…」



パチパチと力がうねっては弾ける。爆発寸前なのだろう。

振り返った少女の顔を見て、はじめてアイツの顔色が変わった。

泣きそうな顔など、幼い頃以来見たことがなかった。

あんな顔をするなんて知らない。

何を言われても淡々と能面のように答えるアイツしか。



「大丈夫!

私は平気だよ。それにね、やられっぱなしなんてあるわけないでしょう!」



少女は笑い、拳を握り固めた。

一歩一歩、先程自分に手をあげた男に近付く。

異様な光景だった。

ぶたれて赤く腫らした頬で微笑んでやって来る少女。

ちょっとしたホラーであった。



「あのね、オジサン。

図星さされて女の子の顔をぶつなんて最低だよ。

それとねやったらやられる覚悟を持たないといけないんだよ。

だからしょうがないよね。」



固まる兄弟子を目にも止まらぬ速さで足払いし、ころげた男の襟首を掴むアーリヤ。


そして、笑顔のままに拳をふるった。















アイオーンは目覚めた。

随分と前の…二年ほど前の夢を見た。


今日は忌まわしい妹弟子のナギが中央神殿に久々に来る日。

一年前までは呼ばれれば嫌々ながらも少女…アーリヤを連れて来ていたが、どこぞの街に滞在というか定住するようになってからそうそう呼び出しに応じないばかりか高い金を要求するようになった。

渋れば悪魔のような女がやって来る。

そうしてアーリヤもやってこなくなった。


今日こそ話をつけねばならないとアイオーンは思った。



「リヴァイ様の元へ行く。支度を頼む。」







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