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メイドさん

ところで母親が電話らしきもので呼ぶ相手は誰か。


メイドさんだった。


生まれ変わってよかったと思った。


母親が呼ぶのは生まれた日に見たおばちゃんと二十歳位の今の俺から見たらお姉さんと五歳位のこれまた俺から見たらお姉さんだ。


可愛い。いや、おばちゃんは肝っ玉で強そうな普通のおばちゃんなんだけどお姉さん方二人が可愛い。


上のお姉さんは凄い柔らかそうな印象だ。少したれ目で髪はブロンド。いつも微笑みを称えている様子はまさに女神。抱き上げられたときは幸福感に包まれた。印象や物腰だけでなく質感も柔らかかったことはここに別記しておこう。


そういえば、ユースティアは女神なのだろうか。影だけだったからわからん。


下のお姉さんは五歳だから可愛い系だけど大きくなったら美人さんになりそうな子だ。燃えるような紅い髪につり上がった目。メイド服を着ているのをみるとあまりにお嬢様のような見た目との差に違和感さえ生まれる。似合っていないわけではない。ギャップ萌えというやつだ。


ってか俺の今の立場的には年上だけど五歳の子が俺のお姉さんというのはやっぱり違和感があるけどあえてお姉さんと呼びたい。姉という存在に憧れがあるのだ。さすがに上のお姉さんは姉と呼ぶには年の差が大きすぎるが下のお姉さんはまさに理想のお姉さん。


……ちょっと愛が大きすぎたな。お姉さん言い過ぎた。


そこでふと、こんなことは前世ではあんまり考えなかったなと思い出した。あんまり女性というものに関わらせてもらえなかったせいで四十になっても扱いが苦手だった。そもそも関わろうとしなかった。世の中にカップルはたくさんいたが自分には出来ないし興味もないと思っていた。


しかしどうだろう。今世では美しい女性に目が奪われる。


もしかして、と俺は思った。


確かにユースティアは言った。俺に俗物だと。


つまり、俺の不満は女性と関わってこなかったことにあったのではないだろうか。


つじつまは合う。前世では一度たりとも積極的に関わろうとしたことはなかったし、死ぬときでさえも思い付かないくらい失念していた。


俺だって人間だったのだ。性欲に気づかなかっただけ。


そこまで考えて俺は決めようと思った。人生の目標ってやつを。


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