*涙のワケ
「!」
「ごめ……なさい」
「何故、泣く」
思ってもみない彼女の反応に、ベリルは当惑気味に発した。
「だって……あたし、あなたに迷惑ばかりかけて……アユタみたいに賢くもないし。今だって……」
今までの感情が堰を切ったように溢れ出して涙が止まらない。迷惑かけたくないのに、こうして今も迷惑かけて……ぐるぐる回ってどうしていいか解らない。
そんな彼女を見つめてベリルは小さく溜息を吐き、顔を近づけ頬と額にキスをした。
「私は迷惑だとは感じていない」
良く通る声と柔らかなエメラルドの瞳──そして、その温もりが彼女の緊張を解きほぐし、固まっていた手がするりと落ちる。
「お前にはお前の力がある。比べるものではない」
彼女を見下ろし、静かに語る。
「あたしのチカラ? あなたに迷惑かけたこと?」
「迷惑だとは……まあ良い」
言葉を切ってナユタの頭を優しくなでる。
「比べるならば己の違いを探す事だ」
「違うところ?」
「同じものを競うのではなく、違いを探し活かす方向に向けると良い」
そういう方法もあるのだから……と、つぶやき再び額にキスをして立ち上がった。
「おやすみ」
ナユタの耳に彼の声が聞こえて、遠ざかる気配に瞼を閉じる。
「おやすみ、なさい」
ナユタが応えると、ベリルは小さく笑んで部屋を去っていく。
そのドアをじっと見つめて、心臓に手を当てた。その鼓動は、まだ激しくナユタに動揺を与えている。
間近にあった瞳はいつもよりキレイに見えて、頬や額に触れた唇も柔らかく……肌もすべやかなのにしっとりしていて、吸い付いてくるような若々しさがあった。
ホントにいま何歳なんだろう? と考えずにはいられないが、やっぱり訊きたくない気がする。
「う……なんでかな。なんかちょっと悔しい」
あたしの方が若いハズなのに! 別の涙を流しつつ眠りに就いた。





