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12 スライム達がチートでした

16.05.16書き換えました。携帯小説の物語の中として設定を追加しています。



このガラム村はフロイド王国の端にあり、王国内で住める場所を確保する為に開拓地として10年ぐらい前に作られた新しい村である。当時は国の軍やら冒険者が溢れんばかりに派遣され森の一部であったこの地を更地に変えて家を立て畑を造ったみたいだけど、今は引き払っている。1年に1度ぐらい軍の偉いさんが様子を身に来るぐらい。冒険者たちも、小さいながらもギルドがあるが、辺境すぎて提示される金額が低すぎ、あまり寄り付かなくなった。ここにいるのは村人から出た冒険者ばかり。

村人の殆どは税金が払えずに無理やり連れて来られた人達だったりする。

色々と問題のある村だから、いつしか国も力を入れなくなったようで、開拓も余り進んでいないのが現状だ。


「そりゃ、力仕事が出来る軍や冒険者がいない、ただの村人が開拓なんて出来るはずないよね。自分たちが食べていくだけの畑を耕すのが精一杯だもん。まぁ、その辺境がうえに私は生かされているんだけど」


有事の際に生贄として、一つでも多く収穫できる人手が欲しくてなんだけど。


「【闇魔法】である【従魔】で魔物を従え倒した木を運んだり、【錬成】で建物を建てたり、【光魔法】の【育成】で農作物を育てたりすれば、もっと早くに小さな町ぐらいになったのだろうけど、【闇魔法】は禁忌だから中々上手くいかないんだろうね」


 そして二年続きでこのガラム村は不作が続き、食糧難となってしまう。国から支給されている備蓄も底をついて、更に酷いことに魔物に襲われ村は壊滅すると物語に書いてあった。

 魔物の襲来は、虐げられていた恨みからの『ルーシア』の仕業だ。


 食べ物がなく、体力的に衰えているときに魔物の襲来。為す術がなく殆どの人が死に絶える・・・・・・

 生き残ったのは僅か。


 私が魔物の襲来を計画しなくても、補正力で魔物が襲ってくるかもしれない。ということで、せめて生き残りを増やすべく、食物の備蓄を目指そうと思っている。


 しかし、この世界にはラーメンやレトルト食品というものはなく、長期保管できるのは小麦や小麦粉、塩等であり、固形物が少ないのである。乾燥させた野菜や果物はあるものの、一冬越せるぐらいしか持たず、いつも備蓄する前に無くなってしまう。


 その数を増やそうと秘密の畑にも力を入れるつもりだ。

 幸い私には【育成】と【錬成】があるから、根気よく作っていけばなんとかなると考えている。


 【錬成】があれば強固な砦も作れそうなのに、この国もガラム村も損をしているよね。


【闇魔法】を使えると分かれば差別が始まり、下手をすれば処刑されかねないこの国で、能力を持っている人は名乗りを上げることはないし、生きていたら別の国へと逃げていることだろう。


「これじゃ他の国との差は広がるばかりだよ」


【錬成】は基本、錬成陣を基にして作られる。でも熟練度が上がれば錬成陣なしで製作可能となる…って本に書いてあった。

私はまだ熟練度が低いから錬成陣が必要だし、小さいものしか作れない。それも【分離】と【融合】【拡散】ぐらい。

それでも、畑を作ったり家を補強する分には十分な能力である。


この力を使って私の家…もとい納屋は快適な空間となっている。雨風に強く、畳も順調よく出来上がり、靴を脱ぐ玄関っぽい所以外は畳となった。他にも色々と作って、納屋ではなく家と呼んでもいいぐらいに快適な場所なのだ。後はお風呂があれば文句なしなんだけど、狭すぎて無理。その前に、私には【火魔法】が使えないのでお湯を沸かさなければいけなく、隠れてするのは難しい。


「いつか、貧民層にもお風呂が行き渡るようになって欲しいなぁ」


等と、色々一人で呟いているのは、実は現実逃避。目の前の光景から逃げたくて…


あれから日数が過ぎ季節は冬となり、秘密の基地?も種の保管場所に、近くの小川から水路を引いて水場も作り、準備万端となっている。そろそろ実験を開始してもいいのかもしれないけど、先にスライム達のレベル上げをしようと大森林に来ているの。ついでに私の弓の熟練度も上げようとしていたんだけど…どうやら私の出番は無いみたいなのである。


森の深くまで【転移】でこれるようになって、グレイの【ソナー】で魔物を探し、弱そうな魔物を見つけたのはいいんだけど、さあ、私も本格的な狩よ!と息巻いていたのに、私が弓の準備しているうちに、スライム達が出動してしまった。

見つけたのはゴブリン5匹の集団。こちらに気づかれる前にパープルとインディゴがあっという間に2匹をやっつけてしまった。パープルは石を持ち上げ、ゴブリンの頭上に落とし、インディゴは草を錬成して絞め殺したのである。

