愛され爺、軽やかに笑う2
愛され爺こと、ナギの養父元大神官長リヴァイは男にモテた。異常なほど。
いや、現在進行形ともいっていい。
もちろん、女性からは敬愛を捧げられているが。
宗派にもよるが、夜と闇の神殿では結婚は中~下位の神官ならば認められるがそれ以上は基本的に独身である。
男女別れて管理されている事が多く、高位の神官であるリヴァイは必然的に男に囲まれて過ごしている。
そんな中、引き取られたナギは望まざるうちに異質な存在となってしまった。
男ばかりの中で育てられリヴァイに可愛がられるナギは、彼女と年が近い者からの嫉妬を身に受けることになってしまった。
リヴァイを愛してやまない兄弟子達は、人の目のないところでは散々ナギを貶め、時には手をあげることも厭わなかった。
ナギが七つの時、リヴァイが居ないスキを狙い兄弟子の一人に地下倉庫に閉じ込められた。
恐怖で力を暴発させてしまったナギは、神を喚んだ。
手順も踏まずに神を呼べば、それは厄災となる。リヴァイが駆けつけなければその場は不毛の大地となるところであった。
ちなみに、やらかしてしまった兄弟子の一人はムキムキマッチョで、そこら辺からナギのマッチョ嫌いは始まっている。
力を持ちすぎてしまったナギは、リヴァイと離され別な場所で暮らすこととなった。
暫くは平穏だったが、ある日兄弟子の一人がナギのいる神殿に赴任してきた事から憂鬱な日々が始まった。
その兄弟子アイオーンはとにかくリヴァイ至上主義だった。
それ故、彼と同じような力を持つナギが目障り極まりない!と面と向かって言う位嫌われていた。
要は、大好きなリヴァイ様と親子関係でいる事だけではあきたらず、更にオソロイとかめっちゃ羨ましすぎる!!!爆発しろ!!!!!!!的な思いからであった。
暴発の原因となった兄弟子事件を教訓にしているのか、直接的な暴力を受けることはながった…が毎日毎日、重箱の隅をつつくような嫌みを言われ続ける日々。
ナギの味方でいてくれた側仕えの者から付けられた渾名は『姑野郎』。
側仕えの女官達は色々あの手この手でナギを守ろうとしてはくれたが、身分の差でどうしよも無いことや聖域にまで連れていかれると庇いきれはしなかった。
とうとう耐えきれなくなったある日、ナギは禁書に手をかけた。
禁書はかつて異界より召喚され世界を救った聖女セツコ・セガーヤが記したとされる書物。
セツコ・セガーヤ…
彼女を語るのは伝承を語ると同様である。
300年前、太陽神を信仰する者達により夜と闇の神は封じられ、夜が訪れなくなった事があった。
日差しばかりで、大地は干上がり、人々はうまく眠れなくなった。
作物は枯れ、病が蔓延し、人々が夜と闇もかけがえのないモノであると気付いたときにはすでに遅く、神を封じた者は何処へと消え去っていた。
生き残りをかけた人々は種族の壁を越え手を取り合うこととなる。神封じを見つけ出し、神を奪還する為に。
そこで召喚されたのがセツコ・セガーヤであった。
黒髪に焦茶の目をしたかの女性は最強であった。
呼ばれて一週間で夜と闇の神を奪還した。
それから十年の月日で世界を復興へと導いた。
そして、十年と十ヶ月と十日後彼女は消え去ったという。
一冊の書物を遺して。
かつて、その書物は女神官達により受け継がれ大事にされてきたのではあるが、今から100年ほど前に当時の男性の大神官長によって禁書とされナギのいる神殿に封じられていたのだった。
禁書がある事を知ったのは偶然で、
アイオーンすら知らぬ事であった。
ナギは限界だった。
禁書になるくらいである。
恐ろしいモノがあるのかもしれない。
それを得ることができればアイオーンに抵抗できるかも知れないという藁にもすがる思いであった。
そして幼きナギは禁書に手をかけ、新たなる扉を開く事となったのだったー……
ナギの女官A「ナギ様をいじめるなんて…いつかハゲ散らせ、あの野郎。」
ナギの女官B「あの野郎、ナギ様が頑張って朝お掃除した場所に昼過ぎに来て指で埃をすくって、どういう事だ、掃除もまともにできないのかって…ウギギギギギ…!!!!」
ナギの女官C「自分は四六時中お世話を受けてるのにっ!
くっ、上げ膳据え膳で口だけ達者とか最低じゃないですか!」
ナギの女官D「…ワタクシ、近頃アイオーン糞野郎神官長様が結婚したばかりの頃の姑と重なり…怒りに身を焦がしそうな時が…」
A「私は小姑と時々かぶります」
C「私は継母。」
B「私は姉の嫁ぎ先の姑とかぶります。」
一同『………』
ピコピーン
【女官達の心がひとつになった!】
ピコピーン
【アイオーンに対しての好感度が0を通り越して-になった!】
ピコピーン
【アイオーンの裏の渾名は糞野郎神官長から姑野郎へと進化した!】