構われ過ぎるとストレス!
連続投稿です。
前の話のあらすじ。
ちょっと昔、魔王の住まう魔国に隣接する小さな村がありました。他の場所より魔力の高い子どもが産まれやすいというだけの小さな村が。
実はその村には人の知らない秘密がありました。
昔、遥か昔、その時の魔王を倒そうと作り出された怪物が暴走して人の国を魔国を壊して回ってしまい、魔王は怪物を倒して封印したのです。
怪物は山となり、なにも知らない人は村を作りました。
魔国の人々と友好を築くようになっていきました。
そして時代は流れ、平和な時代に。
平和は退屈ももたらしました。
ある時、実力はそこそこでプライドだけは山のように高い魔人が封印された怪物の話がのった書物を見つけました。
その男はなにも考えず、ただみてみたいと思いました。
そして、その怪物を倒したら次代の魔王は俺だと意気込んで封印を解いてしまったのです。
どうなるかよく考えもせずに。
こうして、山となった怪物に姿を現せと命じた為に、山のモノはすべて滑り落ち麓の小さな平和な村を飲み込んでしまいました。
生き残ったのはたった九人の子どもと一人の老人だけでした。
こうして、アーリヤとレイリーの故郷は跡形もなく滅び、孤児になりました。
怪物にのみ込まれ、魔素に侵蝕しんしょくされた生き残りの子ども達は元々魔力の高かった者は底なしといえるほど高く、ほとんど持たなかった者は人の身には余る程の高さへと変わってしまったのです。
アーリヤは全く魔力の無い子どもでしたがそこに無理やり巨大な魔力がもたらされたので、幼い子どもの体と精神は蝕まれかけました。
眠ると悪夢見続け苦しめられたアーリヤは、誰かが近くに居ないと寝られなくなったのでした。
そんな感じの話でした。
*****
「あーどうするかなぁ。
ナギの所にやった方がナギは喜ぶんだが本人嫌がりそうだしな。」
「誰彼こだわらず友好的なアーリヤが嫌がるなんて珍しいな。」
魔王と共に学長室に戻りながらレイリーは悩んだ。
アーリヤは基本的に誰に対しても友好的だ。
本人はなめられているから、と言うが人懐っこい性格に愛想もよいとくれば可愛がられるのは当然だ。
美人だ、と言われるが愛想や人懐っこさはレイリーやナギなど足元にも及ばない。
交渉事はレイリー担当だが友好関係を築くのはアーリヤ担当みたいな感じだ。
「夜と闇の神殿の元の大神官長知っているか?
あれがナギの養父なんだが…」
「ああ、知ってる知ってる!
あの男ホイホイな。フェロモン出てるのかって言うくらい特に美形の男を年齢問わず惹き付けるヤツだよな。
あ、まぁ普通の男にも人気だったけどな。
ただ実力と顔面偏差値高い人間にはライクを通り越しておどろおどろしい程のラブを向けられていて、神殿って怖いなあーって思ったわ。
しかしながら本人無自覚な上人間的には人格者。
たまたまあった会談で話してただけなのに俺めっちゃ嫉妬の視線向けられてうけたぜ。」
レイリー達が産まれる前の出来事だと言う。
嫉妬や殺気を受けて、ウケルーで済んでしまう魔王も魔王である。
「そんな養父に可愛がられるナギ。
どうなるかわかるよな?」
「あー、やだね。ちょっと大人になれば一緒に可愛がってった方が受けがよくて特だって言うのに。」
「狂信者は分からなかったみたいだな。
まぁ、トラウマになって力を暴走させる位の出来事があったらしい。それではなされたんだが、禁書をみた咎でアーリヤと同じ学園に入れられ今に至る。」
「色々はしょりすぎだと思う。」
まぁ別に興味無いけど、と魔王は呟く。
自国と親しい者以外は割りとどうでもいいと割り切る性格なのだ。
「どんな扱い受けてたかってペラペラ話すナギじゃないし、あえて言うことでもない。」
淡々とレイリーは続ける。
そんなナギがアーリヤについて来てほしいと言ったのは二年前。
養父が居る神殿に召集された時。
なにも知らないアーリヤは軽い気持ちで付いていき、兄弟子達の態度に憤り泣きながら今まで誰も指摘してこなかった正論をぶちかました…らしい。
「アーリヤらしいなぁ。
人様の事でピーピー泣いて立ち向かっていくのはなかなかできないぞ。」
「いたいけな思春期乙女だからな。
私も、アーリヤも。感情的になりやすいのだよ魔王。」
「レイリーさんや、君に似合わぬ単語が二つも…あででででッ!!!
じょ、冗談だからっ!脇腹つねりあげるのマジでやめて!」
大の男が涙目になるくらいには痛かった。
「自分が正しいって思っていた狂信者に冷静に考える機会をアーリヤが作った。
養父が関わらなきゃ有能なやつらは自分達のしてきたことが如何に人道的に間違ってたか、宗教家として高い地位に居るものとして眉をひそめられる事か理解した。」
「それでなんでアーリヤに嫌がられるんだ。」
「今まで居丈高に振る舞っていたやつが急に態度を軟化させるのは難しい。
無意識的にそんな態度を取った連中に絡まれたらどう思う?」
無自覚の嫌みや高圧的な物言いは、いかに能天気なアーリヤとて嫌気がさす。
本来謝らなければならないナギが兄弟子達の謝罪を全く受け付けない事もあり、自然と仲の良いアーリヤに仲介を頼もうとするが基本姿勢が高圧的な為本題に入る前にアーリヤが逃げてしまう。
ナギが心配でその出来事以来召集の度に付いてきていたアーリヤも、会うたびにうるさく言われるわ攻撃的な態度を取る兄弟子もしくはその部下に限界をむかえついに同行をやめた。
「それで終わればまぁましだったんだか…」
「えっ?!
さらに何かあるの?」
「もはや意地でも和解したい兄弟子の一人が…」
「意地って言う時点で和解する姿勢じゃないだろ。」
「何をしてもいいから連れてこいと部下に頼んだ。」
「あっ、なんかまずい予想しかたてられない。」
学長室についたので魔王はドアを開けて、レイリーを通した。
魔王は一応性別が女性ならよっぽどの事がない限りレディファーストをする主義だ。
レイリーはどうも、と一言行って先に入る。
そしてソファーに腰掛けて口を開いた。
「その部下は更に下へと命じた。
命じられたのはそこそこ顔のいいチャラ男だった。」
「もしや…」
「惚れされて言いなりにさせればナギにも近付くチャンスもゲットと軽い気持ちでアーリヤに近づいた。」
ちょっとぽーっとはなったアーリヤだがしきりに相手の男がナギやレイリーを気にするのですぐに違和感に気付いて事なきをえたのだ…が、
「それからアーリヤをダシに私達に近付く馬鹿が増え、引きこもりや籠城できる拠点地を探して定住して現在に至るというわけだ。」
「アーリヤかわいそうだな。」
「真剣に好意を向けてくる連中がいてもスルーだ。
正直、責任を感じないでもない。
身を守らせるために色々吹き込みすぎたかな…と。」
「お前も絡んでたか!」
アーリヤの春は遠い。
次の更新は23日予定です。