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【後日談追加】話が違う?いいえ、それは私のセリフですよ

作者: 水浅葱
掲載日:2026/06/07

誤字報告ありがとうございます。


後日談追加しました!

「こんなの、話が違います!」


()()()()()()()()()()であるらしい彼女、──平民の身分でありながら神託の巫女へ選ばれ、王太子の寵愛を受けていると巷で噂が流れている──リリアが叫ぶ。


それは私が言いたいことですよ?









アルトワール王国では、100年に一人『神託の巫女』と呼ばれる存在が生まれる。この神託の巫女は過去、王国に襲来した魔王と呼ばれる存在を打倒し、封印したと伝えられている。


この伝説から神託の巫女は神聖視されており、さらに代々の巫女が王都を守る大結界の維持も行っているためまさに神のような存在だ。


そんな神託の巫女が16年前に生まれた。今までの巫女は全員貴族の娘から生まれていたこともあり、その年に生まれた子供は全て調査されたのだが、ついに見つからなかった。


外聞としても王国の防衛上としても、神託の巫女がいないというのは大問題だ。あり得ないと思われていたため外されていた平民の娘にも対象を拡大し、捜索が行われることとなる。


ついに3年前、13年もの歳月をかけて神託の巫女を発見した。平民には神託の巫女の詳細が伝わっていなければ、当然判別の方法も分からないため市井で暮らしていたそうだ。それは少しばかりよろしくない。力の行使によって崇められている巫女ではあるが、ある程度の社交性は必要なのだ。


そうして神託の巫女として、平民でありながらも特別に、()()()()特待生として学園への入学を認められ、そこで教育を受けさせることにした。


そんな彼女と出会ったのは、いつだったかしら…。




そう、入学して2ヶ月ほど経った日だった。私は先生に頼まれていくつかの書類を運んでいたの。その途中に


「あ、やっぱりここにいた。すみませーん!リーズロッテ様…ですよね?」


やっぱりというのが引っかかった。第一印象は本当に変な方。


「ええ、そうですけれど…貴女は誰かしら?」


「あ、失礼しました!私、リリアと言います!」


それは、私の記憶が正しければ。


「リリア……あら、神託の巫女様かしら?」


「はい!王太子様から紹介されて!彼女なら君を助けてくれるだろうって…」


この発言に私は少し悩んだ。彼女のお世話係(チューター)にはなっていないし、わざわざ私を紹介するほど困るようなことがあるとは思えないけれど…。少し詰めてみようかしら。


「あら、そうなのね。貴女には専属で何人か付いていたはずだけど、私にしか頼めないことなのかしら?」


少し意地悪だったかしら。まあ、私とて暇ではないのですし少しくらい良いでしょう。


「あの…そうなんです。王太子様にも言えなくて、他の誰にも話せないことだったのでリーズロッテ様を頼ろうと思いまして」


ますます不可解な話だわ。そのような機密なら、むしろ私は不適格な気がするけれど。それとも、()()()()()()()()だとでも言うの?


「なら、これを持って私の部屋へ来なさい。少し用事を済ませてくるから、そうね…1時間後にしましょうか」


「わかりました!ありがとうございます!」


そう言って、彼女は足早に去っていった。


なるほどね、少し所作や話法には怪しい部分があるけれど、大きく崩れているようには感じない。表面上に問題があるようには見えなかったけれど、なんだとしても実際に話を聞くのが一番早いわね。





「実は…私、リリアではないんです」


「はい?」


自室へ招いて早々に、思いもよらない発言が飛び出た。影武者?いいえ、巫女としての力は持っているからそんなはずは…


「あの、信じてもらえるかは分かりませんが…」


この先彼女が語った内容は、本当に驚くべきことだった。


彼女は異世界から転生してきたということ。ここは彼女の世界にあったゲーム?というものを模した世界であるということ。彼女、リリアが主人公となり、世界の危機を救いながら最終的に私を断罪して王妃になるストーリーらしい。 


なんとも信じられないけれど、巫女というのはまだまだ謎が多いし、その中の1つなのかしらね。それにしても…


「つまり、私は悪役ということになるのかしら?だとしたら、私に接触してくるのは変ね。何を考えているの?」


この世界が物語通りなのだとしたら、彼女と私は敵対関係。この話をするメリットがないわ。


「あの、それが…私が王妃なんて無理だから普通に暮らそうと思っていたんです。でも、避けようとしてもイベントが勝手に起きてしまって…世界が強制力でそうさせてるみたいで怖いんです。だから、いっそリーズロッテ様を頼ればなんとかなるんじゃないかなって…」


