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比呂川マモルはどこにでもいる高校一年生の男子だ。
ただその光り輝く金髪を除けば。
地毛ではない。生粋のジャパニーズである俺の地毛は黒である。突然変異でもない。
事件が起きたのは三週間前のことだった。
「高校デビューにトライしよう」
気まぐれなノリで、近所の慣れ親しんだ床屋ではなく、普段は行かない美容室に行き――そして案の定失敗した。
個人的にはかなり気に入っていたのだが、両親からは笑われ、友達からは諭され、幼馴染からは酷評された。皆が皆、『似非ヤンキー』と笑った。
釣られて俺も笑った。散々笑って、心の中でちょっぴり泣いた。
それならそれで、黒に染め直せば良いだろうと、賢明なる読者諸賢は呆れるかもしれない。しかし、一度は『ナウでヤングな正義と悪を併せ持つ黄金の輝き。これよ、これ。めっちゃ強そう』と心躍った手前、そこから逃げてしまうのは潔さがないのだ。
誰に対してでもない自分に対するプライドの問題で、テンションが上がった本当の自分を裏切れないのだ。そういうどうでも良い所で我を通すのが、俺の悪癖の一つだった。
結局俺は光り輝く頭のままで、見事念願の高校デビューを果たしたのだった。
が、それは散々なものであったことは、改めて言うまでもないだろう。
明らかに一人だけ浮かれきったバカがいる。そんな噂が瞬く間に学年に広まり、学校に拡散されて、職員室にまで轟き、もちろんそれは幼馴染の耳まで届いた。噂を聞いた幼馴染は大暴れした。
「マモルを馬鹿にしていいのは私だけだ!」
とかなんとか。正直、それもどうかと思う。
結局、その仲裁に入った俺まで巻き添えを喰らい、その事件以降もっと微妙な目で見られるようになってしまった。
特に、異性から。
悲しい現実だ。しかし、現実はいつだって哀しい。
結局部活にも入り損ねたので、自然放課後は暇だった。だから、うら若き益荒男が、半値以下に成り下がった青春を炉にくべて、今日も今日とて趣味の炎を燃やすのだ。
斯くして俺の青春スタートダッシュは、桜の花びらと一緒に儚く散ったのだった。
本当、どこにでもいる、男子高校生のお話である。