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交点の烈~戦士の休息~  作者: 河野 る宇
◆第13章~家族
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*羨ましいぞ弟よ

 まず、前開きのシャツを脱ぐとショルダーホルスターが顔を出す。

「わお」

 アユタは小さくつぶやく。

 次にしゃがみ込み、両足首にあるアンクルホルスターを外していく。左のホルスターにはデリンジャーと呼ばれる小型の単発銃が、右には小さなナイフが収められていた。

 それを外すと、次はバックルに手をかけてベルトを外しパンツを脱いで軽くたたむ。そして、ベルトに装着されているバックサイドホルスターがちらりと覗いた。

 装備を全て外し、少し周りを見回す。

「あ、ここに入れておけば大丈夫だよ」

 アユタは、脱衣カゴの下にあるスペースを示した。

「そうか」

 それらをシャツでくるんで、押し込むようにして仕舞う。そのあと、下着インナーを脱いでバスルームに滑り込む。

 体を洗うため風呂桶に湯をすくい、少しずつ浴びる。

「さすが鍛えてるね」

 ベリルの体に口笛を鳴らした。

「ねえねえ、デザートイーグルの反動ってスゴイ?」

 きかん坊の弟を扱うように、グイと引き寄せてからだを洗ってやる。

「そんな事を知ってどうする」

 洗っている間も質問攻めに合い、ベリルは少しうんざりした。


「……」

 ナユタは、なんとなく気になって風呂場の前でふと立ち止まる。

 なんなんだろう、この悶々とした感覚……女にもこんな感覚あるのか。と、自分の思考に呆れるばかりだ。

「はいはい、どいて」

 そんなとき、母が嬉しそうに替えの下着を持って脱衣場の扉に手をかけた。

「!」

 ナユタは、その下着を見てあっけにとられる。

「下着ここに置いておきますから~」

 という母の声のあと、風呂場の中から「すみません」とガラス越しのくぐもった声が聞こえた。

「今の下着……」

 脱衣場から出てきた母に発すると、彼女は少し照れたような嬉しそうな顔をした。

「お父さんがボクサーパンツ使ってて良かったわよねぇ」

 などと言いながら、キッチンに足早に消えていく。

「そうね……」

 ナユタには、もうそれしか言えなかった。

 あれは予備に置いていた父の下着だ……まあ、新しい下着を出すしかないから仕方ないけど。

「確かにそうよね」

 彼がブリーフとかだとちょっと嫌かも。だからってトランクスっていうのもね……と母の言葉を思い起こし、納得するように扉の前で唸る。

「何やってんの姉ちゃん」

 先に出てきたアユタが、風呂場の前で考え込んでいる姉に首をかしげた。

「な、なんでもないわよ」

「次は姉ちゃんだよ」

「わかってる」

 廊下に充満するシャンプーの香りに少しホッとする感覚を覚えたとき、背後に気配がして振り向くと、そこにはベリルが立っていてナユタを見下ろしていた。

「──っ」

 彼女はその姿に固まった。

 風呂上がりの湿り気を帯びた肌と瞳と髪が、その色気を倍増させている。なんとも言えぬ艶というか色香というかが彼の全体から漂い、つい見とれてしまう。

 手には、渡していた寝間着が丁寧に乗せられている。

 それには理由があることは容易に察しがついた。きっと、動きづらいとか武器の装備とかに関係するんだ。

 やっぱりキレイだなぁ……ナユタはしみじみと見やる。

「入らんのか」

「ハッ!?」

 言われてようやく我に返り、慌てて着替えを取りに階段を駆け上がった。

 一緒に入った弟が無性に羨ましく思ったが、彼が使った風呂を使うと思うと、顔がニヤけてしまうのはどうしようもない。


「兄ちゃん、さっきの続きやろうぜ」

 リビングに戻ってきたベリルに、アユタはさっそくゲームを勧めた。

「あら、寝間着は着なかったのね」

 ベリルの手の上にある寝間着に母はキョトンとする。

「ご好意だけたまわります」

 丁寧な物言いに、母も悪い気はしないのだろう。寝間着を受け取り、嬉しそうな表情を浮かべた。

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