「話は分かったけれど、それなら私もその強制力とやらに当たってしまうのではないかしら?」


私に接触してきた理由もおおよそ分かったわ。それに、殿下になんて言えるはずないものね。


「今までの私への対応を見た感じだと、攻略対象じゃなければ当たらないと思ったので。それに…」


「リーズロッテ様でもダメだったら、もう、仕方ないかなって…」


そこに、彼女の酷く悲しそうな本心が少し見えたようで、少し目を離すと消えてしまいそうな儚さだった。


はぁ⋯本当はよろしくないのでしょうけど。私も毒されてしまったのかしらね。




それから私と彼女は友人として、半ば強奪する形でお世話係(チューター)にもなることで何度も会話を交わした。


「ねぇ、リーズロッテ様!私、ついに全て合格点を頂きました!」


「まあ、そうなのね。こんなに早く終わると思っていなかったから素晴らしいことよ。」


「えへ、頑張りました!」


彼女は元々社交性を学ぶ目的でこの学園へと入学していたのだけど、なんとこの1年で一般的な令嬢でも学園卒業の頃までかかるとされている内容を全て修めてしまったらしい。少し手を貸したとはいえ、本当に飲み込みが早いわ。


それでも、私の前で見せるリリアの姿は無邪気な少女そのもの。私がそのままでいいと言っているのもあるけど、彼女は元々このような性格なんでしょうね。




またそれから少しして、


「リーズロッテ様⋯私、また。どうしましょう⋯」


「あら、どうしたの?」


「今日は王太子様と親しくなるイベントが起こるのでそれだけはどうしても避けようとしたのに、逃げ切れなかったんです⋯うぅ」


まだ彼女は悩まされているのね⋯。かなりそのゲームとやらの展開から変えるように私も動いているつもりなのだけど。その中身は少し変わっているらしいけど、私がリリアへ嫌がらせをしているという噂も流れているらしい。


「どうしてでしょう⋯私リーズロッテ様とはこんなに仲良くなりましたし、学園でもかなり一緒にいると思うのに⋯」


まあ、それが原因でしょうね。王太子妃という立場は非常に狙われやすいですし、王太子妃を狙うどなたかの令嬢が流したものでしょう。


「だからと言って距離を置いてはむしろあちらの思う壺になってしまうわよ」


「そう⋯ですよね。せめて私がなにかできたらいいんですけど⋯」


この子は優しすぎるから、きっとこの世界は向いていないわ。


「そういえば、リリアはなぜ殿下たちをそこまで頑なに避けようとしているの?言いたくなかったら言わなくていいけれど」


「あっ、そうですよね。これだけ協力してもらってるのでいいですよ。あまり思い出したくはないことですけど⋯」


「私、名前を莉々(りり)と言うんですけど、向こうの世界では恋人がいたんです。そろそろ結婚もしようと言っていて⋯幸せだったと思うんですけど。彼と一緒に歩いている時に事故に遭って、気づいたらこの場所で離ればなれになってしまったので⋯あまり、彼以外とそういうのは、拒否反応が⋯」


「⋯そうだったのね。辛いこと思い出させてごめんなさいね」


「いいえ、いつか話さなければと思っていたので⋯」


そう、なるほどね。


「今日はこのあたりでお開きにしましょうか。暗い話をさせてしまったから」


まだ、彼女に悟られるわけにはいかないから。


リリアが自室へ帰ったのを確認した後、私は


「──えぇ、私よ。

  ───は─────こと

   それに────────────」








ここ最近、私はかなり忙しい日々を過ごしていた。裏では必ず時間を取るようにしているけど、表で彼女と顔を合わせられる時間がなくなったこともあって、また新たな噂も生まれているらしいけれど、まあそちらはいいでしょう。


次、隣国から留学生が来ることになり、しかもその相手が第一王子なのだとか。本来私の対応することではないと思うのだけど、いくつかの事情が合わさって私の管轄下に置くこととしたこと。


