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10 可愛くてもスライムは魔物でした。

16.05.14大幅に書き直しました。大きな設定を追加しましたのでかなり変わっていると思います。申し訳ありません。



あれから数日がたち、弓の練習をしつつ弓自体の改良も進み、前よりも放ちやすくなった。

そもそも弓自体もTVの見よう見まねから【錬成】で作ったもの。本業さんにはかないません。弓のそりの角度や素材も変えて練習した結果、飛距離と威力が少し上がったみたいなので、再び大森林へ。

 エミーリオの鍛錬も必要だけど、私も先のことを考えると武器があると便利なの。

 午前中にエミーリオとラジオ体操をして教会の裏で鬼ごっこして遊び、畑仕事をした後に大森林へと向かうのが日課になりつつある。

 初めはエミーリオも行き成りの鬼ごっこに面食らっていたけど、やはりまだまだ子供。鬼ごっこは楽しいみたい。

 鬼ごっこが鍛錬!?と思われるでしょうが、子供の遊びをなめてはいけません!タッチされないように逃げるのも、かなりの運動量を必要とするし、瞬時に避ける能力も養われるんだよ。

 お陰でこっちもへとへとになる。だけど、流石は子供の体!少し休めばまた動けるようになるんだよねぇ。30代の頃と比べものにならないぐらい元気である。


 日課になりつつある大森林の探索の目的は、とあるスライムを探すためである。


「どうしても欲しい能力があるんだよね」


 そのついでに【錬成】で使える素材や食料になる食材探しもやっているけど、なかなか欲しいスライムに成長しないの。


 エミーリオにはこれからは、畑の作物を適当に食べているから、遠慮せずに先に食べてねと言ってあるので、多少遅くなっても大丈夫。今日こそは見つけるつもりだ。

 と意気込んでいるが、失敗が続くと本当に存在するのかな?と疑問を持ってくる。


魔力吸収によって成長するアメーバーは色々なスライムへと進化する。私が現在使えない魔法であっても、何かの拍子に生まれるかもしれないのだ。


それに期待しつつアメーバーを見つけるたびに魔力を与え、上手く成長せずに爆発させていまい失敗。それをもう数十回繰り返している。


「やっぱり、難しいのかな?変身能力を持ったスライムって。そもそもいるかどうか分からないし…」


でも、サーチスライムってこの世界ではグレイしかいない。私から生まれたスライムだもの、いなくても根気よく続けていればその内生まれるかもしれないものね。


そう、私が求めているのは変身能力を持ったスライムである。もし私自身が見た目と違った姿になれるのならば、色々と便利になり、未来回避に動くことが出来るのだ。

スライムの従魔が増えると【従魔の闇魔導士】に近づことになるだろうけど構っていられない。


スライムを見つけ魔力を与えるという作業を、そう、作業となっているのを無心で繰り返し、十数回目でようやく成功したと思ったら


【グラビティスライム…希少種】


なにやら変り種が生まれた。どうやら重力を操るスライムらしい。もちろん【従魔】の魔法を掛けてお友達になりました。名前は。


パープル【グラビティスライム】…希少種

HP…12

MP…15


紫色のスライムだったから、安直で…安直過ぎるんだけどね。こちらでは言葉が違うから色の名前だなんて分からないしね、いいでしょう!


「よろしくね、パープル」

『きゅい!!』


パープルは喜びの声を上げて一番後ろに付いた。その際に他のスライム達から『きゅきゅい!』と歓迎を受けている様子。新人もすぐさま仲間に入れてくれるとは、私のスライム達はなんて心優しい子達なんでしょ。

灰色に銀色、濃い紫に紫と、ちょっと暗めの色なんだけど、楽しく跳ねている様は癒される。

魔物なんだけどね。可愛いから許す!

だけど、この調子で増えていくとスライムの国が出来そうだわ。なんて、ほのぼのと考えていたんだけど、私は甘かったです。彼らは魔物でした。はい。


何度かの挑戦でまたスライムが生まれたんだけど、2匹目のサーチスライムだった。目的のスライムじゃなくてほんのちょっと残念な気持ちになりつつも、お友達にしようと【従魔】の魔法を掛けようとしたところ、グレイが突進してきて、サーチスライムをパクリと…食べちゃったんです!!


