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交点の烈~戦士の休息~  作者: 河野 る宇
◆第16章~その言葉は言わないで
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*エピローグ

「ただいまぁ~……」

 ナユタは力なく自宅の扉を開くと、目の前に母が立っていて少し驚いた。

「おかえりなさい」

「う、うん……」

 怒っている訳でもなさそうな表情に、戸惑いながら靴を脱いでリビングに向かう。

「で、どうだったの?」

「えっ!?」

 何を訊くんだこの母は!? 突然の問いかけに、思わず声が裏返ってしまった。

「高級ホテルだったんでしょう? いいわねぇ~」

「え? ああ、うん」

 なんで知ってるの……!? って思ったけど違うな、アユタが適当に付けた理由が偶然ピッタリだったんだ。

「お料理とかよばれたんでしょう?」

「うん、美味しかったよ」

「やっぱりベッドは高級羽毛?」

「フカフカだった」

「お母さんも一度、泊まってみたいわぁ……」

 と溜息を吐いてキッチンに向かう背中に、ナユタはホッと胸をなで下ろす。

 弟はどんな伝え方をしたんだ? って初めはびっくりしたけど、上手く騙してくれて助かった。

「ところでナユタ」

「なに?」

 飲み物を取ろうと冷蔵庫の扉に手をかける。

「ベリルさんとはどうだったの?」

「!?」

 炭酸飲料のペットボトルに口を付けていたナユタは、軽く吹き出した。

「……え」

 少ししか含んでいなかったため大事には至らなかったが、手の甲で口を拭いながら母を見やる。

 すると、母の表情は今までにない真剣なものだった。

「あなたはもう大人だから、ぐだぐだ言わないけど。後悔するようなことだけはしちゃだめよ」

「……うん」

 力なく応えた娘に少しだけ睨みを利かせたあと、いつもの明るい母に戻り嬉しそうに発した。

「それでねぇ~、ベリルさんまた来るかしら?」

「え?」

 たぶん、もう来ないよ……と口の中でつぶやくと、母が続けて付け加える。

「これ、お返ししなきゃ」

「!?」

 パタパタとリビングのクローゼットから取り出したものに、ナユタは声を上げそうになった。

 広げられてはいないが、手の上に折りたたまれたものが何なのかはすぐに解った。

「お母さんが預かっておこうかしら」

 とちらりと娘を一瞥する。

「……あたしが! あたしが、預かっとく」

 半ば奪うようにして手の上の下着を掴んだ。

「……」

 なんで女2人が男性の下着を奪い合わなくちゃなんないのよ! 手の中の布を見つめ、急ぐように自分の部屋に駆け上がる。

 ドアを閉めると、タンスの引き出しに押し込めようとしてパタ……と手を止めた。

「ベリルの……。ハッ!? あたしってば、なに考えてるのよ!」

 ギュッと押し込むように仕舞い、引き出しを閉じる。

「あ、そか……これを口実にまた会えるかも?」

 携帯を手にして思案した。

 メールにするべきか、電話をかけるべきか──


「!」

 滞在しているホテルに戻ったベリルは、バックポケットから振動している携帯を取り出す。

<下着、預かってるよ>

「……」

 その文字に眉をひそめた。



END

*最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。

 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 なお「野いちご」では、冬芽さまとのコラボ作品です。

 是非、ナユタ視点の冬芽さまの作品もご覧下さい。

 http://no-ichigo.jp/read/book/book_id/377029


※作中に登場する那由多、阿由多、母、ミコ、柳田の5人は冬芽さまのキャラクターです。これらのキャラクターは冬芽さまの著作権下にあります。

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