最後に、その事情の原因とも言える王太子殿下、は今言うべきことではありませんわね。


とまあ、少し噂が広がってでも、先に対処しないといけないことがあったのですよ。


「分かってくれたかしら?」


「むぅ、理解はできますけど。結局王太子様とのイベントは防げませんし、リーズロッテ様の悪評は許せないです!」


そこまで言われると、悪い気はしないけれど。()()()()()()()()()()()()()()のよね。どうしても、必要なことだから。


「それにしても、大丈夫なの?最近の噂は酷いものばかりだから、実際に被害を受けてたりしない?」


服や装飾品を盗まれているだとか、階段から突き落としたとか、かなり直接的な噂を耳にしたから、実際に行われている可能性もある。


「あ!い、いえ。特に何もないです⋯ね」


嘘をついてる。リリアは嘘が下手だから、それでもこう言っているのは


──心配させたくないのでしょうね。


本当はもう少し先の予定だったけれど、彼女を被害に遭わせるわけにはいかないから。そうなると、すぐに巫女のお披露目も兼ねたパーティーを入れるべきね。


「あの?リーズロッテ様⋯?」


「大丈夫、そろそろ一掃しておこうと思っただけよ」


「そう、ですか?」




さて──()()()()()()()()、アレ。







急ぎで準備が行われ、異例の早さで王家主催で正式な神託の巫女誕生のパーティーが行われることになった。本来はこの時期ではないのだけど、リリアの教育が既に完了していることを主な理由として()()()()()


当然だけど、リリアのエスコートは殿下にさせるように動かした。とある時期から殿下はリリアへの対応について、かなり渋っていたけれど、()()()()を知ると途端に協力すると約束してもらった。やはり愛の力の成すことなのかしらね。


そうして、リリアだけが知らないまま計画は進んで行った。


私についての悪い噂も、発端こそ私ではないけれど。家の力を使えばすぐに特定できることを無視し、私がお願いしたのは。


(──()えぇ、私よ。

  あの噂は放置させること

   それに殿下の調査もして欲しいわ)


この2つ。おそらくそうなのだろうという予想はあったけど、確信はなかったから。


結果的には、必要なかったけれどね。


これから始まるのは、彼女だけが知らない茶番劇。








その時、会場は騒然となった。当然だろう、王太子殿下がエスコートしているのは自らの婚約者ではなく、今代の神託の巫女であるリリアだったのだから。


そのような噂はあったが、公式の場で婚約者よりも巫女を優先するとは何があったというのか。参加者からは多くの好奇な目を向けられることとなる。そしてそれは当然、私にも。


そんな視線を殿下は特に気にした様子もなく言葉を発する。


「まずは急な呼びかけだったにも関わらず、これだけ多く集まってくれたことに礼を言う。早速だが、本題に移ろう、彼女こそが、正式に神託の巫女として選ばれたリリアだ!」


その宣言に、ざわついていた会場にも静寂が訪れる。それだけこの言葉の意味は大きい。今代がまだ見つかっていなかった巫女が既にいたこと、しかも学園の特待生として入学した平民だったのだから。様々な思惑が絡んだこの事実はごく一部しか知らなかったことで、参加者たちにはとてつもない衝撃を受けていることでしょう。まあ、いくらかのご令嬢方は青ざめているかもしれませんけどね。



さて、そろそろ始まりますわね。


「そしてもう一つ、この場で宣言しなければならないことがある!リーズロッテ、前へ」


「…え?アーネスト…様…?どうして?」


リリア、ごめんね。それでも、あなたにとっても必要なことだと思うから。


「えぇ、殿下。どうなさいましたか?」


「ああ、皆にも聞いてもらいたいことだが。どうやら学園内でリリアへ対する虐めが起こっていたようだな。まだ公表はしていなかった時期ではあるが…学園では身分を持ち出すことを禁止している。とはいえ、今回の事件はそれ以前の問題なのだがな。」


「さて。学園に通っている諸君らは既に知っているだろう、あの噂を。実際に噂通りリーズロッテによる虐めが行われていたかは今から明らかにされることだろう。だがしかし、その噂を止められなかったことに対しては王太子妃としての手腕に疑いを持ってしまうな」


えぇ、これは実際に言われていたことだもの。リリアの言うゲームでも同じような噂があるそうだけど、私なら大元から止めるように動きそうな気がするもの。もしかすると、その私も今のようになにか理由があって、あえてしていなかったのかもしれないわね。


「そうですわね、それは私の失態になってしまうでしょうね。虐めに関しては証拠もすべて揃っておりますので後ほど提出させていただきますが…出席されている皆様の中に心当たりがおありの方もいるかもしれませんね、数々の不正の証拠も含めて…ですよ?」


「そうか、分かった。であるならば、本日をもって私とリーズロッテの婚約は()()とする。事実がどうあれ、今回の事態の責任は重く見るべきだ」


これで、ひとまず良いところに落とし込めたでしょ…


「そして、リーズロッテ。現在我が国に留学中の第一王子ギルバート殿より婚約の打診を預かっているから速やかに返事をするように」


は、はい??????なにがですか?聞いてた話とは全く違うんですが???


