*就寝時間です
その後、風呂から上がってきたナユタが揃うと、母はフルーツを切り始めた。それを見たベリルが立ち上がり、すいと手を出す。
「あら、いいのよ。お客様はゆっくりしてて」
「2人でやれば早い」
未だ湿気を帯びた髪が、母の頬さえも赤らめさせる。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えようかしら」
そう言って、もう1本の包丁を手渡した。
フルーツはリンゴとキウイがあり、ベリルは躊躇することなくキウイを手にする。
「あらあら、包丁も上手いのねぇ」
あっという間に皮を剥き、切り分けるその手際の良さに母は感嘆した。切り分けられた人数分のフルーツボウルをトレイに乗せてリビングに運ぶ。
さすがのアユタも母の前では彼の仕事関係の質問は出来ず、黙々とフルーツを食べていた。
「ベリルさんはどこにお住まいなの?」
「オーストラリアに住んでいます」
「そうなの~」
「オーストラリア行ってみたい!」
「世界一の一枚岩があるとこですよね」
「うむ」
ベリルは柔らかい笑みを浮かべた。
きっと彼は、オーストラリアがスゴク好きなんだな……ナユタはベリルの表情に自分も笑顔になった。
9時を少し過ぎた頃、アユタは眠くなってきたのかあくびを繰り返すようになる。
「ほらほら、もう寝なさい」
母が息子の背中を叩く。
「ん~……ベリルと寝る」
「あらまあ。すっかり懐いちゃって、ごめんなさいねぇ」
「いえ」
裾を掴んで離さないアユタに、彼は苦笑いを浮かべた。そして、眠気でフラフラになっている少年を抱きかかえる。
歯はすでに磨いているため、そのまま2階に上がっていく。
「あたしも寝る。おやすみ母さん」
「はい、おやすみなさい」
階段を上り、案内を待っているベリルに近づいた。
「アユタの部屋はそっちね。ベッドは買い換えなくすため大人用だから」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
彼がアユタの部屋に吸い込まれるのを見て、彼女はまた口の中で舌打ちした。
くっ……いいなアユタ、一緒に寝るんだ。
弟に嫉妬する自分が少し情けなく思いながら部屋に入り、溜息を吐きつつカーテンを閉じようと窓に近寄る。
「!」
外に視線を向けると、こちらを窺う影が2つある事に気づいてビクリと体を強ばらせた。
こんな場所に男が2人も立っているなんておかしい……居ても立っても居られず、足早に部屋を出ると、隣にあるアユタの部屋に向かう。
「どうした」
ノック音で出てきたベリルが、不安げな面持ちの彼女を見下ろした。





