三人よればなんとやら。
連載にしてみました。
短編見てから来る方が分かりやすいかもです。
「付き合ってください‼」
「いいよ~!前々から気になっていたの!」
アイテム屋のカウンターで、愛の劇場が繰り広げられる。
男の方は騎士で、女は…女というより少女という方がしっくり来るソバカス治療師アーリヤ。
ラブストーリーは突然である。
「ネイバンさん、後で荷物取りに行くのでお金だけ先に置いておきますね!」
ニコニコ笑顔でアーリヤは言うと、騎士の手を引きアイテム屋を後にする。
騎士は赤面しているがアーリヤは通常運転なのが気になるが、とりあえずアイテム屋の主人ネイバンは頷き見送った。
「ある意味、温度差がすごいなぁ。」
なんだかんだ言うがかわいい姪っ子のような存在に思っていたアーリヤの春にちょっとした寂しさも覚える店主であった。
「ただいまー」
「はやっ!!!!!」
半時もたたずに戻ってきたアーリヤにネイバンは驚く。
今から嬉しはずかし初デートではなかったのか。
別れたのか?
え!?
たった半時にも満たない間に何が?!
「…アーリヤ、お前デートしに行ったんじゃないのか?」
「えっ!?」
「えっ、ってお前!さっき告白されてただろう!」
「えっ!?」
「えっ!?違うのか?今の若者はそうなのか?!」
「うーん、よくわからないけど違うと思うよ。
あ、さっきの人ねナギちゃんかレイちゃんに会いたくて私に声かけたんだと思って二人のところに連れていったの。」
あれ、どう考えてもお前に言ってたと思うけど…と、ネイバンは心のなかで呟く。
あの騎士もかわいそうだなとちょっと同情した。
「うちのパーティの中だと私が一番話しかけやすいし、なめられやすいから。
変に自分で解決しようとしないでいいってレイちゃんに言われて、声かけられたらレイちゃんに回すようにしてるの。
ナギちゃん男嫌いだし。
多いんだよ、私を懐柔して二人に取り入ろうとする人。
困っちゃうよね…」
少し寂しそうにアーリヤは笑った。
レイリーは美人、ナギは超美人、アーリヤは普通。
ネイバン的には普通にかわいいと思うのだが、世間ではそうでもないようだ。
見慣れでなければ確かに二人に目を奪われるだろう。
例え性格に難ありでも。
「それにね、さっきの騎士さんだったでしょ。
国に仕える人はけっこう王命で懐柔とか、誘惑とか、恫喝して国に取り込もうとするの。
だからさっきの人もそうだよ。
何度も目があったり、こちらをうかがってるのを何度もみたし。
目が合うと隠れたり、去っていったり。」
アーリヤはため息をついた。
「…ほほう…
んー、まぁそんなやつらばっかりじゃないぞ。
いずれアーリヤの運命に会えるさ。
たから落ち込むな!話くらいならいつでも聞くから、な。」
「ネイバンさん、ありがとう。
なんだかお父さんみたいだね。」
「せめてお兄さんと言って。俺は二児の父だけど、もしアーリヤが娘だったら嫁に出さないぜ。」
「うわー、引くわぁ!
奥さんと娘さんも絶対引くわぁ!
まぁ、ありがとう、おじゃましました。」
笑顔になって店を後にするアーリヤを見送り、ネイバンは思った。
さっきの騎士は見慣れないヤツだった。
と言うことは赴任したばかりで、普通に恋をして、告白してきたのは間違いないだろう。
「けどなぁ、レイリー達に引き合わされたんじゃ、恋心も粉砕だろうなぁ…
あいつら花嫁の父以上に強敵だからなぁ…」
アーリヤの春は、遠い。
アーリヤ「レイちゃん、後はよろしくねー!」
てってってってっ(アーリヤ立ち去る)
レイリー「で、私達に何のご用件でしょうか。」
騎士「えっ、あの、その…」
ナギ「アーリヤに何て言ってここまで来ましたの?」
騎士「そ、その…
付き合ってほしいと言ったらっ、ここにっ」
レイリー「ふむ、あいつ勘違いしてるぞ。
我々に話を通したいから会わせろと言ったと思ってるな。間違いなく。」
騎士「ええっ」
ナギ「この前、国王から城に仕えよ、というお話を頂いたのですがお断りしましたの。」
レイリー「そんな矢先、アーリヤに告白…
お前、名は?所属はどこだ?誰に頼まれた?」
騎士「ええっ、違っ…」
ナギ「正直に答えてくださいね、ふふふふふふ」
頬笑む美女二人に迫られ、騎士は後ずさる。
トンっとその背が壁に当たる。
その後どうなったかは不明である。
若い男の悲鳴が聞こえたとか聞こえなかったとか。