表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/32

02 役に立たないので、前向きに魔法を勉強しようかな。

16.05.14 書き直しました。

大きな設定を追加していますが、7話までは殆ど変わっていません。


 前世の記憶を取り戻してから早いもで、あっという間に私は11歳になっていた。その間に何をしていたかと言うと、文字を覚え、教会に寄付されていた古い本を片っ端から読み漁り、知識を広めていた。本来の仕事である畑仕事の合間にランス神父に文字を教えてもらい、地面に小枝で書いて復習をするということを繰り返して、ようやく淀みなく読めるようになるまで半年以上を要していた。

 ここまでくるのにもちろんのことトラブルが発生している。私が忙しいランス神父に文字を教えてもらっていることに良しとしない子達が抗議し、結局、週一で孤児院の子達が集まっての授業をするはめとなってしまった。ランス神父様ごめんなさい。

 その所為で個人授業が出来なくなり、時間がかかったのだ。


「識字率がひくいこのご時世で、少しでも字を書ける人が増えるのはよいことですよ」とは言ってくれたけれど、私に対して抗議したいだけであって、熱心に文字を覚えようとしている子は少ないです。本当にごめんなさい。お陰で、私とエミーリオは完璧に文字を覚えました。


 ランス神父は本当によい人だ。皆が嫌う容姿である私を拾ってくれて反対を押し切って育ててくれた。そんなランス神父の一日は非常に忙しく、厭わず接してくれる数少ない人なのだけど、接する時間は余りにも少ない。これ以上は迷惑を掛けられないので、可愛いイジメのことはランス神父には話していない。

 35歳+11歳の精神年齢だからね。足を引っ掛ける、物を隠すなんて可愛い虐めである。


 そして文字を覚えたほかにやっていたことは、畑仕事の合間に自分が使える魔法【サーチ】を使ってありとあらゆる身近なものに魔法を掛けまくったこと。暇さえあればやっていたから熟練度が上がったみたい。


 この【サーチ】は使っていて分かったことがあるの。まず、熟練度が低い所為か、土に使うと『土』としか表示されない。そして知識と知っていることが反映される。後一つ、人間に使うと私に対する信密度が関係しているようで、エミーリオや私を育てくれたランス神父、そして同じく孤児であり兄貴肌のマルセルは、村の人たちと違い私を邪険にしない。この三人だけは他の人達よりもほんの少しだけ詳しく表示されるの。

魔法が殆ど使えない村人であっても、この世界に住んでいるからには魔力というものを持っている。多分熟練度が低いから、相手に撥ね除けられるのだと思う。

 【サーチ】は意識体に魔法をかけると、成功するか失敗するかが親密度が関わっているということ。


 一番私と親しいエミーリオが一番詳しく表示され、ランス神父とマルセルは『名前』まで表示されていた。他の人達はなんと『種族…人間』しか出なかったのだ。

 人間って知っているし。これが失敗例なのである。

 というか、私の知識も反映されるというのに、相手の名前知らないなんて…今まで無関心にもほどがあるんじゃない?


 余り役に立ちなさそうな【サーチ】であっても神様から貰った魔法だし、ちまちま使っていたところ、ある日突然、『種族…人間』からその人の名前が表示されるようになったのだ。

 熟練度が上がったから精度が上がり成功したものと思われる(予測)。

 その内、エミーリオのようにHPやMPも表示されるようになるだろうと、1年間、時間と隙を見つけては掛けまくって、私に対してよい感情を持たない孤児の仲間や村人に対してもHP.MPも表示されるようになった。


 そこでわかったことは、やはり私のMP値は異常ということ。

 大人の平均HPは200でMPは50程。

 そして今の私のステータスは


ルーシア…11歳

レベル 4

HP130

MP1080

魔法…光魔法 闇魔法 無魔法


 うん、1年の間でレベルは1しか上がっておらず、HPとMPがほんの僅かに上昇したのみで後は変わらずである。レベルに関しては何もせずに本の虫となっていたから仕方ないわね。村の外にも出たことがないし、日本で読んでいたファンタジーのような魔物退治もしたことがないのに、逆に何故レベルが上がったのか不思議だけど。私のMPの数値の多さほど疑問を持つことはない。

