表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/32

16 ようやく双子さん達に会いました

16.05.14書き直しました。



 悲鳴のあった場所をグレイに確認してもらうと、やはり人がいるようだった。急いで向かうとその場所には馴染みのある顔が二つ。教会で引き取られているクロエとクロムだった。

 私より三つ年上の14歳で、クロエは背中まである水色の髪の毛を一つにまとめポニーテールに、クロムはクロエの双子の兄で、サラサラな赤髪を真ん中に分けて額を出している。瞳はそれぞれの髪の色と同じだ。


 遠目で見る限り、どうやらクロエが怪我をして動けないみたい。


 これはやばい!助けに入らないととんでもないことに繋がってしまう。


 近くによる前に、グレイとパープルを変形させグレイを私の頭に、そしてパープルは右腕にまきついた。見た目はサークレットとこて…までいかないがブレスレットに見えなくもない。ただ色が半透明な為、不信がられてもこまるので、私の髪の毛と服でスライム達を隠し見えないようにした。

 重力を減らしてくれるといっても、皆を身に付けるのは重いので、残りのスライム達は木陰に隠れてもらっている。準備をしてから彼女達に声をかけた。


「どうしたの?クロエ、クロム」


 手助けしてあげないと、血の匂いで魔物がやってくるかもしれないとすぐさま駆けつけたのだが、


「あんた、どうしてこんなところにいるのよ!」


 助かったと喜んでくれるのかな?と思っていたのが、怪訝そうに見られ違う反応に私が戸惑う。


「ここは浅瀬とはいえ、魔物がいる大森林だというの覚えている?君は冒険者でもないし、教会の裏手から出たら駄目なのにどうしてここのいるんだ?ってクロエはいいたいらしいし、僕も疑問に思っている」


 そんなこと言っている場合じゃ無いんだけど。

 このまま放置していると魔物がやってきて、なんとか撃退することが出来るみたいだけど、クロエの足は魔物に食べられてしまうんだけど。

 そんな未来を知っているけど、この二人とは殆ど顔を合わせることが無く、いつそれが起きるのか心配だった。監視しようにも朝早くに出て行き、返ってくるのは夕方過ぎという行動なので、体が二つあるのならまだしも、手が出せない状態だったの。

 でも、足がある。上手く遭遇できて良かったわ!


 教会に寝るために帰ってくる生活を送っている彼女達は、12歳になった途端にギルドに登録して冒険者になって、採取をしている。その僅かな金額を教会に渡し、恩を返しているのだ。

 その採取の為にこの大森林に入っているのだろうということは予測が付いていた。


 私の登場で手が増えたことを喜んでくれるよりも、まっさきに私がこの場所にいることを問われるなんて思ってもみなかったわ。森の浅瀬には何度も来ているから、庭感覚でうろついていたみたい。う~ん、迂闊でした。

 彼女、クロエの言っていることはごもっともです。

 でもね、その前に、まともに会話したことはなかったけれど、女の子なのに口が悪いよと言ったほうがいいのかな?言わないほうがいいのかな?

 クロエは口が悪く、感情が先立つ為にクロムが妹の意思を汲み取って噛み砕いて説明してくれる。そういや、そういう場面が多々あったなぁと思い浮かべていると、クロエが痺れを切らしたようだ。


「だから、どうしてここにいるのよ!ちゃんと聞いているの!?」

「あ、ごめんなさい。ええと、大丈夫です。村の人たちには見つからずに入ってきてますから」

「……いや、そんな問題じゃなくて…」

「そんなことより、怪我をしたんでしょう?早く手当てしないと」


 そうそう、こんなやりとりをしている間は無いの。早く移動しないと。


 クロエは足を押さえて蹲ったまま動かないから、足を怪我しているのは分かる。その怪我の具合なのだが、辺りの草と地面に血が流れ出していることからかなりの出血をしているようだ。


