07 アメーバー!…が進化してスライム!
16.05.14書き直しました。大きな設定を追加していますが、ここまでは殆ど変わっていません。次からは前の話とちょっと変わっています。
アメーバーがスライムの進化前だというのは分かったけど、どうやったら進化するんだろう?そもそも魔物って進化するものだったんだ。ゴブリンはゴブリン、ドラゴンはドラゴンから生まれるものだと思っていた。
う~ん、進化するところ見たいな…
今すぐでも進化しないかな?とアメーバーを横目で見つつ、ベリリに【育成】で育てていると、アメーバーがゆっくりとこちらに近寄ってきて、【育成】から漏れ出す僅かな魔力を取り込み始めた。
【魔力循環】のレベルが上がるにつれ【魔力感知】【魔力操作】のレベルが上がってきて、自分の魔力の流れなら見ることが出来るようになっている。だから自分から出る魔力のおこぼれがアメーバーに吸い込まれていくのも視覚で分かったのだ。
ちなみに【魔力循環】【魔力感知】【魔力操作】などは今のところステータスに表示されない。この辺りも【サーチ】のレベルが上がれば見れるようになるのかもしれない。
今は自分の感覚でレベルを認識している。例えばダンスの習い事をしていて、ステップがぎこちなかったのが、段々と身についていく感じ?
「へぇ、魔素が宿った草を好むって表示されていたけど、人が発する魔力でもいいんだ。だったら…」
ベリリを種にした後、アメーバーに向かって魔力を少しずつ注いでみた。私から出る魔力をドンドン吸い始めるアメーバー。だが、あるときを境にピタリと魔力を吸うのを止めてしまう。
「フルフルと震えだしたけど…もしかして、進化するの!?」
もともと軟体でふにゃふにゃな体が、あわ立つようにボコボコと凹凸を見せ始め、一周り、二周りと膨らんでいく。透明だった体も、灰色に。それでも半透明である。
ん?スライムって青色や緑色じゃないんだ。私の知識は某ゲームの知識だから、こちらの世界では灰色が普通なのかな?この世界に生まれてから魔物に出会ってなかったから、これが初魔物だわ。(アメーバーを除く)
本来なら魔物は危険な生き物だと言うのに、相手が元は弱小のアメーバーだから暢気に観察することが出来た。
ドッジボールぐらいにまで膨れ上がったアメーバーはプルプルつやつやで、重力のせいでまん丸じゃなく大福のような形で収まった。目と口は見た目では分からないけど、もしかしてポチッと1センチ未満の凹みが二つある。これが目なのかも。
「わぁ、進化を見ることが出来るなんて、ちょっと感動!そして面白い情報をくれる【サーチ】って優秀ね」
体をプルンと震えるだけで動こうとしない出来立てほやほやのスライムに向かって【サーチ】を唱えると驚く名称がでてきた。
【サーチスライム…スライムの一種で新種。超希少。ユニーク】
「……」
新種…新種ってでましたけど、何!?もしかて【サーチ】を神様から頂いた私の魔力で育てたから新種になってしまったの?それっていいの?大丈夫なの?って、自分で育ててしまった以上、殺すなんて…私には出来ない。
「うん、見なかったことにしよう!じゃ、そういうことで」
プルンと体を震わせている灰色のスライムに背を向けて歩き出すと、ポス、ポスと草の上を跳ねる音がいつまでも着いて来る。
「君は自由なんだから、何処かに行っていいんだよ」
そう、私と違い何処にでもいける。私は…この黒髪黒目の所為でこの国では忌み嫌われている。神父様がいなかったら私は殺されているところだろう。だから、他の街にもいけないし、勝手に村を歩くことも出来ない。こうして誰にも見られることなくこっそりと出かけること以外には。
スライムがちょっと羨ましいな、なんて思ったのは内緒である。それなのに、
「なんで着いて来るの!?」
私には何も出来ない。着いて来られても困るんだよ。
邪険に怒鳴っていると言うのに、スライムはぴょんぴょんと跳ねて近づいてきて、魔物らしく私を襲うというわけでもなく、その様は何かを訴えているよう。
キュウキュウと言葉を発しているみたいだけど、スライムの言葉なんて分からないし。
「…【サーチ】」
唯一情報を見ることが出来る【サーチ】を試すと、さっき見た説明のほかに【従魔可能】の文字が増えていた。
もしかして、これが原因で私に付いてきているのかな?
