*2人きりの時間
「あれはガードだ」
「ガード?」
事情を聞き、ベリルは彼女の部屋からその影を確認する。
「私がよく使う警備会社の者でね。日本にも支部があった」
1人では守りきれないと感じたベリルは、警備会社に電話を入れてガードを雇っていたのだ。
「日本は動きづらい」
そう言って小さく溜息を漏らす。
「あ、これ」
ナユタは思い出して紙バッグを差し出した。ベリルはそれを受け取り、デスクを一瞥してナユタに目を移した。
「借りるぞ」
「あ、うん」
ベリルは椅子に腰を落とし、バッグに入っていた物を取り出していじり始める。
黒く長細い物体をしばらくいじると、それは今度は縦に分裂した。分裂したと言うのは間違いかもしれない、正しくは片方だけが開いてパカパカする感じだ。
開かない方には、なんだか所々にタコの吸盤みたいなのがついていた。さらに3ヶ所ほどからベルトが出てきて、彼はそれを腕に巻き付け確認するように眺めている。
そして腰の後ろから銃を取り出し、デスクの上に乗せ右腕に巻いている装置から筒状のものを取り外した。
デスクに置いていた銃を手にして、その筒状のものを銃口にあてがいクルクルと動かすと固定される。
「あ、それサイレンサーとかいうの?」
「そうだ」
ナユタは、テレビで見た事のある形状にようやく納得した。
確認し終えるとサイレンサーを外して装置に戻す。それを見てナユタは窓から見える影をチラリと横目に、視線をベリルに向けた。
「でも、あんなに目立って警察呼ばれないの?」
「事前にいくつかの派出所に連絡は入れている」
「! そうなんだ。でも隠れて警備すればいいんじゃ?」
その問いかけに、彼は手を止めてナユタを見上げる。
「意図的にする事で相手への威嚇と牽制を行っている」
目的は対象を護る事で、捕まえる事ではない。
「捕まえた方が楽な気がするけど」
「それでは犯罪は減らんよ。重要なのは罪を犯させない事だ」
「……そか」
足を組んで小さく笑みを浮かべる姿に気を取られて、彼の言っている事は半分で聞いていた。
「!」
立ち上がった彼に、この幸せの時間の終わりを告げられた気がしてちょっと哀しくなる。
ドアに向かうベリルの邪魔をしないように後ずさりしたら、後ろにベッドがあるというのにそのサイズを把握出来ていなくて足を捕られた。
「キャッ!?」
「!」
ベリルが思わず手を差し出すと、わざとじゃないがむしろグイと引っ張ってしまう。ベリルは、バランスのとれない体勢になり一緒に倒れ込んだ。
「ごめんなさい!」
お約束すぎるネタに、ナユタは顔を赤くした。
「わ、わざとじゃないんです……!」
「離してくれんかね」
ナユタががっちり腕を掴んでいて、ベリルは当惑した表情で発する。
「ああっ!? ごめんなさい」
と謝るが、その手を離そうとしない。否、離せない。
「う、なんか固まって……」
緊張のせいで手の力が緩められないらしい。
「ゆっくりで良い、焦るな」
「は、はい……」
うう、あたしのバカ! ナユタは、なんだか自分が情けなくなってきて涙がこぼれた。





