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ゲーム知識の先取りしか強味がないモブさんは、実力を隠して成り上がりたい  作者: RAMネコ


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第7話 生かしておきたくない人間

「いるところにはいるものだな。我々はヴァンクレイドの坊ちゃんに、お前を悪意ある方法で試せと言われていた。十分だろう。邪魔をした、トラビス・コンクラード。できれば我が主人と会わないで欲しいものだ」


 と、ドヴァーラは慰謝料だと言わんばかりに、金貨を数枚寄越して、護衛達と共に町へと消えた。


 力を入れていた腹から風船が萎むように息を吐いた。


 ドヴァーラ、恐ろしい〝騎士〟だった。あれが英傑。


 勇者候補であるヴァンクレイドや、そしてパメラさんには悪いが比較にならない実力者だ。それだけに何故、ヴァンクレイドの護衛をしているのかわからない。ヴァンオーのストーリーは、物語として掻い摘んだ瞬間しか見られないのだ。

 

 理想の引退生活も望めたろうに。


「トラビスは強いね」


 パメラさんが俺の傷を心配しながら言う。


「魔人を1人で倒せるし、やっぱり普通なんかじゃなくて、ずっと強い人だ」


 着鎧しなければならないんだけどな。


 俺の鎧は欠陥品だ。寿命が縮むんだ。


 強さよりも成り上がり前線から逃げたいよ。


 とは内心思っていても口はつぐんでおいた。


「偶然勝てただけです。どれほど〝強く見えている〟かは存じませんが、強い人間でも呆気なく死にますよ。死にたくないと本気で考えるなら戦わないのが1番です」


 パメラさんが物言いたげだ。


 だがパメラさんが口を開く前に、彼女の腹の虫が鳴いた。真っ赤に染まる彼女だが、ヴァンクレイドのせいでおあずけだったしな。


「……お腹、すいたかも……」


 パメラさんが照れながら。


 よろしい。食べなおしだ。


「とびっきり良い店に食べに行こうか」


「トラビスの案内?」


「勿論!安くて沢山」



 厄介な〝お願い〟を引き受けたもんだ。


 騎士団入団試験に紛れ込むとはな……。


 試験官殿が入団希望者に諸々話している。一応、聞いてはいるが、入団するつもりが無いとイマイチ気が乗らない。今のコンディションは6割か?気合いを入れ直さないとだな。

 

「2人1組を作れ。模擬戦だ」


 シーラ様が事前に教えてくれた通りの試験内容だ。まず実戦、勝てる能力と気迫があるかを試される。それが騎士団の騎士、魔人を殺す素質の大前提だからだ。才能だのなんだのは斬り殺せなければ無価値だ。


……だから俺は騎士団て苦手なんだ。


「勝者が次の試験へ進め」


 俺は、ヴァンクレイドくんを鎮めなければならない。2人組を作るなら彼とだ。1番手っ取り早い。彼と目が合う。俺達は恋仲、初心な男女のように惹かれあった。


「おや、お前はトラビスか」


「夕飯時にはどうもさまで」


「ふん!ポーターの装備か。安いな」


「ヴァンクレイドさんは特注ですか」


「わかるか。だが父の鎧を仕立て直したものだ。剣もな。いずれば私だけの鎧を着て、騎士としての名誉を作る前座だ、見窄らしいとは言ってくれるなよ」


「言いませんよ」


 よく磨かれた鎧だ。


 だが傷は多かった。


 隠せない程に戦傷が刻まれている。


 古い道具には魔法が定着しやすいという民間信仰がある。たぶん、事実だろう。熱線魔法やジェットのように派手なものでなければ、その効果も見た目でわからない。だが、経験上、たぶん〝事実〟だ。ヴァンオーの設定にそんな事実は無いけどな。


「さて、では」


 ヴァンクレイドが申し訳なさそうに言う。


 おいヴァンクレイド、お前笑っているぞ。


「模擬戦で散ってもらうぞ、トラビス」


「勝つ前から勝利宣言をするものではない」


「卑賤なポーターから成り上がりたいが為に、身の丈を超えた騎士を目指すのだろが、この私に会ったのが運の尽きさ」


「私情か?そうだろう、俺がパメラ・ピュリファイアとの逢瀬の最中に割って入り、彼女を手に入れようとしたが失敗して逃げた男だものな!」


 すんません、パメラさん。


「愛も囁けずこそこそと情けない嫌がらせをすることが、騎士を目指す者の心とは思えんぞ、童貞のヴァンクレイドくん!」


 入団試験の全員に聞こえるよう叫んだ。


 試験官も受験生もうっすら笑っていた。


 だが、笑っていない男が1人だけいた。


 リビド・ヴァンクレイドだ。


 あッ、俺死んだかもしれん。

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