「ええと…私と友達になりたい…と言うことかな?」
言葉が分かるかどうか分からないけど、私がスライムに問いかけると、さっきよりもぴょんぴょん大きく跳ねた。ということはそういうことなんだろう。
プルンと体を揺らすのは可愛いんだけど、飼う(?)ことは出来ないんだよね。だって村の中だし、居候させてもらっているし。何食べるか分からないし。ってもう半分以上飼う気でいてるわ!何より私が【育成】で育ててしまって、この世界唯一のサーチスライムになってしまった責任もあるから、というのも大きいかもしれない。だって、新種を放置して世界に影響を与えてしまったら…と思うと、怖い。
う~ん、どうしよう。と1分ほど悩んでいたけど、いつまでも悩んでいても仕方ない。【従魔】にしなくても付いてきそうなんだから、従えて大人しくしてもらったほうがいい。住まいは・・・・・・予定が狂ってしまうけど、あそこでいいだろう。
決断するとスライムを【従魔】にすべく意識して魔力を放出する。
【従魔】の魔法なんて知らないからね。なんとなく私の元に下るよう念じるだけ。それだけで元々素質が有ったらしいので、簡単にスライムを従えることが出来た。
紫色の輪がスライムの頭上に浮かび、すっと降りてきて円柱になった後、消え去った。多分これで契約が出来たと言うことなのだろう。
繋がりが出来たからか、スライムが喜んでいるのが何となく伝わってきた。
前世で捨て犬捨て猫に出会うことが無かったから、拾ってくるなんて無かったけど、もし出会っていたのなら犬猫限定で、拾ってきている可能性100%。私は小動物に本当に弱い。
【従魔】がどれ程危険なことなのか、村人達の視線だけでうんざりして、身を潜め、気をつけていたというのに、この時だけは希薄になっていた。
村人どころか、国中が忌避している【従魔の闇魔導士】の存在を・・・
こんなにスライムが可愛いものだったなんて、もっと気持ち悪くデロデロだったなら、そして私に危害を加えようとしているのなら退治出来たのに。そう、アメーバーみたいにぽいっと投げて、ね。
苦笑交じりになりそうなのを引っ込めて、スライムに晴れやかな笑みを向ける。
「よろしくね。スライム…っていうのも味気ないから、名前をつけないとね」
でも私にネーミングのセンスないんだよね。だからといって呼び名がないのは不便だから。
「君の体が灰色だから、グレイって言う名前でもいい?」
そう聞くと、また嬉しそうな感情が流れてきた。いいんだ、それで。安直なんですけど?
再び【サーチ】をかけると。
グレイ【サーチスライム】…ユニーク
レベル 1
HP 10
MP 15
魔法…サーチLv.1
私の従魔になったから、さっきは魔物としての説明しか出てこなかったのに、ステータスが見えるようになっていた。
流石はスライム、ステータスが低い。
だけど、
「改めてよろしく。私の初めてのお友達。グレイ」
従魔とはいえ、この世界で初めての友達なのである。嬉しくてそっと抱きしめた。
感触は、ほんのり冷たくてプルンプルンで気持ちよかった。
この国が忌み嫌う話説の人物と被ってしまうから、魔物を従えるのは駄目だと分かっていても、『きゅうゅう』と可愛く鳴きながら着いて来る様が可愛くて、つい……
「君の名前はシルバーね」
調子に乗ったということだろう。
グレイトは違った色合いの、透明感を持ちながら銀色の体を持つスライムに【従魔】を掛けて名を与える。
その後ろには一番初めに従えたグレイとその次に従えたインディゴが、仲間が増えた喜びで飛び跳ねていた。
インディゴ【錬成スライム】…希少種
レベル1
HP 11
MP 14
シルバー【ヒールスライム】…レア
レベル1
HP 8
MP18
「…またやっちゃった」
インディゴは名前の通り濃い紫色をしている。グレイに魔力を与える時、無意識に使いやすい【サーチ】の性質を持った魔力を与えたようだったので、【錬成】を意識しながら魔力を注いでみたらどうだろう?と試しにやってみたら簡単ではなかったけど出来ちゃったの。てへっ。
そしてまた可愛く跳ねて着いて来るから【従魔】してしまった。
「あはははは…私ったら何やってんだろう…」
それも三度目だし。どれ程友達に飢えていたんだ!?と自分自身を突っ込みたくなるわ。
思うように魔力を注げなくて、何度もアメーバーを爆発させ失敗してたりもするんだけどね。成功は一割未満かな?
グレイが一発で成長したから、簡単にスライムを作れると考えたのが甘かったみたいで、何も考えずに魔力を注ぐと失敗してしまい、途中から魔力の発動に質がいるのでは?と至ってからは3割ぐらいになった。
お陰でレベルが一つ上がったみたい。もともとアメーバーは作物の害虫としてやっつけていたから、罪悪感が少ないようで目に付いた端から試してしまったわ。
ルーシア…11歳
レベル 5
HP135
MP1160
魔法…光魔法…【育成】Lv.5
闇魔法…【錬成】Lv.3 【従魔】Lv.1→Lv.2
無魔法…【サーチ】Lv.6 【転移】Lv.4
弓…Lv.2
ちなみに、本来の目的である狩りは、遠くでウサギを見かけたから弓で射ったところ、一応それることなく真っ直ぐ飛んだけど、かすることなく逃げられました。
手作りだし、レベルも2だしねぇ。素人のままだから上手くいくはずはないよね。
レベルは、1だと使える要素がある。2だと素人。といった具合。
私が甘かったと言うことです。うん。
帰ろう。
その日の夜、私はスライム達を【従魔】にしたことを後悔することになる。