*映画じゃない
しばらく歩くと、ベリルがバックポケットから携帯を取り出した。
「!」
ナユタはその携帯に心がキュッと締め付けられる。
全ては携帯メールから始まった──そう思うと、ベリルの携帯に何かしらの感情が湧いてくる。
電話をかけながら歩くベリルの背中を見つめた。
やっぱりキレイだなぁ……思って、少しの風にもなびく金色の髪に目を留める。後ろ姿からしてすでに上品だ。
動いたらさらに上品だし、一つ一つの動作がとてもキレイ。
「解った」
そう言って通話を切ったベリルは、やや視線を泳がせて一軒のカフェに視線を留めた。ナユタに目でそこに行くように示す。
「いらっしゃいませ」
50代のマスターらしき男性が落ち着いた声で応え、ベリルは軽く手を挙げて窓際の席に足を向けた。
ナユタは、その後ろから男性にペコリと会釈し彼のあとに続く。マスターは男女が腰掛けたのを確認すると、2人分の水をテーブルに置き注文を待った。
「カフェモカ」
「あ、あたしアイスミルクティー」
「かしこまりました」
丁寧な物言いでカウンターに戻る。
暖かい色の間接照明とクラシックが耳障り無い音量で店内を満たし、シックな色合いの木目のカウンターやテーブルセットがナユタの心を落ち着かせた。
それでも、向かいに腰掛けているベリルを見ると心臓が再び高鳴ってしまう。
椅子に背中を預け、長い足を組んで窓から見える外を見つめている姿は、まるで映画のワンシーンのようで見とれてしまう。
でも、これは映画じゃなくて現実にあたしは、彼に守られながら武器の回収と悪者から逃げているのだ。
「あれ? 姉ちゃんまだ帰ってないの?」
「どこかで友だちにでも会ってるんじゃない?」
学校も終わり、お小遣いを貯めて注文していたモデルガンを早く見たくて足早に帰ってきたアユタは、母親の言葉にガックリと肩を落とした。
「チェ……」
催促の電話してやる! 携帯端末を取り出しタップする。
「!」
店内に響く携帯の着信音に、ナユタは慌ててバッグの中の携帯を掴んだ。
「ごめんなさい……」
バッグから出し、画面を確認するとアユタからだった。
「もう学校終わった時間か」
つぶやいて通話ボタンを押した。
<姉ちゃん! 何してんだよ>
「アユタごめん……ちょっと今は……」
<いいから早く帰ってきてモデルガンちょうだいよ>
「ちょっとそれ無理な話」
<なんで?>
「……あのね、今ベリルといるの」
<は……?>
というアユタの声を耳にベリルの顔を見ると、なんだか少し眉間にしわを寄せていた。
あ……言っちゃいけなかった? とか思いつつ会話を続ける。
「だ、だからね。今はちょっと問題が起こっちゃってて……」
<オレもそっちに行く。場所教えて>
「あんたも!? だめよ」
<モデルガン早く見たいし、ベリルにも会ってみたい>
こんな状況でなに言ってんのよこの子!? いや、まあ説明してないから無理もないけど……と思いながら続けた。
「だめったらダメ」
<ケチ!>
言って電話は切れる。ちょっとホッとしながらもベリルを見やると、まだ眉をひそめたままだった。
「とりあえず」
「はい」
「マナーモードにしておけ」
「あ、はい」





