4/47
*溜息の余韻
バカらしい相手だが、現実に誰かが囚われの身となっているのなら助けなければならない。危険な思考の持ち主もなんとかしなくては……ベリルの口から何度目かの溜息が漏れる。
長年、生きてきたがこんな事例はなかなか珍しい事だった。そう思うと、自然と笑みが浮かぶ。
飽きる事などあり得ない。世界は日々、動き続け新しい出来事が生まれている。
『人の世とは、かくも儚くあり確たるものにして移ろいやすし』
そう謳った奴がいたな……と、思い出す。
「はて? 何十年前に聞いたかな」
1人とぼけてつぶやいた。
それだけの年月を生き、それだけ彼は戦い続けた。傭兵として多くの人々を救ってきて、不死者であるために多くの人々から狙われもしてきた。
『不老不死』という特殊な存在であるが故に、彼はあらゆるものを背負いここにいる。
「彼だからこそ耐えられているのだ」
彼を知る誰かがそう発した。永遠を生きるなど、この未熟な精神が耐えられるはずが無い。
人類の夢である不老不死──皮肉な事に、心がそれに耐えられないと言う。