*鋭い攻撃
「日本マフィア風情が手にするようなものではない」
静かに発したベリルを男たちは睨み付け、それが合図のように1人の男が右手を握りしめ拳を固くした。
ベリルは殴りかかる腕をすかさず両手で掴み、合気道の要領で男を地面に転がす。それを見た他の男たちは少したじろいだが、一斉に掴みかかった。
もちろん、同時といっても少しずつのタイムラグは存在する。
ベリルはそのタイムラグを一瞬で察知し、右にいる男に肘鉄を食らわせ体勢をそのままさらに低くして左隣にいた男の懐に素早く入り込んみ、みぞおちに膝をめり込ませた。
「うっ!? な……っ!?」
一瞬で仲間を2人倒された残りの男たちは、とっさにスーツの中に手を潜り込ませる。
それを視界に捉えていたベリルは腰の背後からナイフを取り出し、右の男にナイフを突き立てた。
「ぐおっ!?」
少しひねって抜き出された腕の傷を押さえ、男はかがみ込んだ。それを見た男は、懐に入れている手を止める。
「よく考えてから出すのだな」
武器を出せば、ここが日本であるという躊躇いを消し去り、男を叩きのめす──ベリルはその決意の瞳を向けた。
「う……っ」
エメラルドに射抜かれ、男は体を小刻みに震わせる。
「すげ~!」
少年は目の前の光景に感嘆の声をあげ、ナユタは彼の姿に恐怖しつつも、その立ち姿に魅了されていた。
ナイフを突きつける姿も優雅で隙が無く、触れればたちどころに寸断されてしまうのではないかと思うほど鋭い視線──時間の経過までもが彼を中心にして流れているのではと錯覚してしまう。
「お前たちの情報は誤りだ。あれはまだ誰にも扱えぬ」
男たちは敵わないと悟ったのか、フラフラと立ち上がり公園の入り口まで行って黒い車に乗り込み走り去った。
アユタとナユタはそれを確認して、ベンチの背後からベリルに歩み寄る。
「今のスゴイね。でもそれスローイングナイフでしょ?」
少年は、ナイフを仕舞うベリルの手元を見ながら発した。
「なに? それ」
「投げ用のナイフだよ。ほら柄が無かったでしょ」
小さく首をかしげるナユタに、弟は顔を向けて説明した。
「! ああ……そういえば」
「スローイングナイフは投げ専用だから、持って使うには不向きなんだ。それなりの技術が必要なんだけど、違和感なく使ってたからスゴイや」
「……」
本当に余計な知識を……ベリルは半ば呆れて少年を見下ろした。