「は…?へぇえっ!!??」


驚きすぎて素っ頓狂な声が上がったけど、それは許して欲しい。だって、仲間が増えるたびに仲良くしていたスライム達だったから、今回も仲良くしてくれると思っていたの。それなのに、パクリと!口が何処か分からないけど、グレイがサーチスラムに覆いかぶさるように包み込んで、風船の中に風船があるような感じで・・・中の風船が段々と、いやスライムが小さくなっていくんだもの。驚くなと言われても無理!色々驚きすぎて…


「どゆこと?」


ごっくんしてしまったグレイを持ち上げて、2匹目のサーチスライムの影を探すが、あっという間に消化してしまったのか、なくなっていた。


『きゅ、きゅきゅいきゅうう~、きゅい?』(だって、ご主人様の為に強くなりたかったから、駄目だった?)


最近じゃ、繋がりが強くなったのか、スライム達の言葉が分かるようになってきている。

はっきりと分かるのはリーダーを務めているグレイだけなんだけど。

駄目だった?と小首をかしげるように、重心を傾けて歪む楕円形の体……うぅ~~~~なんて可愛いの!!


「ぜ、全然駄目じゃないよ!ただ吃驚しただけだから」


何度も言いますが、可愛いから許す!

でも、今までこんなことが無かったのにどうして?それを聞くと、


『(もっている魔法の力を上げるには同属を取り込んだほうが早いからだよ)』


と言う答えが帰ってきた。そういや、この子達の魔法がどのようなものか知らなかったわ。今後の為に検証をしておいたほうがいいだろうと、グレイに【サーチ】を唱えようとしたら。


『きゅきゅう!』(皆隠れて!)


グレイが切羽詰った声で鳴いた。


「え?隠れてって、何?」


急に言われても何がなにやら。

動けなかったのは私だけで他のスライム達はグレイの指示で、木の影や葉っぱの影に隠れてしまう。そして一拍後に、今まで優しい日が照っていたのに影が出来、暗くなったいた。


「え?え?」

『(ごめんね)』


グレイは先に謝ると、私の手から降りて体当たりしてきた。その衝撃で私の体とグレイは木陰に入る。その際に、空を見上げる形になったのだけど、お陰でしっかりとそれを目撃できた。


「うわ~……っ、りゅうだぁ」

『(静かに!)』


あの有名な想像上の生き物を目の当たりにして、恐怖よりも先に感動が来てしまい、グレイからお叱りを頂いた。そりゃ、あんなのに見つかったら私達なんてひとたまりも無いだろう。怒られて当然だ。


グレイをお腹の上に乗せたまま立ち去った後も、私はポカンと口を開けたまま動けなかった。


『(大丈夫?ちょっと、強く当たりすぎたのかな?)』


グレイが私を心配してくれているけど、


「違うよ。感動していただけ、そして今頃、恐怖が襲ってきているだけだから、時間が立てば大丈夫」


『りゅう』があんなに大きいものなんて知らなかった。40メートルはあったんじゃない?

剣と魔法の世界に転生して出会う『りゅう』は『ドラゴン』だと思っていたけど、あれは『龍』だった。翼の生えた巨大なトカゲ型じゃなく、細長くて蛇のような東洋の『龍』である。

 迫力あったなぁ…間近で見るのは怖いかも知れない。でもあの龍は…もしかして…


「あの龍もやっぱり魔物だよね?」


『龍』は場所によって神様と同格扱いされていたんだけど、こちらでは退治されるべき魔物なのかな?それをスライム達に聞くと、生まれて間もないというのに本能が知っていたのか、教えてくれた。


『(違うよ。魔物は魔物でも龍はこの地を守ってくださっているんだよ)』

「でも、さっきは逃げたでしょ?」

『(脅威となる魔物の間引きをしてバランスを整えてくれているんだけど、僕達は弱くても希少種ばかりだから、念のために隠れたんだよ)』

「そっか、教えてくれて有難う」

『きゅぅい』(どういたしまして)