 HPは毎日水汲みの重労働をしているから何となく分かるような気がするけど、この異常なまでのMPは…どう捉えたらいいものやら。神様が言うとおり、地球では珍しいほど魔力を帯びていたと言うのは間違いないみたいね。多分、肉体に魔力を帯びていただけでなく、魂まで魔力が染み込んでいるのだろうと結論付けた。

 考えても誰も正解をくれるわけでもないのだから、もう考えないことにしよう。それよりも、この魔力を無駄にするのはもったいない。折角地球にはない魔法や魔術がある世界なのだから、魔術師を目指してみてもいいかも。と前向きに考えたんだけど、ただでさえ、黒髪黒目で忌み嫌われているのに、必要以上に力を身に付けてしまうと周りから危険視される恐れがあるんだよね。


「さて、どうしたものかなぁ…」


 私の性格は基本のんびり屋である。何処か他人事のように外から見ているといった感じで、感情の起伏も人より少ない。ただ一度怒りに身を任せると手に負えないという厄介な面もあるんだけど、そういうことは滅多に起こることはなく、ほぼ全員の村人から嫌われようともマイペース。殆どが教会の裏手にある畑でいるから、村人たちとも出会うことがなく実害がない。という理由もあり暢気に構えているんだけど、畑でぽつんと一人というのは結構寂しいものである。丹精を込めた野菜の自慢をしたくても、誰も相手にしてくれない。

 うううっ…ぼっちだぁ。こんなにも私は無害なのに、容姿だけで嫌われるなんて酷い…

 その内、何とか改善を目指したいものである。

 この段階でわかるように、かなりののんびり屋な私。でもいくらのんびり屋であっても、危険視され排除となった場合を考えると迂闊な行動は出来ないということは分かっているつもり。


 この世界は日本のように人を傷つけ殺害すれば刑に処せられるという法律がきちんと広まっていない。自分たちを脅かす存在ならば、多少のことは目を瞑るというところがある。

 例えば、何処かの地方で雨が降らず水不足になった場合、人柱を立てることがあるそうで、選ばれる基準は犯罪者だったりスラムの子供だったりと地位が低い者から選ばれる。生きる為ならば一人じゃなく大多数を選択するといった具合。

 身分が高い人、貴族や王族を傷つければ貧民は処刑されるが、同じ貧民同士ならば犠牲も止むを得ないと言う考えが一般的。


 そしてこの村でのヒエラルキーの底辺に私は居る。

 何かあれば真っ先に贄として選ばれるし、危険人物だと分かれば躊躇無く処刑されるだろう。


 特に闇魔法のスキルを持っているとばれると厄介なのよ!


 教会の寄贈された本によると、昔、この辺り一体で魔物の大群が襲ってきて、数箇所の村が全滅したらしい。その魔物の大群は自然発生したのではなく、闇魔法の【従魔】によって、そう、人の手によって魔物を導き、村を襲わせたらしい。それも黒髪黒目の人間一人の仕業だと言う。

 そして魔物を従え操る術を持つ魔法は闇魔法の一つ。


 そう、私のステータスにも表示されている闇魔法。

 これがばれれば、私は一巻の終りだわ。だから、折角MPが高くても迂闊に魔法を使うことが出来ないの。う~~もったいない!