「手当てしたくとも、僕達にはポーションどころか薬草すら持っていない。人を呼びにいきたくても、クロエをこのまま放置していくわけにはいかないんだよ」


 ポーションは非常に高くて私達には買える値段ではないし、薬草は見つけるのが困難だと言われている。下っ端の冒険者には過ぎたものだ。持っていなのが普通だろう。

 見てわかんないの?とクロエに睨まれたが、こっちとしてはどうして止血しないのかが疑問だった。


「兎に角、止血しましょう」


 見せてと、クロエに近寄り靴を脱がせてズボンの裾から捲し上げる…つもりだったけれど、ピッチリとしたズボンだったから出来なかったので、途中から裂けているところから、一気に下まで引き裂いた。


「な!何しているのよ!」

「裂いてしまわないと傷が見えないでしょう」

「だからって、裂くなんて…」

「捲し上げると、傷に当たって痛いよ?」

「う……」


 私達の衣服は全部寄付になる。こんな貧しい村ではろくに寄付が無く、衣服も貴重なのだ。それを迷いも無く引き裂いたのでクロエは怒ったようだけど痛みのほうが勝ったようで、唸りながら静かになった。


 うわっ!これは酷い。脹脛から足首までざっくりと切れている。これは相当痛いに違いない。気丈に振舞っていなければ痛くて仕方ないんだろう。


 ポーチから水を取り出し、傷口から泥や石を洗い流す。時折「ううううっ」と唸っているが我慢してもらうしかない。そして辺りを見渡しサセモの葉を数枚採取して水で洗い、揉み解してから傷口に貼り付けると、自分の服の裾を破いて包帯代わりにして巻きつける。

 折れていないみたいだけど、捻挫はしているみたいだから、念のために添え木をして足首も固定する。


「これで、多少の移動は可能になったわ。早くこの場所を離れましょう」


 何故か二人はポカンとしているが、はっと我に帰って、私の後についてきてくれた。


 シルバーに治してもらえたら一発なんだけど、そんなことは出来ないものね。


 ある程度距離を歩いていると隠れられそうな場所、木の根に室をを見つけた。二人入るとかなり狭いだろうけど、此処に隠れていてもらおう。クロエの足が限界になる前に見つかってよかったわ。

 一応魔物以外の動物が入っていないかを私が先に入って確認する。


「ここで隠れていて、私は薬草を見つけてくるわ」

「ちょっと待って、さっきの手当ては何!?」

「?」


 何と言われても、止血の手当てなんだけど、どう説明しろと言うのだろう?


「傷口に貼り付けた葉っぱのことだよ。あれはそこら辺に良く生えているものだろう?そんなものを貼っても大丈夫なのかな?とクロエは言いたいらしい」

「あ、ああ。サセモね。あれは止血の効果があるのよ。知らなかったの?あの場所から結構歩いたけど殆ど血は流れていないでしょう?効果があるだけで傷が治ったわけじゃないから、血は多少流れてしまうけど」

「…そうなんだ。じゃ、足首の固定は?」

「あのままじゃ歩きにくいでしょ?固定させたほうが安定するし、足首にかかる負担が少なくなるから。湿布…冷やせるものがあればよかったんだけど、水はあれでなくなってしまったし、持っていなかったから。あ、あまり足首を動かさないでね」

「……君は薬師を目指しているの?」


 何だかさっきから質問攻めなんだけど。こんなにも長く会話をするのはエミーリオ以外にないので、何だか嬉しくてきちんと答える。


 そうそう、薬師を目指しているかだったわね。


「私が薬師?全然。ていうか、無理だわ」


 嫌われ者の私に治療を任せるはずは無い。クロエの場合は同じ境遇と言うこともあり、ちょっと無遠慮に手を出したけど。そもそもこんな知識ぐらいで薬師が出来るはずはないもの。


 薬師とは、傷から風邪などの症状を薬草で治療する職業で町のお医者様である。もっと上になると魔法で治す治療士があるが、これは値段が桁外れに高く、商人や貴族といったお金を持っている人たちしか見てもらえない。そして王族専門には治癒士というのがあるらしい。

