表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
交点の烈~戦士の休息~  作者: 河野 る宇
◆第12章~全身凶器
33/47

*思い起こせば

 アユタの好奇心は、ベリルの全てに向けられている──リアルで見る初めての傭兵に、興味は尽きないのだろう。

 もっとも、傭兵の中でも彼は特別な存在ではあるのだが、彼を基準には決して考えてはならない。

 ナユタは、ベリルが目の前にいるというだけで今は幸せだった。

 救いの手が欲しくてめちゃくちゃに送ったメールに偶然つながった事で彼の存在を知り、見えないながらも姿を知った事で救い主というだけでなく異性に向ける感情を抱いてしまった。

 何も応えない携帯を哀しく見つめる日々を過ごし数ヶ月が経ったいま──ようやく出会えて、本当に存在していた事がはっきり確認出来た。

 考えただけで涙が出そうだ。

「あ」

 そうだった、忘れてた……と、ナユタは思い出しベリルの前に立つとペコリと腰を折る。

「?」

「この前は助けてくれてありがとうございます」

「! ああ……」

「会ったらちゃんとお礼を言おうと思ってたの」

「そうか」

 随分と律儀なものだ、こちらは半ば楽しんでいたので礼を言われる事もないのだが……と思いつつ携帯を手に──した途端、アユタがさらりと彼の手から携帯を奪い取った。

「どういうつもりだ」

「番号教えてよ」

「アユタ!? 返しなさい」

 姉の声も意に介さず、アユタは携帯をいじる。

「あれ?」

「私以外には扱えないよ」

 首をかしげている少年の背後から、呆れた溜息を漏らしつつ携帯を取り返した。そして、何もなかったように電話をかけ始める。

「もうっ! ばかアユタ!」

「なんだよ、姉ちゃんのためにやったのに」

「! あたしのため?」

「番号知りたくないの?」

「そりゃ……知りたいけど」

「でもだめだ。あの携帯オレじゃ無理っぽい」

「どうして?」

 アユタは彼女に向き直り肩をすくめた。

「暗号化されてて何がなんだか解らなかった」

「へえ……」

「初めにパスワード設定してなかったからいけるって思ったんだけどなぁ~、中がさっぱりだったよ。パスの代わりとかじゃないみたいだけど」

 パスワードを設定してない理由も他にあるんだろうな~……という弟のつぶやきに、ナユタはベリルを見やった。

 ベリルは、次のランデヴーポイントを確認するために電話をかけたが、ナユタの言葉であの時の事を思い起こしていた。

 日本からのメールに半信半疑だったものの、助けを求める内容を頭から否定する事は彼には出来なかったのだ。

 そして、日本に来てみれば──それは彼にはまったく関係のない事でもなく、ナユタが捕まっていたカルト教団の教祖ミコはベリルの事を知って彼を神格化していた。

 全てはベリルのために大量殺戮まで計画していた。

 穿うがった考えで信仰し、ナユタを捧げものとして誘拐した事をベリルが許容するハズもなく、教祖ミコはいま、殺人教唆さつじんきょうさの罪で刑に服している。

 そこそこの緊張感と日本という国において緊迫感はあまりなく、彼にとってはそれなりに楽しめた出来事でもあった。

 もちろん、罪のない人々を殺すなどという事は断じて許す訳にはいかない。

 そう考えると、今も良い感じに楽しめている気がしないでもなかった。皆、私の持っている試作品プロトタイプに狙いを定めている。相手は麻薬組織でも、日本以外の組織でもない。

 これは……大いに楽しめるチャンスか?

「!」

 そう考えたとき、相手が電話に出た。

「──何?」

 ベリルの顔が少し険しくなる。

「?」

 何か問題でも起きたのだろうか? 2人はその様子をしばらく眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