 深く思考しながらも畑の水撒きが終り、道具を片付けようと畑の脇にある道具小屋へ桶と柄杓を棚に戻す。四畳ほどしかないスペースに所狭しと農具と使われなくなった雑貨が並んでいる。その隅には朽ち果てる寸前の小さな机があり、その上には魔術書が閉じられることなく開いたままになっていた。


「おおっと、危ない、危ない!」


 そのページは、この村では禁忌とされている闇魔法のページだった。


「こっそりと教会の書庫に戻しておかないとね」


 この1年の間に【サーチ】と植物の成長を促す光魔法の一つ【育成】の他に闇魔法の【錬成】が使えるようになったのだ。


 ランス神父から文字を教えてもらって、真っ先に読んだ本が魔法書。自分が持つ魔法、『光』『闇』『無』がどのような魔法なのかを調べる為に読んでいたのだが、読み進めていくうちに興味を持ったのが闇魔法の【錬成】だったりする。

 この【錬成】を使えば、少しでも生活が楽になるのではないかと考え、試しに載っていた簡単な【融合】の魔方陣を使ってみたら、一発で成功してしまった。

 私って凄~い!そう簡単に術は使えないと書いてあったのに、一発で出来たのよ!凄いってもんじゃないわ。思わず自分を褒めてしまったもの。


 使用したのはコモの種二つで、魔方陣が発動し光が収まった後には少しふっくらしたコモの種が一つ残っていた。

 【サーチ】で鑑定したところ、『貧弱』から『微貧弱』となって、種の品質が僅かに上がったようだった。

 このころの【サーチ】は熟練度が上がっていたようで簡単な植物の状態が表示されるようになっていた。

 【錬成】が使えることに喜んで、食用の種から土の品質改良もやっていたのだが、その後に『地方の歴史』なるものを読んで、この辺りの地方だけでなく、この国全体で『闇魔法』が禁忌だと知って愕然としたのを覚えている。

 幸いなことに私は他の人から疎まれているのを知っていたから、一人で行動することが多く、【錬成】を使っているところは誰にも見られてはいない。


 こんなに便利で生活水準を向上できる【錬成】なのに、公に出来ないのは本当に勿体無い。

 コモの実だって品質が上がれば、大きな実をつけるし、付ける実の数が増えるというのに。


 だけどまだ死にたくないし、村を追い出されると困るので、教会の裏の畑では極端な品質改良をせずに『普通』まで底上げしたコモの種を使って栽培している。


 私が耕している畑での生産量が増えたお陰で、ちょっぴり食卓の量が増えたのは嬉しいことだ。なによりとばっちりでエミーリオにひもじい思いをさせなくてすむからね。


 多く収穫できた時は村の市場でエミーリオに頼んで売って貰っている。よってその時だけ肉料理になるのだ。


 密かに鍛錬を積んでいる【錬成】で、僅かでもお金を稼げる私は教会内であまり虐められることのない地位に付くことが出来たみたい。ただ、あからさまに言わないだけで、影では文句を言っているのは変わらない。

 足を引っ掛けられたり、冬の寒い時期に布団をもらえなかったりということはなくなっただけでも十分だ。例え、部屋が狭いからと隅に追いやられても凍死することは無いのだから、十分よね。


 少し生産量が増えて、小銭を稼げるようになったとしても、お金は育ててもらった教会のものとなり、私の手に渡ることがないので、個人的にお金は稼げていない。

 だからもちろんのこと、エミーリオとの約束であるプリンもまだ作れていないのだ。

 砂糖を【錬成】することが出来ればいいのだけれど、村で扱っている種や物資では砂糖が出来ないみたい。

 蜂蜜でも作れるのだけど…蜂蜜も高い上に、私は前世から蜂が苦手だから取りに行くことが出来ないの…


 でも、私は約束を忘れたわけじゃない。必ずエミーリオに甘いプリンを食べてもらいたい。


 村にないのなら、他から探すしかないと思い至り、近くの森から新たな食材を探そうと決意した。

 そう、村の外。魔物よけの木の向こう側だから、もちろんのこと魔物が生息する危険地帯。さて、これが吉と出るか凶と出るか…。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