仲間をやられてようやく気が付いたゴブリン達がこちらに向かってくるのを、スモークが何度も幻影を使って撹乱し、残りのスライム達で体当たり中。逃げ惑うゴブリンにパープルは石の雨を降らし、インディゴは草でゴブリンたちの足を引っ掛けて転ばしている。

シルバーは体当たりで傷ついたスライム達を【ヒール】で癒しつつも体当たり……


何、この連係プレイは!?私、教えていないんだけど?つーか、スライム達強すぎでしょう!!ゴブリン達を翻弄しているし、どこか面白がって遊んでいる節もある。

スライムがゴブリンに勝つなんて、この世界の常識じゃ当てはならない。


ゴブリンの悲鳴を聞いて近くにいたのだろうゴブリン2匹も駆けつけてきたが、遊ぶのを止めたスライム達にあっという間にやっつけられた。


「…スライムが………スライムが、チート……転生者である私を押しのけて…スライムがチートになったぁ――!……私、出番なし……」


数々読んでいた転生物の携帯小説とかけ離れた現実に目を背けたくて、私でも少しは役に立つんだよ!と先ほどのこと考えていたのである。


「一番いいのは普通だよ。普通はいい!でもちょっとは勇者や英雄、成り上がりのようなチートがあればいいなぁ…なんて前世では思っていたさ!私じゃ無理なのは分かっていたけど、目の前でやられると…ショック……」

『(どうしたの、ご主人様?僕達レベルが上がったよ。パープルとインディゴは一番活躍したからレベル5に、僕とシルバーは4に、そしてスモークは3になったよ)』


褒めて褒めてと寄ってくるスライム達。


「凄いね、君たち。君たちを【従魔】に出来て私は嬉しいよ。レベルアップおめでとう!」

『『『『『きゅう!!』』』』』


笑顔で褒めてあげたいけど、ゴブリンの返り血を浴びているので、顔が引きつってしまう。まぁ、それでも喜んでいるのだから、いいかぁ。


「それよりも、その返り血を洗い流さないとね」

『(あ、忘れていました。大丈夫ですよ)』

「え?……」


グレイはそう言うとあっという間に返り血が体内に吸い込まれ綺麗に無くなった。他のスライムも同様である。


『(ゴブリン達の死骸も処分しますね)』


そう言って、それぞれがゴブリンに被さっていき、体内に吸収している。レベルが低かったスモークと上がりにくいだろうシルバーは2体づつ吸収し、各自またレベルアップしたようだ。

どうやら、魔物をやっつけて経験値を貰い、魔物を吸収することでレベルも上がるようである。

食べることでレベルが上がるのはスライム固有能力だと後でグレイが教えてくれた。底辺であるスライムが上位の魔物をやっつけることが出来る訳ないので、このような能力が付いたらしい。なるほどねぇ。生き残る為の本能なんだ。


ちょっとまって、感心している場合じゃないよ!まだHPもMPも私のほうが上だけどレベルは…すでに2匹のスライムに負けているじゃん!これって主人の対場なくなるんじゃないの?


『(ご主人様は指示を出してくれるだけでいいんです。僕達はご主人様の【従魔】なんですから。【従魔】になった僕達にはご主人様のレベルは関係ありませんよ)』


微妙な顔をしているとグレイが察して慰めてくれるんだけど、なんだか、グレイが優秀で保護者の立場も危ういような。彼らがそれでいいのならいいけど。でも、もっと私も頑張らなきゃ。出来ることからやっていこう!

ということで、彼らのレベルも上がったし、本当ならもう少し上げたいけど、MPは時間が立たないと回復しないので、今日は此処で切り上げ、秘密の畑で実験をしようと思う。


「レベル上げはまた明日にして今日は帰りましょう!」

『『『『『きゅ!』』』』』


レベルの上がった彼らの能力は、グレイが【ソナー】の探知範囲が広がり、インディゴは一回り大きなものを作れるようになった。パープルは自身の重さも変えられるようになり、スモークは幻影時間が延びた。そしてシルバーはレベルが上がっただけである。やはり想像していたように光属性の能力は成長が遅いようだ。レベルが上がって【ヒール】の魔法が使える回数が増えただけでも十分だと思える。

だって、私は一つも上がっていないのだから・・・くすん・・・


でも、私も彼らに負けていないのよ?

森に作った【転移】の設置場所は既に50個を越えており、連続して【転移】しても魔力は余裕で余っているんだからね。……ううぅ、なんだか虚しい。



チートなスライムと比べて落ち込んでいるが、ルーシアも十分チートである。大抵の人間は一つの属性しか持っておらず、二つ持っていると重鎮される。三つだと国に保護されるほど珍しいのだ。ルーシアは【光】【闇】【無】と三つ。これが世間に知られると大騒ぎである。それもそれぞれの属性が滅多にあらわれることがないという属性ばかりが三つ。下手をすれば国と国との取り合いとなるのを知らない。まして、ルーシアの操る魔法の威力も強力だということも。



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