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03 ということで【転移】を習得しました

16.05.14 書き直しました。大きな設定を追加しましたが7話までは殆ど変わっていません。


 危険地帯へと向かう決断をしたけれど。結論から言うと、まだ村の外にある大森林へと向かっていない。だって、大人でさえ危険な場所に一人で行くんだよ。それなりの準備が必要になるでしょ?



 ガラム村に隣接している森はフロイド王国の中でトップクラスを誇る大森林だ。森の中心には岩山のリュクレ高山があり、真っ直ぐ進んでも歩いて2日はかかるという。だが途中でマクルル川の支流も枝分かれしているし、至る所には丘程度の岩山もごろごろ点在している為、リュクレ高山に順調よくたどり着いても5日ぐらいかかる。


 もちろんこんな大自然なのだから魔物も存在する。ランクの低い魔物から災害ランクの魔物まで。そんな危険な魔物が森のいるというのに、ガラム村が無事なのは大河のマクルル川の複雑な支流と、森を囲うように配置されている岩山のお陰なのだ。

 森を出なくて十分な餌と広さをもつ森なのだから、強い魔物は出てこない。それにリュクレ高山の反対側のほうが森もこちら側よりも広くなだらからしい。なので、こちら側の森には、追いやられた弱い魔物しか発生しない。

 そんなこんなでガラム村はひっそりと暮らしていけるのだ。


 それでも魔物は脅威となる。村の人たちは本当に必要とする物を採取する以外、森には立ち寄らない。


 そんな森へと戦う術を持たずに11歳の私は挑戦しようとしている。正直言って無謀である。


 スライムは良しとしても、ゴブリンに遭遇すれば子供の私では太刀打ちできないだろう。たとえ可愛いエミーリオのプリンを作るためであっても、自分の命のほうが大事である。


 それなのに何故、危険を冒してまで森へ行こうとしているかといえば、助かる確率が普通よりも高いから。

 理由は私のステータスによる。


魔法…光魔法 闇魔法 無魔法


 この魔法に二重の【サーチ】を掛けると。


光魔法…育成Lv.2

闇魔法…錬成Lv.2 従魔Lv.1

無魔法…サーチLv.3 転移Lv.1


 と新たなページが表示されることが分かったのだ。切欠は魔法書。魔法書には光魔法の種類は『育成』の他に『回復』『解毒』『光球』等が記載されていた。私は【育成】ができるのに、魔法の欄に表示されないことに疑問を持ち、試しに『魔法』に【サーチ】を掛けてみたということ。


 そこに詳しい魔法のスキル名が載っていて、自分の知らない魔法まであったというわけ。


 無魔法の【転移】を使えば魔物に出会っても逃げ切れるから、戦う術を持っていなくても森へと挑戦しようと思い至った。というのが経緯。

 これならば無謀とは違うでしょ?


 ただ行き成り【転移】が使えるかどうか分からないので、森の浅いところで練習をしようと思う。


 一応ランス神父とエミーリオには教会の裏手の林で食材探しをするから、帰ってくるのは夕方だと伝えて、黒髪を隠せる麦わら帽子をかぶって出かける。


 実はこの大森林、冒険者が挑戦しに来るし、村では自給自足が出来ているけれど、半年に一度ぐらいに商隊もやってくる。


 私は黒髪黒目の忌み子だから、その彼らに見つかると厄介だから、基本は村に出ることを良しとされていない。許可が下りているのは教会の裏の畑と、畑に水をやるための井戸までの道のり、そして畑の直ぐ脇の林のみなの。


 小さい頃から遊び場となっている林は私の庭同然。ごろごろと岩ばかりで、家も建てられず畑にも適していないので、ほぼ手付かず。


 北東に向かっていくと連なった岩場が見えてくるのだが、今まではここまでが私の遊び場だった。しかしこの岩場を越えると、大森林に繋がっているのよね。


 村の出口から大森林へと行くと村人に出会ってしまうので、この岩場を越えることにした。10歳の子供が3メートルを越える岩場を越えるのは一苦労だが、ここで【転移】の登場である。


「さて、上手くいくかどうか…まずは、練習!」


 岩場の頂上が見える位置に立ち、【転移】と唱えてみる。が、何も起きない。

 【錬成】は一発で出来たけど、ステータスに表示されたLv.1は使用できるようになった、ということで、直ぐに使えるわけじゃないみたい。


「ま、そんなに上手く出来るはずはないか。今日は森に入るのは諦めて【転移】に集中しよう」


 プリンのことは1年も待たせているんだから、もう暫く待ってもらってもたいした違いはない。もしかするとエミーリオは忘れているかもしれないけど、私は忘れていない。いつかは約束を果たすつもりでいるのだから、ここで危険を冒して死んでしまっては意味がなくなるもの。安全第一よね。


 まずは【転移】を習得して逃げ道を獲得しなくては。



「ただ言葉に出すだけじゃ発動はしないということかな?」


 【サーチ】は意識しなくても出来た。【錬成】は魔方陣が発動させていた。じゃ、【育成】は?どんな風に魔法を使った?今はもう息をするかのように発動しているけど、初めは?


