大事さは人によって違うよね。
「で?
まずは魔王、話を手短にしろ。今すぐに。」
「うん、レイリーちょっと待とうぜ。
俺はこれでも魔王様なわけよ。一国の王様なわけよ。
ちょっと恭しさを出してくれないかな?ちょっとで良いから。な?」
「魔王様、
ワタクシめも火急の用との事でこちらに参りました。
我が同郷者を遠き街に置いてきています。一人で残すには心配でなりませんのでお話いただけませんか?
なお、これ以上お求めでしたら腹部より下に一撃を放ってしまうかもしれませんわ。」
すぐさま復活して向かいに腰かけ直した魔王にレイリーは恭しく一礼しそう述べた。
手にはいつのまにやらメリケンサック。
微笑を浮かべているが殺気しか感じられない。
腹より下とは大事な分身を指しているのだろう。ものすごく恐い。レイリーならば本当にヤるだろう。
「まぁ、落ち着け。
知っていると思うが、先日ここの人間が結界に穴を開けた。
おまけに魔国にも被害が出てな。
微々たるものだが、被害が出た場所が問題になっている。
各国の国境が隣接された狭間の森に被害が出て、生態系異常が確認された。
どんな新種の陣を描いたのか知らんが、ドラゴンモドキが巨大化したあげく、凶暴化して増殖している。
幸い、死亡者は今のところ居ない。しかしながら時間の問題で被害がいつでてもおかしくない状況だ。」
ドラゴンモドキとは掌程の大きさで、トカゲと蛇を足したような不思議な生き物で正しくはドラゴン種ではない。
トカゲより長い首を持ち、牙がある。四足歩行もするが蛇のように動いて進みもする。敵に巻き付き絡み付いたりもする。
噛みつこうと口を開けた姿がドラゴンに似ている事からドラゴンモドキと呼ばれるようになったとか。
ちなみに丸焼きやフライにすると美味しかったりする。
「で?
私に尻拭いしろと?殲滅しろと?」
魔道研究塔が困った時だけレイリーにすがり付き、問題を全て投げ飛ばしてくる事には慣れていたつもりだがこれはひどい。
しかも国境が重なりあった森。
もしなにかあれば責任は全てレイリーに被せて逃げる気満々だろうと予想がつく。
「バカいえ。
お前がそんなことする必要無いだろう。必死になって頑張れば他のやつで十分対応できる。
揉め事起こした挙げ句、楽させる必要なんぞ無い。
レイリーにやってもらいたいのは暴走者が暴走させた陣を解析して生態系異常を正常化させてもらいたい。
その為にお前の力を借りたい。
レイリー、頼む。
力を貸してくれ。報酬は俺も出す。
後、ここからもたくさんふんだくれ。ついでに隣接している国々に恩を売っておけ。」
レイリーの懸念などどこ吹く風で不敵に笑って、そして頭を下げた。
こんなとき、色々言ってはいるが敵わないと思いしらされる。
腐っても王…
いや、かなりまともで頭の切れる為政者であり、ちゃんとした大人であろう。
「それにトカゲモドキはアイツの好物だしな。
取れなくなったら悲しむだろうし。」
「ちょっとした感動も台無だ。
結局、そこか。このロリコン。」
「愛ってやつだな。ハハハ!」
全ては愛しき婚約者の為と言いきる魔王であった。
白衣の人はまだ床でのたれうちまわってます。