ちょうどそのタイミングで、口を閉じ続けていたリリアが口を開いた。


「なんで、どうしてですかリーズロッテ様!こんなの、話が違います!」


私が一番言いたいことなんですけど?けれどそれは


「ここで話すことではないから、それ以上の話はまた後で、ね」


忘れそうになるけれど、これあなたのお披露目パーティーなのよ…。


「少し余計な話をしてしまったが、本題は新たな巫女の誕生を祝うパーティーだ。存分に楽しんでほしい!」


殿下がある程度場を取りまとめ直し、多少の混乱はあったもののその後は何事もなく終えることができた。








「それで、しっかり説明してもらいますよ!リーズロッテ様!」


「まあ、騙すような形になってしまったのはごめんなさいね。でも、これが一番良い着地点だと思ったのよ」


分かっていたことだけれど、リリアにはとても怒られてしまったわ。騙すような形で進めてしまったから甘んじて受け入れるしかないわね…。


「まず、リリアはなにか変だと思わなかった?」


「変…ですか?噂のことでしょうか?」


「そうではなくて、もっと根本のことよ?殿下ね、半年ほど前くらいかしら?その辺りから」


「え?…あ、確かに少しよそよそしかったというか…渋々のような雰囲気が1ヶ月くらいあったような気がします?」


そう、ちょうどその辺りに殿下について調査するとおかしな結果がいくつか流れてきた。王太子らしからぬ口調や行動、ふと呟く『ゲーム』や『異世界』など謎の言葉。だけど、前例があった(リリア)から理解できたのよ。


──これはリリアの()()()って。


それでも、最初はリリアの希望通りゲームの展開から離そうとするつもりだったわ。少しだけ憐憫の意は持っていたけれど、それでも優先するべきは友人(リリア)のことだから。


それでもあの瞬間、ちょうどリリアと接触することの多い殿下へ口出ししようと思い話をとりつけた時に発した言葉が。莉々(リリアの本名)と呟いていることに気づいた私は気づいたの。ああ、この人なんだ。


「あの、それってどういう…?」


「後は、あなたたちで話し合えばいいことよ」


その時、この部屋に新しい入室者が現れる。


「王太子様…いや、まさか!?」


「遅れてごめん、リリア。いや、()()


「えっ、本当に…?──…」


これで、私の役割はおしまい。ずいぶんと手の込んだ悪だくみだったこと。さて、次はあの事件を起こした者たちの処遇でも…。


私はとても晴れやかな気持ちで部屋を出て、王太子妃としてでもない新しい人生を歩み…


「そちらの話はうまくまとまったようですね。では、改めて私と婚約していただけますか?」


あ、あー…ギルバート殿下。そういえば、婚約の打診があると言っていましたわね…。学園での案内を私管轄にしたことで歯車が狂ってしまったのかしら…?はあ、こんなこと…



聞いていた話と違いますわよ…!リリア!!





Episode After


その後、王太子殿下とリリアは一悶着ありながらも翌日には無事に婚約成立となった。一月後には結婚式も控えているので、彼女は忙しくも幸せそうな日々を送っている。そんな中私は…


「リーズロッテ嬢、まだ返事をしてくれないのかい?」


ここ最近の悩みの種である、隣国のシェルブラン王国から留学に来ている第一王子ギルバート様の対応にとても困っていた。


婚約の話は返事を延期させてもらっている。今までリリアのために動いてきて、そこまで考える余裕はなかったから…。


でも、そうね。私が婚約することで国同士の関係にとっても、公爵家にとってもプラスしかないことよね。特にお断りする理由もないかしら。


「…えぇ、決めたわ。この話を受け…」


「いや、その続きは言わなくていい」


受けると言おうとしているのに、なぜか止めるギルバート様。どうして?婚約したいのはギルバート様ではなかったの?


「私が欲しいのは貴女だ、利益じゃない。貴女の心を奪って、その言葉を言わせてみせる」


「んなっ……」


不意打ちされた私に、それ以上の言葉を返す気力は存在しなかった。




翌日、その言葉を証明するかのようにギルバート様はやってきた。


「リーズロッテ嬢、デートしましょう。」


「早すぎませんか?ですが、本日は…」


「本日の予定は全てキャンセルしていますよ、お嬢様」


「えっ?」


確かに急いで片付けなければいけないものはなかったけれど…。


ギルバート様の顔を見るととても笑っている。さては事前に打ち合わせていたわね?


「はぁ…そうですか。では予定もなくなったことですし良いですよ」


諦めと共に私はギルバート様が差し出してきた手を取る。


その手に、不思議と悪い気分はしなかった。


~fin~

悪役令嬢がヒロインにざまぁし返す話…ではない叙述トリック


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