 思い出して。


 一年前の記憶を遡る。


 そう、あの時は早く芽が大きくなって欲しくて願っていた。大きくなるところを想像していたわね。


「なるほど、想像か。そういや、日本で読んでいた小説でも魔法は想像が大事だと書いていたような…」


 改めて岩場の頂上を凝視する。そしてその場で立つ自分を想像……


「【転移】」


 何かに引っ張られるような浮遊感を味わったのだけれど、一瞬で感覚は霧散する。


「岩場が近くに見えたような気がするのに、肉体は一歩も動いていない……だが、手ごたえはあった?」


 二、三度練習しても結果は同じ。望遠鏡を使ったかのように視界は岩場の頂上がみえるのに、その瞬間、霧散している。


「何が違うのだろう?感覚的に言えば精神のみが引きずられているような…うん、そんな感覚だね。……肉体が付いていかないから上手くいかない?」


 じゃあ、どうすれば肉体が付いていくのか。想像が足りないのかと、肉体が分解するイメージして頂上で再構築をイメージしながら【転移】を唱えてみると、感覚だけが頂上に達することが出来たのだが、気づけば肉体に戻っていて、一歩も動いていない。


「……本当にできるのかな?」


 スキルに【転移】が表示されていても習得できるのか不安になり、そもそも本当に【転移】がステータスに表示されていたのだろうかと、そこまで疑問を抱いてしまった。


「もう一度ステータスを見てみよう。これで見間違いだったら、情けないね」


 ステータスを開いて、はたと気づいたことがある。【育成】にしろ【錬成】にしろ、魔術を使えばMPが減っていたのに、あれだけ【転移】を唱えてもまったくMPが減っていない事実に。


「え?どういうこと?私は魔法としてじゃなくただ【転移】と言葉に出していただけなの?」


 こんな寂しいところでぶつぶつと独り言をいい、飛んだり跳ねたり、頂上を指差してみたりと色々やっていたのに、あれは全部一人芝居と化してしまったの?

 傍で誰かが見ていたら滑稽だっただろう。


「うわ~恥ずかしい!誰もいなくて本当によかったよ。ただでさえ忌み子として嫌われているのに、頭までおかしいとなったらいたたまれない~」


 とか言ったが、それほど人の目は気にしていない。だって今更だし、今現在も大きな独り言を言っているのだから、気にするわけない。


「魔法としての発動…魔法、魔法……ん?魔力…?魔法の元となる魔力を出していないから、魔法として発動しなかった?」


 ああ、そういえば、小説でも魔力を練る主人公が描かれていた。


「意識して魔力を感じたことはないなぁ。よし魔力を感じる訓練よ!」


 近くにあった丁度いい岩の上に腰をかけ、目を瞑って瞑想を始めた。時間をかけて魔力を感じて練るつもりだったのだ。だが、


「はぁ?すっごく簡単に魔力を感じることが出来て、安定までしているけど?」


 腹の中心、丹田に魔力があるだろうと予測し、そこから血液の流れ乗せるように…と、またもや小説の通りに実行してみたところ、直ぐに魔力を感知でき、スムーズに全身に流れるようになった。


 小説様様だわ。

 一番初めにこのようなやり方を小説に書いた人は、もしかしてこちらの世界から地球に転生した人じゃないのか?と思ってしまうぐらいに簡単に出来てしまった。


「長時間かけるつもりだったのに、もしかして私の体はチート仕様なのかな?」


 無意識とはいえ、いくつもの術を成功させていたのだから、循環通路は確保できていたのだろう。

 気を引き締めて、改め【転移】に望んだところ、なんと今度は今まではなんだったの?と思ってしまうぐらい綺麗に成功した。


 意識のみが引っ張られた今までと違い、体が溶けるような、何かに包まれたような不思議な感覚の後、目の前の光景が一転していた。

 目の前に広がるのは緑、緑、時折岩山。ちょっと眩暈を起こして立っている頂上から落ちそうになったけど、確かに私が立っているのは、さっきまで睨みつけていた岩山だった。


「やったぁ、成功した!私ってすご~い!!魔法って気持ちいい~~~!!」


 前世で、小さい頃から一瞬で別の場所に行けたらと何度思ったことか。遅刻しそうな時など特に。青い動物のロボットが不思議なポケットから出す、何処でも○ア。あれと似たようなものだよ!本当に凄い!!感動だわ♪


 その後、一度に飛べる距離を検証する為に5回ほど試してみたところ、Lv.1からLv.2になっていて距離は10メートルが限度みたいだ。そして一度の消費魔力は100。

 一般成人のMPが50で、距離が10メートルしか転移出来ないことを考えるとかなり燃費が悪いようだ。大多数の人は使えない術で、魔術師の人であっても安易に使えないだろう。

 魔力量が多い私であっても、敵を前にして消費の多い【転移】はあまり使いたくない。たった10回しか使えないのだ。100メートルしか逃げられないということで、スピードの速い魔物だったら、やられてしまう。


「これは、もう少し鍛錬してからのほういいかも。ごめんねエミーリオ、もう少し待って」


 この世界は日本よりも死が近い、慎重に慎重を重ねていかなくては、あっという間に第二の人生が終わってしまう。

 前世では「税金」「税金」「税金」「支払い」で「税金」の為に働いて窮屈で仕方なかったのだから、私はもっとこの世界を満喫したい。こちらでも税金はあるみたいだけど、支払いはまだ先、子供の特権を有意義に使わなきゃね。




【転移】本当にいいよね。学校に通っている時に切実に今必要なんですけど?と何度思ったことか。

憧れもあったから、一話使ってしまいました(苦笑)

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