あんなに綺麗で神々しい龍が、人に害をなし驚異とされて退治されるのは残念だな。と思っていたのだが、この世界でも神のような存在だと知り、ちょっと混乱する。


別の龍かもしれないよね。うん!そうだ、そうだ!と無理矢理納得させようとしたけど、魔物にとっては地を守る存在であっても、人間にはそうでないのかもしれない。

あんなに綺麗な龍が…と残念に感じつつ釈然としないのだけど、感情を切り離しこの時はそれで納得することにした。


それよりもスライム達だ。

 スライム達が(ご主人の為に強くなりたい)という可愛い願望を聞いたからには協力してあげたくなり、その為に同種になるように進化させていき、気づけばそれぞれのレベルが上がっていた。


【サーチ】の魔法を意識してアメーバーに魔力を注げば割と簡単にサーチスライムになり、それをグレイがパクリ。他の子たち用にアメーバーを進化させては同じ種族だとパクリ……

気づけば5匹ずつ食して均等にレベルが3に……


嬉々として同種族を捕食していくスライム達を見て、これって本当によかったのだろうか?


『きゅいいぃ!』(レベル上がったよ)

『『『きゅう!』』』(((おめでとう)))


四匹が和気藹々とぴょんぴょんと跳ねている様は、魔物とは思えないぐらいに愛らしい。

 まぁ、可愛いからいっか!(こればかり。でも本当に可愛いのだ)


レベルが上がっているとはいえ、平均のHP16という弱小のスライムだし、村の脅威にはなりえないだろう。それに私の言うことはきちんと聞くから、勝手に動いて人を襲うってことはしないので、あんまり心配していないけどね。


その後、スライム達の能力を検証した結果。


サーチスライムであるグレイは60メートル範囲の生物(虫等小さいものを除く)の位置が分かるらしい。私の【サーチ】能力と違い探索ソナーの能力を持っているようだ。

そして、ヒールスライムであるシルバーは、その名の通り【治癒】が使えるみたいで切り傷程度なら治せる。これはグレイに体当たりされた時に木の枝で傷を作っていたようでそれを治してもらった。グレイは(ご主人に怪我をさせてしまった~~っ!)とかなりへこんでいて、慰めるのが大変だったよ。小さな傷ぐらい別に気にしていないのに。本当に従魔は主人に忠実で逆に大丈夫かな?と心配になるぐらいのへこみようだった。

次は錬成スライムのインディゴ、この子は物質を変化させることが出来るようで、大きさは30cmまで。土を石にしたり、蔓で繋ぎ目のない輪を作ったり出来る。簡単なことしか出来ないようだけど、何気に凄い。

最後はグラビティスライムのパープル、この子は5kgまでの物体を持ち上げることが出来る。試しに石を浮かしてもらったら、かなり上まで昇っていき、能力の範囲以上に上げた為、突如落下。地面に叩きつけられた石は数個に割れた。それを見た他のスライム達は(凄いね!)と喜んでいたけど私は中々の威力に絶句してしまった。

5kgって割と重いよね?1リットルのペットボトル5本分なんだから。それが5,6mの高さから落ちてきたら、下手すると死んじゃうよ?


ここにきて、普通に生きている人間には太刀打ちできない能力を持っているスライム達が本当に魔物なんだなぁと実感した。

私に対しては可愛らしく忠実なんだけど、他の人間に見つかったら本当にやばいことになりかねない。私はマジで慎重に行動をしなければいけないんだ。


これは何が何でもあの能力…変身能力を持っているスライムが欲しい。

もし、もしもよ、他者を変身できるような能力ならば、私の行動範囲は広がるし、珍しいスライムを率いているのを誰かに見られても私だとばれないもんね。


そんな淡い希望を持って1週間連続で大森林を探索しまくった。破裂させたアメーバは300匹を軽く越え、諦めかけた時、ようやく変身スライムに進化したのを知って、危険である大森林だというのに大声で喜びを表してしまった。その瞬間にスライム達によって押さえつけられたんだけど…


え?ちょっとまって、私ってご主人様よね?グレイあなた、私を傷つけてしまってかなりへこんでいたよね?それなのに、ご主人様を押さえつけるってどういうことよ?それにいっせいに非難の目で見ないでよ。


「ごめんなさい。私が悪いんです」


ご主人様の為にやったことなのにと、拗ね始めたスライム達に謝ってようやく許してもらった。


なにはともあれ、変身スライムを手に入れてその日は超ご機嫌で帰宅した。


ふふふ、これで行動範囲が広まるわ。まずは資金を稼ぎましょうか。待っていてね。エミーリオ、プリンはもうそこよ!




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