*奇遇ですね
「あんな古典的な手にひっかかるなんて……」
しばらく公園の周りを探したが、やっぱり見つからない。仕方なく、弟のアユタに頼まれているモデルガンを取りに駅に向かった。
普通電車に揺られて5つほど先の駅で降りる。住んでいる場所よりは店も多く、人通りも賑やかだ。
『ガンショップ』と書かれた看板をくぐると、少し暗めの店内に並べられたサバイバルグッズとモデルガンがナユタを出迎えた。
「いらっしゃい」
カウンターにいる男が、思っていたよりも明るく応える。それに少しホッとして近づき、口を開いた。
「あの、弟に頼まれて受け取りに来たんですけど……」
「ああ……じゃあ名前と住所ここに記入してくれる?」
ナユタは言われた通り、手渡された紙に記入していく。
「いらっしゃい」
客が入ってきたようで、カウンターの男が声を上げた。
「すまないが」
「!」
記入していたナユタはその声にハタとしてペンの動きを止め、聞き覚えのある声なんだけど……と思って声のした方に顔を向けた。
「……」
「……」
ベリルとナユタは無言でしばらく見合う。
「何故ここにいる」
「どうしてこんなとこに?」
ベリルは応えずに、カウンターの男に近づき、問いかける。
「昨日に入荷したハンドガンを見せてもらいたい」
「お客さん……どういった人柄で?」
慣れた物言いの青年に、男はピクリと反応した。
「私に届くはずだったものが間違ってこちらに流れてしまったようでね」
警戒した男に無表情に発すると、男は若干、眉を寄せる。
「! どんなもので?」
少し身を乗り出した男に、ベリルは腰の背後からハンドガンを取り出してカウンターに乗せた。
「……USPか」
男はそれを手にして、まじまじと見やる。USPとは、H&K (ヘッケラー・ウント・コッホ)社が開発したプラスチック製のハンドガンだ。
男は手入れの行き届いた黒い物体に感心するようにつぶやき、流暢な日本語を話す外国人を見つめた。
彼の見せたハンドガンはもちろん、モデルガンだ。
ベリルの様子を見つめていると、別の店員がナユタにモデルガンを手渡した。
「! あ、ありがとう」
受け取って再び彼に視線を移す。
「このモデルは何丁か回ってきたが、もういくつか出しちまってる」
「残っているものを見せてもらいたい」
ナユタは、ベリルと店員とのやり取りを見つめた。
どうしようかな……どうせこのまま待っても、また逃げられるような気がする。
ナユタは逃がしたくないと思いつつ、自分の感情に行き場を失って外の空気を吸いに入り口に向かった。
「ここにいればきっと出てくるよね」
つぶやいて、大きく深呼吸した。





