*回収作業
「ベリル!」
呼ぶ声に2人が顔を向けると、公園の入り口で青年が手を振っていた。
ブラウンのパンツに長袖Tシャツの青年はベリルの前まで来て、たすき掛けにしているバッグから何かを取り出す。
「はい」
渡された水玉模様のポリ袋を受け取って、ベリルは顔をしかめた。
「あ、ごめん。うちにはこんな入れ物しかなくて」
ベリルよりやや高めの青年は苦笑いで応える。
確かに彼が持ってるのはちょっと違和感が……ナユタは小さく笑んだ。
「彼女は?」
「気にするな」
青年はベリルの言葉に「ああ……」と、何か納得したような声を上げる。どう納得しているのかナユタはこの人に訊きかったが、黙ってニコリと微笑んだ。
ベリルをよく知る人間にとって、彼が女性を連れている事はさして不自然ではない。もちろん、彼自身がそれを望んでいるものではないという事も充分に理解している。
「あと幾つある」
「3つくらいだと思う」
それに眉をひそめた。
「まあ怒らないでよ」
青年は苦笑いで発し、手を挙げて別れの挨拶を交わして去っていった。
「まったく」
溜息を吐き、手に持った水玉のポリ袋を見つめる。
「あたしが持ってようか?」
ナユタの提案に、ベリルは怪訝な表情を浮かべた。
「だって……」
なんかカワイ過ぎる……
「可笑しいか」
笑いをこらえるような顔をしているナユタに目を据わらせた。
「そうじゃなくて……なんか可愛いんだもん」
「可愛い?」
ベリルはますます眉間にしわを寄せる。
「まあ良い」
発して水玉模様を差し出し、ナユタはそれを受け取ってショルダーバッグに仕舞った。
「たすき掛けにしておけ」
「え? あ、わかった」
頷いてベルトを伸ばし、たすき掛けにした。そして、おもむろに歩き出すベリルの背中を追った。