 言い換えれば、高額な医療代が必要になるほど光の補助魔法は珍しいと言える。


 そういえば、ランス神父も【ヒール】が使える光の補助魔法師なのに、どうしてこんな辺境にいるんだろう?紙で作られた本もとても貴重なものなのに、書庫には沢山あるわね。全部寄付とは思えない専門書もあるし、聞いてみたいけど、雰囲気的に前に住んでいた王都の話は触れて欲しくないみたいだから聞けないのよね。


「ルーシア?」


 またもや、思考に没頭していて固まっていたみたいで、クロムに怪訝な顔をされてしまった。さっき水龍にまで呆れられたばかりなのに、気をつけないと。


「ごめん、考え事をしていたわ。じゃあ、二人はこの中でジッとしていて、私は薬草を探してくるから」

「え?薬草?」

「うん、行ってくるね!」

「ちょ……」


 クロエが驚きの表情で私を引きとめようとしていたけれど、それを振り切って森の奥へと走り出した。その際にスモークとインディゴに影から警護を頼んで、シルバーは私についてきてもらう。


 さて、薬草はどの薬草にしようかな。ポーションの素になっているのはセサキとアカルバ、センカが主だけど…ポーションを作ることは出来るけれど、高額だから何故持っているの?と聞かれるから持っていくわけにはいかないし、だからといってあの傷を治す為には一つの薬草だけだと無理そうだしなぁ。


 暫く考えた後、三種の薬草の種を【錬成】で【融合】することにした。


「上手くいくかどうか分からないけどやってみよう!」


 【融合】は良く使う術の一つだから、魔法陣の書き方を覚えている。棒で地面に魔法陣を書くと三つの種を【融合】させてみた。


 ちなみにポーションの材料を知っているのは書庫の本に書いてあったからである。そしてその種を持っているのは、この大森林で見つけてあり、いつ彼らと遭遇してもいいようにとポーチに入れて持ち歩いているからだ。

 私の怪我はシルバーが治してくれる。


 出来上がった種を【サーチ】で確認すると『上質薬草の種』となっていた。


「やった!一発で成功だわ!これを【育成】で育てましょう!念のためにシルバーに【ヒール】をかけてもらいながら成長させたらもっといい薬草になるかもしれないわね。シルバーお願いね」

『きゅい!』


 薬草の成長はとても早いが発芽して数日で枯れてしまう。種子の期間が長いため中々見つけられず貴重とされる。三種のうちの一つがそれに当たるのだけど、上質薬草はどれぐらいで成長するだろうか?


 【育成】をかけること1時間弱で成長しきったようだ。一度魔法をかけるのを止めて葉っぱをある程度摘み取り、また【育成】をかけてからして種を取る。

 こんな素晴らしい植物になったのだから、保管しておかないとね。


 手にした葉にもう一度【サーチ】で確認するとシルバーに【ヒール】をかけてもらっていた所為か、さっきとは違う名前の『万能草の葉…治癒だけでなく状態異常にも効き目あり』となっていた。


「ん?レア度7…?…………もしかしてとんでもない物を作ってしまったのかな?ま、まぁ、効き目がありそうだから良しとしよう!」


 これは見なかったことにしよう!うん!


 【サーチ】の熟練度が上がって、初めのように私が知りえないことは名前すら出なかったのが、今じゃ、名前どころかレア度や性能すら出るようになっていた。

 レア度の最大は10らしい。

 それまでは『ユニーク』や『希少種』といったくくりとなっていた。


 さて、後は何処かの小川で水を汲むだけだわ。と辺りを見渡しながら歩いていると、丁度岩のくぼみに溜まった水たまりを見つけ、【錬成】で不純物を取り除いて水を汲み取ったところで、グレイから警告が発せられた。


 どうやら、双子に危険が迫っているようだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